1 アルミン・アルレルト

恋ノ文

僕らの始まりを記念して。


「運命」だなんて言葉にしてしまえば何だか少し擽ったくて。
だけど偶然と呼ぶには足りない、特殊な出逢いをした僕たち。
自分の思いを吐き出したかのような、まるで鏡を見ているような気持ちになったのが思えば君への恋心の始まりだったんだ。
まさか叶う日が来るなんて思いもしない、「恋をするならあんな子が良いな」って初めは強烈な憧れだったんだけれどね。

目を惹かれてから何度も眺めては漏れる溜息に気付いて、届くはずのない星に手を伸ばしているかのような無謀さに苦笑い浮かべて。
現実に目を向けなきゃならないって、そう思っていた時だった。君を、見付けたのは。
それからは君も知ってるだろう?
僕が君を見付けて、君が僕を選んでくれて始まった二人の物語。
何を決めるのも楽しくて時間も忘れて、交わす「お早う」「ただいま」「お休み」の挨拶に心が癒されるのを感じた。
日に日に募っていく想いを隠し通せず、僕は何かと君にアプローチをしていたんだけど。あの意地悪も悪戯も、君が欲しくて仕掛けた罠だ。ハマってくれた、かと思えばするりとかわされて、思わぬ反撃にあって…そうして距離を縮めて漸く今日手にした大きな幸せ。
まだ期間にしては短いけれど、深めた絆は強く太く確かなもの。
この腕の中にある幸せを僕の全てで守り抜く、今度こそは。
僕の心臓を君に捧ぐ。


眠り姫へ、甘い悪戯を。
口付けは却下されちゃったから、これなら許して貰えるかな?
2 アニ・レオンハート
出逢いは、きっと「運命」だった。それは紛れもなく私も感じてるんだ、アルミン。
あの時の私が、今を想像出来た筈がない。誰でもいいわけじゃない…その誰かが、こんな形で見付かるなんて思ってもみなかった。

そう言えば、意地悪にも少しは慣れたと思うかな…少しだけね。けど仕返しは常に考えてるんだ。覚悟しておきなよ?私は「いい人」でなんかいてやらないから。

ねえ、アルミン。
この気持ちをどうしたら伝えられるんだろう。感謝の気持ちだけでも、ちゃんとあんたに届けばいいんだけどさ。
私達にはまだまだ時間が足りないし、もっと沢山あんたの事を知りたい。約束もあるし、色々な顔をするあんたを見ていたい。
欲張りさんは私もだったみたいだよ。

私はあんたの優しさと愛情に包まれて幸せだよ。願わくは…あんたも、同じ気持ちでありますように。


優しい口付けで起こしにきた王子様へ…。
寝顔に落書きは諦めないからね。
3 アルミン・アルレルト
羞恥心でいっぱいになると「心臓が痛い」って恥ずかしそうに呟く君が可愛くて、僕はついつい君の心臓をいじめてしまう。君にとっては困りものな僕の趣味。
好きな子に意地悪ばかりしちゃうって男の子の心理に今更ながらに納得したよ。
優しくしたいけどいじめたくもなる。
嬉しそうに微笑んだり、素っ気なくかわしてみたり、かと思えば強烈な仕返しを寄越して僕が被っている兎の皮を自ら剥ぎ取り自分の首を締めてみたり。
君の色んな顔を見たくて、堪らないんだ。
毎日が楽しくて時間が足りないね。
ねえアニ、大好きが止まらない。
日に日に大きくなるこの想いを受け止めて欲しいんだ、君に。君だけに。

また溢れちゃいそうだったから、此処に僕の気持ちを残しておくね。
小さくてか弱い乙女に、こんなにも大きくて重過ぎる想いを全て手渡しするのは気が引ける、というか。
僕からの恋文に気付いてまた、「心臓が痛い」って照れ臭そうに訴える君を見たいが為、なんだけれど。
さあ、仕返しをどうぞ?
4 アルミン・アルレルト
小さい頃から隠れん坊が苦手な僕。
ついつい笑ってしまって、自分の居場所を鬼に知らせてしまうんだ。
だけど今回は両手で口を塞ぎ、声を殺して我慢しよう。

ねえ、アニ。
僕が残す足跡を直ぐに見付けてしまう君ならば、これも気付いてしまうんだろうね。
見付けられたらそうだな、ご褒美をあげようか。
甘く、蕩ける様な口付けを。
…あぁ、褒美にはならないね。そうでなくとも毎日しているんだから。
それでも君は嬉しそうに照れ臭そうに受け取ってくれるんだろうなぁ。

何が言いたいかって?詰まりは──…


愛しているよ。

うん、唐突に君に伝えたくなったんだ。
敢えて此処に残したのは大事な場所のひとつだから。
君から貰った初めての恋文だからね、大切な僕の宝物。


鬼さん此方、手の鳴る方へ。
5 アニ・レオンハート
記念すべき日が終わる前に、独り言のような…そんな置手紙を此処へ。

「運命」なんて言葉を出逢った頃から使ってたなんてさ、少し笑えると思わないかい?あの頃とちっとも変わらない。
毎日愛を囁き合って休みには戯れていても時間は足りないし、あんたが余りにも恥ずかしい事ばかり言うもんだから相変わらず心臓も痛い儘。…時々意地が悪いのも変わらないね。

言葉を交わさない日なんて一度たりとも無かったね。それでも飽きもせず求め合ってさ、お互いが考えてる事なんて筒抜けで言葉にしなくても伝わってたり。
確かに短い月日じゃないとは思うけど長かったとは思わない。本当にあっと言う間で、通過点の様な…そんな気分だよ。あんたとだからこそ、こんな気持ちになるんだろうね。

この先もずっと私の隣にはあんたが居て、あんたの隣には私が居て。何があっても変わらないと誓えるんだ。

ねえ、私の想いは伝わってるの?あんたが居なきゃ何も出来ない、そんなか弱い乙女だなんて言うつもりは無いけどさ、それでもあんたが居ない日々なんて考えられないんだよ。

愛してる。
…心から愛してるよ、アルミン。
6 アルミン・アルレルト
特に記念日でも何でもない日。
寝付けないんだ、君が心配するような原因じゃないからそこは安心して欲しい。
こんな事を言ったらまた「バカ」って笑われてしまうかも知れないけれど。
幸せの余韻に浸っていたくてさ。寝てしまうのが何だか勿体ない、そう思ってしまって…。
だからもう少しだけ、夢の中で僕を待っていてくれる?
君への恋文を書き終えたら直ぐに迎えに行くからさ。

愛しさが止まらない。
毎日こんなにも一緒に過ごしてて、同じようなやり取りだって繰り返してはいるのに、飽きなんて来ないんだ。
些細な事だって君と二人なら喜びに変わり、小さな幸せを見付けては微笑み合う。
君こそ、僕の想いはしっかりと伝わってる?
僕はね…足りないよって返しておくよ。
真っ直ぐに深い愛情を注がれて幸せを感じない日は無いんだと言い切れてしまうけど、貪欲であり続けたい。君に対しては。
出逢ってからずっと君に恋をして、未だにドキドキと胸が高鳴ってるよ。
きっとこれから先もアニに幾度も恋に落ちてしまうだろうね。

笑った顔も怒った顔も、泣き顔も意地悪そうな顔も全て。
見逃したくない、一つだって見逃す事が無いように僕の傍にいて欲しい。
幸せで寝付けないよ、ってこんなバカげた悩みを抱かせていて欲しいんだ。
7 アニ・レオンハート
この想いが重なり合って一年。
思い返してもあっと言う間だった。
幸せな毎日は私の何気無い一言と、それに共感したあんたの一言が重なって生み出されたね。

理想と現実の埋められない差が罪悪感となって、あんたの他愛ない言葉に反応して傷付けた夜もあった。
普段の私達は衝突する事は少ないし喧嘩なんてものは殆どしない。嫌われたくないという保身が少なからず存在したとしても、それ以上に信頼しているという事が何よりの理由だけど。

毎朝起こしてくれたり、寝ぼけながらも見送ってくれてありがとう。キスで起こしてくれるけど、中々起きない時も怒らないでよ。ただキスがしたいだけ…だから。

二度寝して見送りが出来なかった時に、慌てて昼休憩で連絡をしてくる可愛い所も大好きだよ。他の奴に見られたら困るから化粧室に飛び込んで返事をしたりするけど、きっと顔が緩んでる。

帰りが遅い事を心配する連絡をくれるけど、それを見ると帰りたくて堪らなくなる。無理してあんたを心配させたくないなって思うからさ。

「依存」なんて言葉を口にする事もあったけど、私達はどちらかと言えば「共存」かなって。あんたが居るから私は頑張れる。寄り掛かるだけは嫌い…。自分の足で進みながらあんたの直ぐ隣を歩いて行きたい。これから先もずっと。

自分が起きる時間でも無いのに、私に合わせて目を覚まして見送ってくれる。毎日帰る時間が疎らな私を健気に待って、「寂しい」なんて口にもせず困らせない様にと大人しくお留守番。
「行ってらっしゃい」「お疲れ様」の言葉と共にあんたの感情が流れて来る。心配してくれてる事もちゃんと分かってるよ。一人の体じゃないからね、大事にするつもり。

あんたには感謝の言葉しか無いよ、いつもありがとう。


私達の出逢いは運命だった。
その言葉は今日また確かに強く残ったと思う。また一年後もその先も、ずっと隣にはあんたが居ますように。

たった一人のあんたを心から愛してる。これからもずっと。
8 アルミン・アルレルト
気付いたら季節は一巡り。
会話の無い日は一度だってないし、時間が出来れば互いに相手と過ごす事を選んで僕らは毎日を大事に生きている。
読み返して思ったんだけど、付き合い始めと一年以上の付き合いを重ねた現在で言ってる事とやってる事が余り変わってないんだよね。
君は僕からの悪戯を散々受けていながらも狼でしかない僕を王子様だなんて言ってくれるし、僕も君をお姫様扱いで恥ずかしそうな反応を見て楽しんでる。
文字にしてしまうと変わってない。それでもやっぱり重さは違うかな。

ねえ、君はどう?もう一年も一緒にいるけれど…僕の嫌いなところの一つくらい見付けられたのかな?
付き合う前に君に伝えた通り、僕は意地悪な自覚があるし陰険で姑息な事を思い付くのが得意だ。直球とは言えないし計算高い、策士って事は君が一番良く分かってるだろう。ずるい言葉も幾つも使う、君の逃げ道は全て先回りで封じてどんな時だって距離を取らない。
こんなマイナス点な僕を見ても君は満点をくれるんだろうね。だって君の鏡である僕がそうだ、どんな君も愛せると自信があるんだよ。
寝言も寝相も良いとは言えない、これからって時に寝顔を見せてくれてお預けを食らった日は両手足の指でも足りないね。僕より優秀で男前でもある。他の人から見ればマイナス評価にもなりそうな事だって全部全部愛しいんだ。盲目、とはちょっと違うかな。短所だったとしてもそれも含めて君だろう?僕らは既に互いの短所を見付けているのかも知れないね。
それをそうだとは思わずに愛せてしまうだけで。と、僕からの返答は此処に。
…あぁ、また僕の悪い癖が出た。長ったらしくて纏まりに欠いた文章になってしまったな。
つまりは──、愛してるよ、君を心から。
僕の心臓だけじゃない、未来も全て君に捧げる。

特に記念日でも何でもない日。
壁相手に惚気ると悪い噂が流れそうだし、幸せな愛の言葉で溢れた此処を借りて吐き出しておこう。
見付けた君が幸せな気持ちになってくれたら嬉しいな。僕もそうだったように。
君の乙女心を上手に擽れたなら唇にキスをお願い。