1 エレン・イェーガー

リモンチェッロに誘われて

こんな分かりやすいタイトルつければ、お前ならすぐ見つけてくれるよな?

さて、と…こういうのって何て話せば良いんだろうな。あんまり得意じゃないんだ。だけど、祝いたかったから。お前との出会いを。
一ヶ月、ありがとう。ジャン。
たかだか一ヶ月でここまでの仲になれるとは、俺は思ってなかった。お前だってそうだろ?一ヶ月前、俺はお前から返事をもらえるとも思ってなかったし…早いような、長かったような。あれからもう一ヶ月経ったのか。この一ヶ月だけでも、俺とお前の周りでは色んなことがあったよな。

人を好きになることに自信が無い俺に、お前は素敵な曲をくれた。あれから毎日のように聴いてるし、あの日からお前との距離が一気に縮まった気がした。

俺が一人で出歩いて馬鹿みたいなことをしていれば、危ないだろって本気で心配してくれた。本気で止めてくれたのがすげえ嬉しかった。本当に心配してくれてるんだろうなって伝わってきた。

俺が何かを話す度に、お前は俺のほしい言葉ばかり返してくれたよな。……俺ももっと、お前の気持ちを汲み取って、お前が安心できる言葉を見つけられるようになりたいって思ってるんだ。
俺の都合でお前を前に進めてるんじゃないかって、不安になったりもした。大した覚悟も無いのに勝手なこと言ってるんじゃないかって。それなのにお前は「お前に何かしてやりたかったんだ」なんて言ってくれたよな。俺は何もしてねえのに、お前の行動力がお前を前に進めてるのに……でも、お前の役に立ててるみたいで、俺はすごく嬉しい。
俺の居場所は、お前なんだ。

…黙ってた話の続き。
実はさ、「愛してる」って言葉、簡単に使いたくなかった。言って欲しいとは思ってたくせに。それは前も言った通り、自分の「好き」の大きさだとか深さだとか、そういうのに至極自信が無かったから。だからその言葉をくれたお前に寂しそうな瞳で見つめられた時、簡単に返して良いのかってすげえ悩んだ。でも、お前にそんな顔をさせたくなくてつい口を出てしまった。


だけどさ…だけどな?


今は、自信を持って言える。世界で一番、お前を愛してる。お前だけを、愛してる。俺がこの五文字を言えるのは、ジャンだけだよ。
俺にとっては、お前が拠り所だし、癒しであり、帰ってくる場所なんだ。…こんなこと言ったら重い、かもな?…今でも、お前が離れていくんじゃないかとか、もっと大切な奴が現れるんじゃないかって不安になったりもする。お前にも同じ大きさと深さの愛情を求めるなんて、無茶なことは言わねえよ。
でも、いつかはそう思って貰える存在になれるよう、頑張りたい。そしてこれからも、もっと、もっと、お前のことを知っていきたいって思ってる。

っ…あー…慣れないことはするもんじゃねえな……くそっ。
これで忘れてたとか見つけられなかったとか言ったらタダじゃ置かねえから覚悟しろよ。今日中に見つけたら……ご褒美、やるよ。好きな物をやる。ただし、ちゃんとお前も此所に言葉を残せよ。いいな?…こういうのやって見たかったんだよ、ばあか。

月日も関係無しに燃え上がった俺達の恋は、一晩だけじゃ終わらない。灰になんて、させやしない。そうだろ?
世界で一番、大切なお前に。一ヶ月間、ありがとう。


Eren Yeager
2 ジャン・キルシュタイン
あー。
やってくれるな、お前。
不覚にも泣いちまったじゃねぇか…。
クソっ、本当によお………。

丁度一ヶ月前の今、お前に初めての手紙を飛ばした。
早ぇな、あれからもう一ヶ月か。
まだあの頃は肌寒かったが、今は大分暖かくなったな。

どこまでも真っ直ぐで一途な忠犬の、俺だけのエレン。
お前は俺の書いた文章に一番最初に鳩を寄越してくれたな。
もしかしたら、あの時点で俺の気持ちは決まっていたのかもしれねぇ。
だが……。
お前の言うとおり、此処まで気持ちが入る程に想える相手に出会えるとは全く思っていなかった。
しかも、たったの一ヶ月程度でな。
所詮この世界で出会った者同士。日に数往復遣り取り出来れば上等だろうと思っていた。
だが、蓋を開けてみればどうだ。
お前は最初から俺に一生懸命懐こうとしてくれて、“恋”というものを忘れていた俺はひたすら一途で純粋なお前に日を追う毎に惹かれていった。
気付けば、お前からの手紙を今か今かと何度も窓を見ては鳩が飛んでくるのを待ち詫びていたな。
きっと、出会ったばかりの俺は、お前の目には素っ気なく映っただろう。
俺は……怖かったんだ。
ああ、すげぇ怖かったぜ。
お前に惚れてお前無しじゃ居られなくなりそうで。
だから距離を保とうとしたのによ、お前の瞳は真っ直ぐに俺を捉えてくれていた。
あの時お前は俺に近付こうとしてくれているのに、遠ざけようとしていた自分が苦しかったぜ…。
そういえば、片想いが辛いと言っていた事があったよな?
それを読んだ俺は内心、片想いじゃねーよなんて思ってたのを覚えてる。
あの頃には既に俺はお前に惹かれていた。お前は知らなかっただろうけどよ。
俺は重てぇし変わりモンだから、受け入れて貰う自信なんて全く無かったんだ。
でもな。
お前から「大好き」って言葉を聞いた時に、俺は自分の気持ちに正直になることを決めた。

桜の咲く季節に始まった俺達二人の時間。
満開の綺麗な桜を、お前は沢山見せてくれたな。
綺麗な朝焼けも、お前の目にした風景も、好きな物も、お前は俺と様々な物を共有しようとしてくれた。
いつでも俺を思い浮かべてくれている事がすげぇ嬉しかった。
ありがとな。
俺だって、いつでも頭の中にはお前が居る。当初の俺じゃ考えられねぇよ。

思い起こせば俺は初めの手紙でお前に、自棄に傲慢な事を言ったよな。
つい煽られて口走っちまったが今考えると何て恥知らずな事を言ってたんだろうなって後悔している。……引いただろ?
ま、今ではあんな事を言った俺の方がお前から離れられなくなっちまってる。…はっ、笑われそうだぜ。

お前には感謝の言葉ばかりが浮かんでくる。
いつも任務の帰りが遅い俺を尻尾振って出迎えてくれてありがとな。
お前も忙しくて大変なのに疲れた顔を隠して、俺の為に健気に待っててくれるお前には頭が上がんねぇよ。
お前が居てくれるから辛い任務も頑張れるんだ。
つか、俺の行動力をすげぇと言うが、それは違う。
エレン。お前が背中を押してくれるから何だって出来る。本当に凄いのはお前なんだぜ。気付いてるか?
俺の誕生日には日付が変わった瞬間に祝いの言葉をくれて、ケーキまで用意してくれてたっけな…感激したぜ。
其処まで本気で祝ってくれる奴なんて初めてだった。
………俺は、お前の真っ直ぐな気持ちにちゃんと応えられているだろうか。

本当に……色々あったな。
たった一ヶ月だろうが、すげぇ濃い一ヶ月だったよな。
楽しい事も辛ぇ事もあった。
心配は掛けていい。でも、もうあんな無茶な事はするなよ!頼むぜ。
それに、いつも上手い言葉をあげられなくてごめんな。
俺は頭が良くねぇからよ、在り来たりの言葉しか掛けてやれねぇ。
それでもお前の力になれているなら安心した。良かった…。

ん?おい。何を悩んでんだ?エレンが俺にくれる言葉なら、それは全部俺の気持ちを汲み取ってくれた上での言葉だろ?
俺は十二分に嬉しすぎる言葉をいつもお前から貰ってるぜ。サンキュ。
これからも俺の傍に居てくれよ。

俺が何気なく口ずさんだ曲を毎日のように聴いてくれてて嬉しいじゃんか。
ありがとよ。
勿論、言うまでもなく俺も毎日聴いては大好きなお前の顔が浮かんでくるんだ。


エレン。
俺にとってもお前は、癒しであり帰る場所であり拠り所だ。
お前が居なくなったら息も出来なくなるだろうよ。大袈裟だとまた笑うか?
お前は俺に無くてはならない特別な存在だ。
どうかお願いだから…どうしようも無ぇ俺だけど、離れないでくれよ……。

愛してる。エレン。
この言葉はお前だけに捧げると誓う。
灰になんかさせねぇ。永遠に燃え続けさせてみせるからな。
お前と出逢えてこの上なく幸せだ。
一ヶ月記念日、本当におめでとう。
これからもずっと、ずっと一緒に居ような。

褒美か…さて、何を貰おうかな……。


最後に改めて……いつもありがとう、エレン。


Jean Kirstein