1 リヴァイ

手紙

少し早いが、もう何時間かすりゃ一ヶ月になるぞクソガキ。
本来なら、三ヶ月目くらいに此処に密かにお前への想いを綴ろうと思っていた俺だが、予定を繰り上げた理由は二つ。
一つは、お前が俺への遠吠えをクソ愚かにも消しやがったからだ。今日を待ってそこに返信しようと思ってたのによ。
晒しものだ?俺も一緒に晒されれば文句ねぇだろうが。先走りやがって、馬鹿が…。
二つ目の理由は、三週間目でそんな遠吠えを此処に記しやがったお前だ。また、その残念な無表情と言語力の裏で
何を画策しているか解りやしねぇ…。だから、もう先手を打たれまいとこう踏み切った訳だ。

…まあ、そんな前置きはいい。一ヶ月だ、ミカサ。
思えば、お互いにこんな風に続くとは思っていなかったな。
お前はただ持て余した感情の捌け口を求めただけ、俺はたまたま時間を持て余していただけ。
利害が一致し、それなりのやり取りをすればそれまで……本来ならそこで終わってた筈だ。

終わらず、今も続いている理由を日々考えているが、明確な答えは今も出ない。
ただ…お前のことが気になる。どうしようもなく。
そもそも、最初のきっかけからそうだ。数ある記事の中からお前が綴った言葉が気になって声を掛けた。
取り留めのない言葉の中に見え隠れするお前の情の深さや、考え方に惹かれた。
実際に言葉を交わせば、優しい気遣いを感じて心地良かった。
その後、お互いにどうしてこうも惹かれ合うのか解らなかった俺達は、手探りのままがむしゃらに求め合った。
だが、お互いに気持ちの表現の仕方が下手で、気持ちだけ焦って、伝えたいことが伝えられずに空回った挙句、
一抹の不安と寂しさに負けて、短慮に答えを出そうとしたこともあった。

…ミカサ。あの時の行動がお前の捨て身の求めだと解った時、
最後かもと感謝を伝えてきた鳩がやって来た時、お前の心に触れた気がした。
あの日以来、日々のやり取りの中でその感触はよく覚えるようになった。
その度に、俺が温かな気持ちになっていることをお前は知っているか?
それは他の誰でもない、お前からしか貰えねぇものだ。
誰もが寝静まる夜更けに、部屋で待っていてくれるお前。
「ただいま」に「おかえり」を返してくれること。いつも、感謝している。

…されど、まだ一ヶ月だ。
別に、どれだけ続くかに拘るつもりはない。互いの関係に名前なんて必要無い。
ただ、いつものように、お前と共に居れる時間を大切にしていきたいと思う。
その結果、それが長く続いていくなら悪くない。……いや、それに越した事はねぇだろうが。

人類最弱のふわふわ兵長から、自称山犬を名乗る可愛いアッカーマン先輩へ。
2 ミカサ・アッカーマン
これは……恋文?普通の手紙?とにかく、遅れ馳せながらも受け取りましたと報告します。否、返信をしたためるのに時間を要しただけでありますが。
しかしどうせなら「世界一可愛い俺のミカサへ」だとか「俺の部下がこんなに可愛いわけがない」だとか、人類最弱らしさを発揮した題名にすれば良かったのではないだろうか…不満。
遠吠えは……二枚目なんて綴られないだろうと思っていた。今は少し……反省している。
ひと月だからと何か特別な事をする計画は無かった。…ので、あなたの心遣いを嬉しく思います。
返事……箇条書きではダメ?…ダメ。……そう。頑張る…。

これを記載時あなたが既に三ヶ月目までの付き合いを視野に入れている事に先ず驚きながら、あと十日もすれば二ヶ月が経過します。…日が経つのは、存外、早い。
約二ヶ月前までは、自分がこんな風に安寧とした日々を過ごしている事を想像すらしていなかった。
悪く……は、ない。尖らせていた筈の牙が、抜け落ちていきつつあるのが酷く悔しいけれど。

いつかのやり取り中にも述べたかもしれませんが、終わらず、今でも続いている理由は、近頃、私の方では見当づいて来た気がします。
…あなたは私と真逆だからです、リヴァイ兵士長。
経験してきた過去は、似通っていても…人間的な器が、違うのかもしれない。
自己を抑制出来ず他者を振り回し、捨て身でしか行動出来ない私に対し、あなたは常に安定している。
兵を纏める地位ならば、新兵には及びもつかない気苦労もあるだろう。しかしそれに振り回される事も無い。…近頃は少し疲れた顔も見せてくれるようにはなったと安堵していますが。
要するに、あなたは私には無い、多くの善い資質を持っている。そして呆れながらも、何故か私を見放す事はしない。
…その心が、続いている要因。

己が生きる理由を見出すためにエレンを利用し続けた私は、きっとあなたが言うような情の深い、優しい人間ではない。
けれど、相応の誠意を持って尽くそうと考えている。…私に自由な居場所を与えてくれた、あなたにだけは。
あなたが“日々のやり取りの中で覚えるようになった感触”とやらに、私の稚拙な試みが届いてくれている事を祈ります。

リヴァイ……、兵士長。
何の名称も付いていないこの関係を、私は存外、気に入っています。
あなたが壁外にて巨人掃討に精を出していたこの期間、独りで過ごしてみて、そう思った。
“家族”だから待つだとか、“上官”だから待つだとか、“飼い主”だから、“恋人”だからだとか…そんな括りではなく、“あなただから”待つと言うこの感覚。私の心に不安の波は立たず、不思議と穏やかでした。
…これが“恋人”なら、勝手に過剰な期待を寄せ、勝手に寂寥を覚え、勝手に不貞腐れていたのかもしれない。だけど、私が待っているのは“あなた”だ。
元々、恋人でもないあなたが私を構う義理はない。…それなのに忙しい中で寄越してくれる手紙に心遣いとあたたかさを感じ、あなたと居る時私は、一日一日を悔いなきよう大切に過ごしていたのだと実感した。

こうしてありのままの自分で毎日を過ごせているのは……上でも述べたように、あなたの度量も関係するのだろうけれど、何より、あの日あなたが私を拾い上げてくれたという一件があるからだ。
世間的に見れば私たちの巡り合わせなど取るに足らない事件に違いないのだろうけれど、私はこのささやかで大きな幸福に感謝している。

あなたに出逢ってから、世界は、少し私に優しい。
吸い慣れた唇の温度に似た生ぬるい日々を尊びながら、
滑り込ませた舌で内側からゆっくりと侵食していくように、私の存在であなたの真芯まで満たせたら。
……久々に山犬らしい事を言ってみましたが、いかがですか?砂糖菓子めいた甘さを持つ、人類最弱のあなたへ。


…夏が来ます。
3 ミカサ・アッカーマン
七月七日。この日星に願いを捧げれば叶うと、東洋の催事にて伝えられていたらしい。…と、文献で読んだ。
東洋の血が混じる私なら、言い伝えも有効だろうか。


あなたと、一緒に居られますように。
…お願い。居たいの。
4 リヴァイ
そいつは、七夕と言うらしい。
離れ離れになった恋人が、年に一回会える日だとか聞いたな。
…俺なら、そんなクソ長ぇお預け喰らったら死ぬ。

タイトルの話だが、あの時はこれといったものが思いつかなくてな、
単純に節目にお前に日頃の想いを伝える手段…「手紙」とそのままのタイトルになった。
二か月が過ぎ、次第にお前に惹かれていく内に、お前の言う通りもっと捻ったタイトルにしときゃよかったと後悔した。
だが、ここ最近色んなことが起こった…楽しいことばかりじゃなく、寧ろお前には辛い思いばかりさせたと思う。
酸いも甘いもあった三カ月だ。お前に伝えたい気持ちは、浮かれたタイトルには不釣り合いな真摯な気持ちや切ないものも含む。
なればこそ、どんなものでもお前に自然に届けられるこのタイトルが今は我ながらしっくりきてる気がするが…どうだ?

さて、前置きが長くなったが……そう、色々あったなこの三か月。特に直近の一ヶ月がな。
お前の言う通りめまぐるしい変化や事件のあった月になった。
色んな経緯があったが……結果として、やっとお前のことを知った気がする。
無論、全てと言う訳じゃ無いだろうが、前よりずっとお前のことが解って、その分お前を近くに感じられるようになった。
だから良かった。…と、一言で片づけるにはお前に辛い思いをさせ過ぎちまったがな。
悪かった。誓って、お前の気持ちを試した訳じゃない……が、俺には必要だった。

あの日、お前が呟いてるのを見かけ、言葉を交わす内に共感を覚えたり、興味を惹かれるようになった。
お前と過ごす静かな時間にどこか癒しを感じて、任務に明け暮れる日々の中でふと気付けばお前のことを考えるようになった。
お前に向ける感情の名、二人の関係を何と呼ぶのかは知らないまま、ただお前と過ごす日々を楽しんだ。
だが、不意に寂しさを感じるようになった。それは、例えば欲しい言葉が返って来ない時だったり、
途中で寝られちまうことだったり……言いたくねぇが、自分ばかりが鳩を〆てることだったりな。
出会った当初には感じなかった気持ちだ。最初は、お前が楽しく、僅かでも満たされた気持ちになってくれたら…
お前さえ良ければそれでよかったんだ。……解るか?俺は変わったんだ。お前に対する俺の気持ちが。

……………………………どんな気持ちか言わなきゃ、話が進まねぇよな……解ってる。
お前のことが好きになっちまったんだ。惚れちまったんだ、クソ忌々しいことに。本気になっちまったんだ。

だから、ちょっとしたすれ違いが寂しくなった。以前なら我慢できたことができなくなった。余裕がなくなった。
名前の無い関係に満足できなくなった。お前が俺のものだって、自他共に認めさせたかった。
だからこそ、今回のことは必要だったんだ。ただの話相手じゃ無く、鳩の宛先ってだけじゃなく、
俺の唯一無二の存在としてお前を迎え入れるのに。曖昧な言葉や関係じゃなく、はっきりとしたお前の気持ちを手に入れたかった。
俺が感じられる形でな。…お前にとっちゃ心外な話だろう。お前は何度も伝えてくれていたからな。
だが、俺はそれをリップサービスなんじゃねぇかと疑ってたんだ。何故そう思っちまったのかは、もう伝えたな。

…そう、俺とお前は違う。考え方や価値観は勿論だが、人を想うスタンスや、大切な存在への思慕の形。
抜身の感情をぶつけあって、全てを投げ打ちながら全てを欲する俺と。
相手を思うが故に無欲に、ひたすらに相手の全てを包み込もうとするお前と。
違っているだけで、想いは同じなんだと言うことを知った。
…………どっちがガキ臭いか論議する気は無い。…俺は無駄死には嫌いなんだ。

お前に取っちゃ泡喰った展開だったろうが、とにかくお前のことをたくさん知った。
もっとお前が好きになった。…実は、俺はお前のことをもっと小生意気で捻くれたクソガキだと思ってたんだが…
実はそれとは正反対の控え目で大人しい素直な可愛らしいお嬢さんだったんだな…
狂犬を名乗るのは随分思い切った挑戦だったんだな、アッカーマン先輩よ……知れたのは良かったが、罪悪感が二割増しだ。
…まあ、安心しろ。謝罪を込めて、倍にして返す。誰よりも大切なお前に、色々とな。

掻き回しちまったが、俺としちゃ土台の固まった三カ月だったと思う。
これで心置きなく四か月目、五カ月目へと進撃出来るってもんだ。俺達のこれからによ。
だからミカサ、これからも傍に居て欲しい。他の誰かじゃ無く、代わりでもない。お前という一個の存在に。
俺と共に居て欲しいと願う。…今ならはっきりと言える。愛してる。
これからもよろしくな。

Levi


追伸
この手紙が記念日から遅れた事情だが……その時はお前とベッドで忙しかったからな。許せ。
…何、知ってる?わざわざ口に出さなくていい?…そうか。
5 ミカサ・アッカーマン
一度は書き終えた「手紙」を丸めて引き出しの奥に仕舞い込んだのは、私が招いたあの夜のせい。
最後ならばと願いを籠めた一週間がもう、終わります。ブーゲンビリアは枯れる様子を見せなくて、あなたからは紅い薔薇を貰ったけれど…私はあなたにとって…まだこうして言葉を残していい存在だと、自惚れていてもいいのですか?
ひとまずは四ヶ月、私と居てくれたことへの感謝を残します。
あなたと居られて、よかった。

リヴァイ……兵士長。いえ、今は“御主人様”、ですが。ここでは便宜上。

私はあなたに愛着を抱いているようです。凄く。…とても。
焦がれている。

酸いも甘いもあった三ヶ月に、また酸いを足してしまった。任務の忙しさで、と言えば聞こえの良い言い訳に過ぎないが、自制を忘れてあなたを試し、傷つけた。
解放しなければ。これ以上傷つけてしまう前に。これ以上失望される前に。きっとその方がいい、可愛らしく甘えるのを好む女性なら幾らでも居る。そう思った。
…なのに、あなたがいとしいと思う気持ちが消えない。あなたを放せない。傷つけたなら、抱き締めて、その傷を舐めとりたい。嫌われてでも、例え疎まれてでも、欲しいと願う。他の誰でもない、身に沁み透るようなあなたの声が。
…無欲なものか。
私は、あなたが与えてくれていたから、無欲の振りが出来ているだけで…
あなたからの声を失うと、あんな風に、崩れてしまう。所詮一人の雌ガキなのだと、思い知らされる。
駄々を捏ねるようにねだりたくなる、この幼稚でいて濃密な恋情は、どう処理すればいいのですか?平常心を保てる術を知っているなら、教えてください。…夜の特別訓練にてでも構いません。

あなたが好きだ。

難しい建前を並べてみても、結局はシンプルなその一句に行き着く。
あなたという一個の存在に惹かれている。
こんな私に、向き合ってくれる。それだけで日々に灯りがともる。
捧げられるあなたの言葉は、上辺だけの優しさや都合のいいその場凌ぎの嘘ではなくて、いつも誠実さ、と表現していいのだろうか。…人としての芯、のようなものを感じる。
私が今回のように行動の選択を誤った時、あなたはいじける…というより、別人のように冷たくなってみせるけれど。そんなに、嫌いではないの。それはあなたがそれだけ、真摯に人と向き合っている証拠だと思うから。
…それに。「壁」として訪れてくれた時のあなたなら、まずきっと出さなかった一面だと思うから。
だから、ごめんなさい。
あなたの気持ちを疎かにしてしまった事に、改めて謝罪をさせてください。……反省している。あなたが前の手紙に残してくれた内容と被りますが、倍にして返したい、…と思います。誰よりも大切なあなたに、色々と。

「雄々しい」とあなたは形容したけれど…私は正直に言って、可愛らしいタイプではない。正確に言うならば割と捻くれているし、人間的な可愛げに欠ける。(もう分かっているか…)
それはもう随分前に染み付いてしまったもので…それは身を守る鎧のように、私の一部になってしまっているのかもしれない。だけど離れて町をぶらついてみて、ふと思ったの。
こんな私と話していて、誰が楽しいのだろうと。
…あなたの立場に立ってシミュレーションしてみた。…何も楽しくなかった。私があなたならきっと見放している。
それでもあなたは、傍に居てくれた。それに気付いた時、…どうしようもなく感謝したくなった。
この世界は強者でないと生き残れない。だから、弱い自分を見せるのは、未だ怖くて、足が竦む。
でも。あなたに縋り、あなたを立てて、時には受け身になり、あなたの話を聞き、…あなたを求める術を身につけたい。あなたにとって、心地好い存在になりたい。
追従する訳ではないの。それはきっと……根底で私自身も、望んでいる、事だから。


…書きたいまま連ねて行くうちに、随分長くなった。ので、次回は簡潔に「リヴァイ兵士長のちょっとイイとこセレクション(監修:ミカサ・アッカーマン)」でも記そうかと思う。箇条書きで。
改めて、四ヶ月、ありがとう。三ヶ月目には、たくさんの言葉を綴ってくれてありがとう。とても嬉しくて、複写した後に宝物を入れる引き出しにしまっておいた。

あなたの事を考える時間は幸せだ。穏やかな夜の終わりに、こんな風に言葉を手向けたいと思える相手が居る事が何よりも嬉しい。
五ヶ月目への進撃にも、どうか私を同行させてください。

愛しいあなたへ。
二千年後でもいい。一番最後でもいいから、連れて行って。世界の、涯てまで。
愛している。

Mikasa Ackerman


追伸
当日に残せずごめんなさい。書きたい事がありすぎて整理出来なかった。
あなたのそのいやらしいところも、本音を言うと、嫌いではない。…ああ、ここは女らしく恥じらいを浮かべた方がよかったのだろうか…。
6 リヴァイ
七ヶ月目。

気付けば、お前と出会ってからもうそんなに経つんだな。
過ごした月の数と手紙の枚数が合わねぇのは、俺達の過ごした日々が甘いもんだけじゃねぇって証明だ。

ミカサ…。
今まで、何度お前に心を掴まれただろう。反面、伝わらないもどかしさに歯噛みしただろう。
その度にその手を離そうとして。その度に気持ちを確かめ合って。
けれど、確かなのは一つ何かを一緒に乗り越える度にお前の心を近く感じられるようになるということ。

俺が何度もお前と離れようとしたのは、お前の心を掴めなかったからだ。
お前は遠慮が過ぎる。肝心なところで、特にな。お前の出来過ぎた気遣いと遠慮が、俺はきっと寂しかったんだ。
もっと馬鹿みたいに我儘言えばいいのによ。ただの女になって子供みたいに甘えていいのによ。
そういうもんでさえ、俺はお前に欲しがってんだ。
逆に、それが無いって言うのなら、お前に取って俺はその程度なのかと思っちまうほどに、お前の全てが欲しいと願っちまう。

だが、その度に何度もお前の手を離せず振り返っちまったのは、遅刻気味に見せるお前の小さな我儘だったり、
独占欲だったり、これが最後かもとがむしゃらに伝えてくる気持ちがこれ以上ないほどに俺を求めてくれていたからだ。
過ごしてきた夜が心にしみるほど優しくて、温かかったからだ。

任務に明け暮れ、暫く離れていた窓辺。
久し振りに来てみれば、置かれていた手紙と呟きにお前の想いを見た。
そして、いつもみたいに思い知る。お前の愛情の深さや優しさに。…遅刻気味だったのは俺の理解か。

…何にしろ、此処まで俺が何かに拘った事はねぇ。何事にも頓着の無い性格だと自負していたんだが。
こうして日々、お前のことをもっと知りたいと欲したり、お前が求めていることは何だろうと思案したりな。
お前から貰った手紙を何度も読み返したり、新しい手紙が来ないか窓辺を気にする癖がすっかり板についていたり、
一緒に過ごした翌日は、それを反芻して任務がそっちのけだったり、「好き」だと伝えられたフレーズを何度も思い返して…

…詰まる所、俺はお前が好きなんだな。結局難しいことあれこれ考えても行きつくところはいつも其処だ。
どうしようもなく惚れこんでる。だから、お前の一挙一動に一喜一憂の日々だ。自分の半分も生きてないガキ相手に…全く、なんてザマだ。
認めてやるよ…俺はお前に惚れている。…ああ、好きだ。大好きだ。ぞっこんLOVEだ。
一日中お前のことばかり考えてるし、お前でエロい妄想するのなんて日常茶飯事だ。何か文句あるか?

「愛してる」……この言葉以上にお前にこの想いを伝えられる言葉って、無ぇんだろうか……そんなことを考える今日この頃だ。
…今、笑ったか?笑ったら、削ぐ……と言いたいところだが、お前の場合は一日ベッドに監禁の刑。泣いても許さん。

なぁ、ミカサ。最近じゃ、お前も似た様なこと言うようになってきたな。
俺にもっと望みや、飾らない感情を伝えて欲しいと。俺達は、全く違うようでいて、でもやっぱりどこかでは似ているのかもしれねぇ。
求めるもの、そしてその求めるタイミングも一緒だ。…焦らずやっていこうか。
お互いの事、時間掛けながら、もっともっとゆっくり知って行こう。俺も話すから、お前も話してくれよな。

これから年末に向けてクソ忙しくなりそうだが、それでもお前に募る俺の想いは変わらない。
いつでもお前のことを想っている。お前が大切だ。ずっと傍に居て欲しい。…お前と出逢えて、お前が傍に居るこの日々が、すごく幸せだ。
ありがとう。

お前はよく「重たく感じるだろう」と前置きしてるが、お前が寄せてくれる気持ち、俺は嬉しい。
俺もお前が大好きだよ。今までたくさん傷つけてすまない。また、大切にさせてくれ。お前を。
……絵をありがとう。他愛ない夢の話に親身になってくれるお前が好きだ。男を一人描き足してみたんだが…お前より上手いだろ?
お前が窓辺に掲げられなかった黄色い水仙の代わりに、ハナミズキの花を置いておく。

懲りねぇと言われるかもしれねぇが………二千年後もお前と共に。


Levi


追伸
さて…予定じゃ「嫁のクソかわ台詞ランキング(監修:旦那)」でも記そうかと思ってたんだがな。
まあいい…次回に持ち越しだな。…いや、待てよ。「嫁のエロボイスセレクション(夜の立体機動編)」も捨て難…
7 ミカサ・アッカーマン
…手紙…という代物は、恐らく、書きたくなった時が、書くべき時ではないだろうか。なので日付は気にせず、残す。

…あなたという男性は、やはりやってくれる。憎たらしいほどに。

この数日あなたと過ごした時間は、私にとっては離れていた時間を埋めるに十二分のものだった。…だけどあなたは穴埋めのつもりで私に声をかけたのではないと思う。想いはきっと、純粋。……違わない?
ねぇ、私をあの場所に誘ってくれた時、少し緊張してはいませんでしたか。
冗談として保険をかけるあなたの心境を推し量ると、可愛くていとしくて、笑みが零れそうになります、リヴァイ兵士長。
……そう言えばあなたと居るとき、私は大分笑うようになった気がする。遠慮が過ぎるとあなたは言うけれど、これでも大分、甘えるようになった。今だって、朝の冷え込みで頬が冷たいから…あなたの温かい手で、触れて欲しい。…早く。

「自分が一体どうしたいのか、何を優先したいのか、自分の欲求を冷静に見極めること」、「その為に悔いのない選択をし、行動していくこと」。
……出逢った当初、あなたが教えてくれた言葉です。
あなたが思ってくれるより私はずっと単純な人間で、ただ、あなたと居たかった。
あなたじゃないとイヤだった。あなたが、よかった。
初めてあなたに触れて、墜落するように惹かれていく感覚を恐れ、逃げ出したときの喪失感を今でも覚えている。その後で何事もなかった態で受け入れてもらった、泣けるような安堵感も。
どんな痛みも、あなたを失うより、ずっとマシだと思った。どうにか、繋がっていたい。あの日から、それが最優先の私の欲求になった。
言葉足らずで意地っ張りで、暴走しがちな私は、あなたを何度も傷つけた。だけど、離れたいと願われても、どうしても離してあげられなかったのはただの我が儘だ。
そんな私の我が儘を、あなたは今でも叶えてくれている。…ありがとう。

たまには当初のイメージ通り、こまっしゃくれた部下を気取ろうと思うこともあるのだけれど…あなたへの好意が優先してしまって、少し余裕がないくらい。
感情の伝え方や、求め方は……根気強く指導してもらったおかげで、出逢った頃より少しは…うまくやれるようになったのではないかと思うの。
自画自賛?…なんとでも言って。気持ちが通じ合っている瞬間がある……と、言ってくれたの、覚えているから。
おどけた応酬の中に時々ヘビー級の気持ちを混ぜてしまっても小馬鹿にせずに同じ想いを返してくれて、
私と居る時間を、幸せだと例えてくれるあなたの声に、時々、泣きだしそうになる。


“15のクソガキ”の描いた下手くそな絵を、大事に拾って掲げてくれるあなたが好きだ。

…しかし絵心が無駄にあって悔しい。…ので、私も夢にまつわる2枚目の絵を描くことにした。
構図はもう考えている。まず、家を描くの。白い壁の、一軒家にしようと思う。
大きな犬と、雌鶏が数羽飼われていて、小さな庭のスペースでは野菜が育てられている。周りには向日葵を植えよう。それから、兵服を脱いだ目つきの悪い男性とーー……、間違ってはいない。「夢」を描くのでしょう?

…水仙も気づいていたの?本格的に恥ずかしい。でも、その黄色い水仙が、あなたを呼び戻してくれたのかもしれない。…私のもとへ帰って、と。
ハナミズキ、きれいな花。…その花の名前がつく歌を耳にしたことがある。私もあんな風に静かにあなたを受け止め、支えていられたら。

あなたに愛を。
私にあげられるものなら、なんだってあげよう。………リヴァイ。


Mikasa Ackerman


追伸 :却下。
8 ミカサ・アッカーマン
カモミールのお茶が好きだった。
ぶどうのパンと一緒に、お母さんが淹れてくれる、優しい味。
これを飲んでいる時だけは、この世界の辛いこと、寂しいことから、隠れていてもいいと思えたから。
先日昔の手紙を読み返していたら、あなたに出逢って間もない時も、カモミールの匂いがする…と感じていたようで、私は私に、驚いた。
まだ出逢って2週間程しか経っていなかったのに……その頃から、私はあなたに何か特別なものを感じていたのかもしれない。……当時は絶対に認めてやらなかっただろうけれど。

あなたは今でも、いい匂いがする。リヴァイ。

やさぐれていた春に出逢って、夏にはお互いを知り、少し寂しい秋を過ごした。(あなたの二つ目の記念日、次は祝えればいい)
そして今は、とてもあたたかい冬を迎えている。
あなたが時々淹れてくれるようになったカモミールは、小さい頃に飲んでいた味と同じ、林檎の花みたいな香りのする、優しい味。
純粋に、好きだと思える、……幸せを詰め込んだみたいな味。
8カ月前は想像さえもしなかった……心が満たされている冬。

鳩を交わすだけではなく、二人でお茶を飲む事を教えてもらったこの一カ月ほどで、あなたがいっぱいあなたをくれるから、私はもっと欲しがりになってしまった。
あなたのことばかり、考えている。…少なくとも一日に数回は、あなたのことが頭を過ぎる。
寒くしていないか、だとか、任務は順調か、だとか。疲れていないか、だとか、ハ……団長に苦難を押し付けられているのではないか、だとか、私が見ていない時はどんな顔をしているのだろうか、だとか、時間の隙間には、私のことを思い出してくれているのだろうか…だとか。
…あなたのことばかり。そしてその瞬間は、とても切ないような、失った大切なものを見つけて抱き締めている時みたいな、不思議な気持ちになるの。
でも、それはとても、あたたかくて。
思うことはいつも同じ。

あなたが居てくれて、よかった。…それだけ。

お誕生日、おめでとう。リヴァイ……兵士長。
きっと今日、時を同じくして祝われる人は数え切れないくらい、居るのだろう。けれど私にとっては、あなたが。あなただけが。
…あなたが、生まれてきてくれて、よかった。
誰よりも近くに、居てくれてありがとう。あなたが居てくれるから、私の生きる世界は、優しい。

…平時より簡潔になってしまって申し訳ありません。時間内に書ききれなかった分は、また追伸として伝える…かもしれない。
あなたに伝えたいことは、たくさんある。ありふれた四文字だけでは収まらない、私の気持ちを、もっと……知って欲しい。
そのためにも、言語力を磨くことを当面の目標にしようと思う。

戦場で聖夜を祝うことが許されるなら、生まれた日を喜ぶことも、許されるでしょう。

あなただけにこの願いを捧げる。

リヴァイ。私の大好きなあなたに、たくさんの幸せが、降り注ぎますように。

…大好き。
私の恋人へ、心からの感謝と、愛を。

Mikasa Ackerman
9 リヴァイ
こうしてお前に手紙を書くのは何度目になんのか。
此処だけなら数える程度でも鳩に持たせたものを含めればもう数えようがねぇな。

九ヶ月。

最近の俺達が何をしているのかと言や、相変わらず山有り谷有りだったりする。
段々とその山が壁よりも高く聳え、その谷が奈落みてぇに深くなったりしてる違いはあるが、相変わらず平坦とはいかないらしい。
そんな俺との関係に、お前は疲れてやしねぇか。

昨夜も散々泣かせた。
お前にとってもっとも言われたくなかったことを言っちまった。
それは、密かにお前が立ててくれていた誓いを破らせるくらい、お前の心を深く抉ったんだろう。
悲しくて、寂しくて、嫌気も差しただろうな。

一番大切な筈のお前を、俺はどうしていつも困らせたり、泣かせたりするのか。
いつかのお前の台詞じゃないが、俺は今まで他人をこんなに振り回したことは無い。
それがどうしてこんなことになってんのか……冷静になってみれば、答えは単純だった。

お前の事が好きだからだ。それ以外の何物でもねぇ。
……好きなんだ、ミカサ。お前の事が、病的なまでに。

もし、お前が俺にとってただの都合のいい女であったのなら、或いは単なる気が合うダチだったのなら、こうはならねぇだろう。
そんな関係なら、お前に求めるのはただの暇潰しだったり、孤独や寂しさを束の間埋めるだけの手慰み程度のものだろうだからだ。
だが、俺にとってのお前は違うんだ。俺がお前と一緒に居たいと願うのは、物寂しさを埋める為の代替品でもなければ、性欲の捌け口だからでもない。
悲しいくらい、痛いくらいに、馬鹿みたいに、お前が好きだから。
どんなに傍に居て貰っても、一緒に時を過ごしても、身体を重ねても……足りない、足りないって。
お前に掴みかかって、その心を引きずり出そうとする。お前の全てを、俺に振り向かせたくて。俺の全てでお前を愛したくて…。
俺が重いのは体重だけじゃ無い。

たくさん傷つけて、たくさん「寂しい」を生み出してきて。
それでも、すったもんだした挙句に伸ばした指先が、心が、繋がった時には、思わず蕩け落ちそうなほどの幸福が訪れる。
ミカサ……お前が、俺に今までどれだけの幸せを与えてくれたか知っているか?
目覚めた時に、まず気になる相手が居ること。お前の言葉を探す楽しみ。「おはよう」と声を掛けたくなる相手が居ること。
任務中、悪い上官と部下になって文をやり取りする、ガキの悪戯みたいに、どこかわくわくしちまうようなこと。
帰ってきたら「ただいま」が言える場所があること。一緒に茶を飲むことで得られる癒しみてぇな時間。
身体だけじゃなく、心まで満たされるような触れ合いが出来ること。
いつも、あっという間に朝がやってくる。

お前は一日に数回らしいが、俺なんか起きてる間中お前の事ばかり考えてる。
いや、寝てる時もだ。いつもお前が夢に出てくる。逢う日取りを決めていたり、デートしてたり、普通に任務に従事してる傍にお前が居たり。
窓辺の確認なんか、分単位でしてる。秒単位かもしれねぇ…なんてザマだ。

……好きなんだよ。ああ、好きだ…。クソ……何で、こんなに…。
お前は、俺からいとも容易く余裕を毟り取る。

誕生日の時は、ありがとよ。山ほどのサプライズに、窒息しそうになった。
この袖の贈り物も、それを買いに行くお前の描写も、手紙も、俺の宝物だ。もう、何回読み返したか解らねぇ。
可愛い。クッソ可愛……可愛過ぎる、なんだこの生き物………死ねる。

これからもお前と過ごしたい。
解るだろうが、俺はお前に対して渇望しかねぇ。マンネリ?なんだそれ、美味ぇのか。
人類の為の使命とも言うべき任務が、俺の中で、お前との時間を圧迫する障害と捉えつつある時点でお察しだ。
俺の頭の中に在るのは、今日お前とどう過ごすのかと、将来、兵士を辞めてお前と田舎で畑をする……それしかない。
……だが、まあ、昨夜泣きじゃくるお前から心を引きずり出した分、当分は優しくなれる筈だ。
今夜はでっろでろのあっまあまに優しくしてやる。人類最強のデレをお前に見せてやるよ。

……本当は、いつだってお前に優しくしたい。
ずっと、立場や年齢なんかを気にしてた俺だが、本気で人を愛する時、そんなもんはクソ程の意味も無くなることを知った。
お前の前では、俺も、ただの普通の……無力で、不器用で、根性のひん曲がった、面倒臭ぇ男であることを自覚させられる。
だが、同時に、お前が傍に居てくれるだけで、いくらでも強くなれる気がするのも本当だ。

お前は、俺の生きる意味になりつつある。
……とっくの昔から、そうだったのかもしれねぇが。……そうだったんだよ。
ずっと好きだった。どうしようもなく惹かれていく感覚が、出逢って間もない頃からお前にはあった。
独り善がりになることが嫌で、手を伸ばせないでいただけだった。

……愛してる。
今は、いつでもお前にこの五文字を伝えたい。
一度じゃ足りねぇから、二度、三度と繰り返して。

たくさん泣かせて、たくさん傷つけて、九ヶ月経っても相変わらず一筋縄じゃいかねぇ俺にお前は辟易しているか?
だが、俺をこうしたのは他でも無いお前だ。もし嫌気が差したなら、お前の為に鼓動するこの心臓を、お前の手で止めてくれ。
お前が隣にいない、そんな人生に意味は無ぇからな。
だが、これからも悪くないと思ってくれるのなら。これからも、俺の心臓はお前を求めて鼓動するだろう。
知っているように、俺の心臓はもうお前に預けてある。……心配はしてねぇ。いつもピカピカにしてくれてるもんな。

……あぁ、そうだ。
お前への愛が迸り過ぎてて大事なことを伝えるのを忘れてた。
……悪かったな、ミカサ。お前は昨夜もいの一番に伝えてくれてたってのによ。

九ヶ月、一緒に居てくれてありがとう。

Levi


追伸
却下された企画は、仕方ねぇので今夜実践することにする。大丈夫だ…頑張る。
10 リヴァイ
記念日には少し早いが、手紙を綴る。
愛しくて止まないお前が生まれてきてくれたこの日に。

生まれてきてくれて、ありがとう。
俺と出逢ってくれて、ありがとう。
俺を愛してくれて、ありがとう。
いつも全てを捧げてくれるお前に、感謝を。

どんなに意地を張ってみたところで、とっくに俺の心臓はお前に握られているんだった。
何度思い知れば、俺は気が済むんだろうな…。
いい加減学習してもいい頃だろうと、俺自身呆れてる。
十ヶ月目になるのにな。

……お前が欲しい。

この衝動に底ってのはねぇのか。
日々、人の心の中で勝手に膨れ上がっていくお前の存在に、俺は今日も窒息しかけている。
嬉しい時も、悲しい時も、その理由の中心にいるのはいつからかお前になっていた。
お前と通じ合えて嬉しい。お前と擦れ違って悲しい。
……他の理由が無い自分に、また呆れちまう。

全てを懸けて愛してくれているお前は、いつも傍に居てくれるな。
どんなにすれ違おうが、俺に遠ざけられようが、変わらずに手を伸ばし続けてくれる。
何度もそれに助けられてきた。…支えてやるつもりで、いつも支えられているのは俺だったな。
ガキだガキだと言ってみても、本当はずっとお前の方が強いのかもしれねぇ。

お前に返したい。
お前から貰ったたくさんのものを。
いつも捧げてくれるその想いに見合った熱で……いや、それ以上に。
傍に居てくれる理由が、お前の覚悟に甘んじたものじゃ無く、お前が素直に俺と居たいからだと。
いつも真っ赤になってボソボソ伝えて貰えるように。

愛してる。

……お前は察しが悪く、雌ガキの癖にいつも全部背負い込む癖が抜けねぇところがあるから心配だ。
俺がどれだけお前を愛しているのか、この胸を切り裂いてやって見せてやったら伝わるのならそうしてやるのに。
いつも伝えるこの五文字を偶に言いたくなくなるのは、言葉にすることで陳腐になりそうなのが嫌だからだと。
今なら解ってくれるか?

まあ、答えを急ぐこともねぇのか。
時間を掛けて解ってもらえりゃあよ。…これからもお前の傍に居ることに代わりはねぇんだから。
だが逃げられたら困るから、手錠代わりの品を贈っておく。
きちっと身に着けて、俺にいつまでも繋がれてりゃあいい。

今日も我が物顔で俺の心臓を銜えて離さない困った愛犬へ。
誕生日、おめでとう。

Levi
11 ミカサ・アッカーマン
表紙を抜いた頁にして、10を刻む。
過ごした月には少し足りないが、とてもきりがいい。

………筆を執ってはみたものの、なんだかやっぱり、ピンとこないの。
半信半疑の、不思議な気分。
あなたと出逢って、今日で、一年になるのか………リヴァイ。
この手紙にしても初めの頃の自分の文字は、青臭すぎて…とても最後まで読み通せない。酸欠に陥りそうだ……助力を願います、兵士長。胸を貸して、発熱した顔を冷やしたい…。

この一年で、増えたもの。
心臓の形のネックレス、小花柄のエプロン、白いコート、灰色の手袋、高価な指輪、アパートの鍵、犬種が定かでない黒い犬のキーホルダー。
…気づけばたくさん貰っていた。
…あなたのおかげで、私の女子力、とやらがかなり上昇したように思える。この装備ならクリスタ(LV99)に戦いを挑んでも生き残れるかもしれない。
でも、私……あなたにこんなにたくさんのものを、返せているだろうか。心配。
ものだけじゃない。
私はあなたに出逢って、初めて、人に自分の弱い側面を見せられるようになった。
ねぇ、私は………あなたにちゃんと、返せている?あげられている?
…少しでもいい。与えられていればいい。
さりげなくいつもそこにあって、不意に胸をあたためるような、何かを。

この一年を振り返ってみると、決して楽しいことばかりではなかったように思う。
あなたは優しいが、とても潔い人間だ。…もう駄目だと感じたことも、何度もあった。
マイペースと言えば聞こえはいいが、悪い意味で我の強い私はあなたに心労を与えてしまうことも多かっただろう。
世間的な恋人たちは喧嘩を経験しない人たちも多いと聞いて、果たして本当に自分があなたの隣を占めていいのか悩んだこともあった。
あたたかくて優しい、いとしいものだけを、あなたに与えられる女性が、もっと他に居るのではないかと。
………そう思っても今日までなりふり構わずあなたにしがみついていたのは、やはりあなたの隣を、誰にも渡したくはないからだ。
…愚の骨頂。私以外とのあなたの未来など考えたくもない。あなたを幸せにするのは私でいいし、あなたの寵愛を受けるのも私一人でいい。
…知っていますか?兵士長。
近づく女全員削いでやると言う程度には、あなたが好きだ。
あなたを誑かす女狐はこの世で一番残酷なやり方で駆逐してやる。
……あなたに受容してもらう月日を重ねて、私の性質も恋情も、大分穏やかに凪いできたように思うが…
…やはり血は立ったまま眠っているのだろうか。
今でもあなたへの恋愛感情が、暴発しそうになる瞬間が時々訪れる。
…貞淑で恥ずかしがり屋の異性が好みだと言うあなたに、この類いのことはあまり言いたくない。
だけど、私はあなたに黙って愛されるだけの女ではないし、そう在りたくもない。
小生意気なことを言ってしまうが……これも「私」なのだと、どうか知っていて欲しい。


…とりとめもなく書き連ねたけれど、胸中全てを書き連ねるには紙面が足りそうもないのでこの辺で筆を置く。
締めくくるとなると面映ゆい。
…ので、簡潔に。
一年間、本当に感謝している。私を見つけてくれたこと。見捨てないでいてくれたこと。
私に愛をくれたこと。この残酷な世界で、確信出来る信頼感を与えてくれたこと。
すれ違って、瞼を腫らした日々だって、互いに嫌いあってのものではなかったことが、私のちょっとした誇りなの。

私を好きになってくれて、ありがとう。あなたを、好きにならせてくれてありがとう。
あなたに出逢えてよかった、リヴァイ。
不束な身ではあるが……あなたがよければ、これからもよろしく……ねが……願います。
何処までだって、あなたと居たい。


……それから、お父さんと、お母さんへ。
心配しないで。私は、とても、いい人生を送っている。
12 リヴァイ
一年か…。

確かに、実感に欠ける気がする。お前も同じ気持ちなのか、ミカサよ。
だが、その理由が解る気もする。恐らくだが…この一年、決して穏やかに過ごしていただけじゃなかった。
それどころか、何度も俺達の手は離れかけた。酷く不安定で、安穏って言葉からはかなり程遠かった気もするからな。
季節が一巡りする間、腰を落ち着けてお前を想うことができたなら、もっとのんびりとした感慨があったんだろうが…。

それもこれも、全部お前が悪い。…解ってんのか、雌ガキ。
どこまで考えがあっての事か知らねぇが、お前の安定しない態度に、随分と俺の穏やかな生活ってやつが乱されてきたように思う。
…いや、乱されてきた。間違いなくな。
人一倍愛情深い癖に言葉足らずで、寛容な癖に変なところで意地張って、甘えん坊な癖に肝心な事は口を噤んでたり…。
蕩けるように胸を甘く満たしては、波のように引いて遠ざかる。手に入ったと思えばすり抜けていく切なさに、何度も胸が苦しくなった。
いつまでも一筋縄でいってくれねぇ……酷い女だ、お前は。

お前が悪い……と言いたいが、お前の一挙手一投足に見事に翻弄され続ける俺もどうなんだって話も聞こえる気もする。
誰かに振り回されることなんて今までなく、他人に振り回されるなんて馬鹿のすることだと思ってた。
気付けば……俺もその馬鹿の仲間入りだ。……なんてザマだ。
……仕方ねぇだろ、こちとらとっくに心臓握られてるんだからよ。

………解ったよ。恋愛一年生の俺の未熟な部分も原因の一端は担っていると認めよう。
ほんの少しのすれ違いに我慢できずに癇癪起こす……こんなガキみてぇな感情が俺の中に在るなんてな。
壁外不思議発見って感じだな。俺自身が一番驚いてる。……自分を抑制しろと、偉そうにお前に言えた義理じゃねぇぞこれは。
由々しき事態だが………気付けばその状態のまま、一年が経過した訳だ。…本当に由々しき事態だ。
一年が経った今も、俺はまだお前に恋をしているようだ。相変わらず、落ち着く様子も見せずに。


酸欠になって精々真っ赤になって苦しんでくれ。お前が恥ずかしがってくれりゃあ、俺が落ち着く。
お前に貰ったものは、俺がやったその品々がささやかに想えるほどてんこ盛りだ。
自分でも制御できねぇくらいの感情の昂りを、お前はいつだって煽って来やがる。
それが腹腔を捩じ切るような切なさだったりすることも否定しねぇが、胸を満たして甘く蕩かせるような幸せだったりするってことも否定しない。
貞淑云々は確かに趣味じゃあるかもしれねぇが……一番重要なのは、ありのままの姿で、言葉で、伝えて欲しいってことだ。
いつも言ってるように、出し惜しみなんてするんじゃねぇ。…お前を知りたい。お前が欲しい。

……確かに、どんなに離れようと思っても、お前を嫌いだと思ったことは一度もなかった。
嫌いになれねぇから、選ぼうとした選択だった。…本当に、厄介な程、深く食い込んでやがる。
…一年経っても、お願いしますが言えない部下なのは相変わらずかオイ。
どうやら躾が必要だな。新しいアパートで、みっちりと仕込んでやることにしよう。その為に…家具見に行くぞ、ミカサ。

一年間、ありがとよ。
そして…俺からも頼む。これからも、傍に居てくれ。


……御両親へ。
何よりも愛しい存在を授けてくれたことに感謝を。愛娘を散々泣かせてきたクソ野郎から聞きたくはねぇだろうが…
こいつを幸せにするのが、俺の人生の責務だ。安心していい。
13 ミカサ・アッカーマン
青い時間にあなたを思い出しながらこれを書いている。何度も手が止まるのは、私の言語能力の低さのせいだけじゃない。

リヴァイ。
頭の中であなたの名前を呼んでみる時は、優しいような切ないような、柔らかくて小さい爪で心臓を引っ掻かれる、無二の気持ちになる。そしてそれはなぜか、少し、嬉しい。
あなたは、どうだろうか。
未熟な私があなたに与えてしまった傷は、透明なあなたの胸を、まだ、蝕んでいやしないだろうか。それとも、あなたの中で私は、振り返るほどの価値も意義も失ってしまっただろうか。
…でも、それでもいい。
あなたは今日もどこかで、息をしている。
夜の哨戒から帰還して、夏の蒸し暑さに溜め息を吐いたり、出来の悪い部下に頭を悩ませたり、遠のくばかりだと言っていた芝居や読書に興じたり。今日もいつもの仏頂面で、きっと、…生きている。
存外、活動的なあなただもの。これを機に何か新しいことを始めたりしているのかもしれない、と、想像したりするの。あなたが楽しく過ごしている姿を思い浮かべると、自然と口角が上がってしまう。

リヴァイ。あなたは、やはり、私の……魔法使いみたいだ。
そこにあなたが居なくても、思い出すだけで、幸せだと感じられる。

世界がどれだけ残酷だろうと、私は、幸せだ。どこかに、あなたのような人が存在しているのだと知っている。
ひどく真っ直ぐで、ひどく優しい、あなたのような人。……そしてそれを教えてくれたのはあなただ。
あなたに、無駄にしたと言わせてしまったこの一年の記憶に、私は確かに救われて、日々を生きていく勇気を貰っている。それがどんなに凄いことか、…あなたの胸に直接、届けられたらいいのにと思う。
初めてだったの、全部。
私にあなたを、教えてくれて、ありがとう。…あなたに、伝えられたらいいのに。

自ら最期の一撃を望んでおいて、息の根なんて、全く止まらなかった。
私は、私を愛してくれたから、あなたを愛していたわけじゃないのだと思い知ったくらいだ。
傷つけ合う部分を含めて、解り合えなかった部分を含めて、合わない価値観を含めて、あなたという人を愛していた。
あの時上手に伝えられていたなら、あなたは今でもここに居てくれたのだろうか。
とても情けない。私は、本当に、……あなたの痛みに気付こうともせず、自分を守るばかりだった。

リヴァイ。ねぇ、リヴァイ。怒っている?
私、あなたに、何も出来なかった。
未熟で、子どもで、上手に愛することも出来なくて、間違いだらけだったけれど、
あなたを、狂おしく愛していた。

しきりと噛みつく癖に、あなたの傷を舐めることも出来なかった駄犬だ、私は。
だけど私の忠義も心臓も、すべてあなたのもの。
「中身」が無いと駄目なのだとあなたは言った。なら私の中身など、すべて捧げて、あなたに賭ける。
私はあなたを、忘れない。手紙が、燃え尽きて無くなってしまったとしても、この世界が廃れてしまったとしても、あなたがあなたを忘れてしまったとしても、私は、「あなた」を忘れない。何度だって思い出す。
呆れられようと、見苦しかろうと、私はそうしたい。
あなたが二度と私に視線を配ることがなくても、私は、そうしたい。

とるに足らない私の言葉を、あなたは好きだと言ってくれた。お世辞でないとは言えないけれど、嘘だったとも思わない。
それが本当なら、いつか。
二千年後でも、いつか。リヴァイ、私を、思い出して。
ここに残す言葉が、あなたの心に、少しでも触れたらいい。

リヴァイ。大好き、リヴァイ。おやすみなさい。
二人でいられる時間に終わりが来ることなんて、初めからそんなの、解っていたの。
それでもあなたが二千年後までと口にしてくれる度、馬鹿な少女みたいに幸せだった。
14 リヴァイ
ミカサ。

思えば随分遠回りしてきたな。
焦がれるようにしてお前を求め、共に過ごしてきた時間は、刹那的な幸せと慢性的な切なさで形成されていた気がする。
俺は……ずっとお前の気持ちが見えなかった。

今まで何度この手を離してきただろう。
すれ違う痛みに耐え切れなくて、お前を突き放してきた。
だが、お前はいつも変わらず手を伸ばし続けていて……二度と振り返らないと決めてその選択をした筈の俺は、結局をの手を取りに戻って……。
……事お前に関しての俺は、年端もいかねぇガキみたいに、惑い、迷って、矛盾だらけで。
格好悪いったらありゃしねぇな。

初めてだった。
こんなに誰かを求めたことなんざ、今までなかった。
無頓着で無欲に生きてきた俺の人生の中で、初めて強く求めたことだった。
初めて、心も欲しいと思った女だった。

お前の気持ちが今一歩のところで掴み損ねてたのは、何もお前のせいだけじゃない。
手紙に綴ってくれた、お前がずっと打ち明けられなかった事情を差し引いても、俺にも原因はある。
恋は盲目……俺には無縁の言葉だと思ってたが、どうやらそうじゃなかったらしい。
強くお前を求めるが故に、お前の言葉を本当の意味で聞いてやれてなかった。
小出しに伝えてくれていた気持ちを拾ってやることが出来なかった。
……偉そうに説教しながら、俺も結局自分のことしか考えてなかったのかもな。

今、やっと本当の意味でお前を理解できた気がする。
勿論、完全に隅々までって事じゃねぇ。これからだって、まだまだ知らねぇ部分なんていくらでも出てくるだろうが…。
そうじゃなく……今までお前がくれた言葉が、仕草が、その意味が。全部繋がった気がするんだ。
お前の差し出す「大好き」が、やっと解りやがった。心で理解できた。
ずっと、お前は変わらずに伝えてくれていたのにな。俺はそれを受け取ってやってたつもりになっていただけだった。
格好付けてただけだった。何でも分かった大人の振りして、お前を守ってやってるつもりになって。
その実、一番肝心なことを解っちゃいなかった。…怖かったんだ。惚れた女の前で格好悪くなるのが。お前に嫌われることが。
お前の倍生きていながら、余裕なんざ微塵もなかった。

……ミカサ、悪かった。散々待たせちまったが。
それだけなんだ。俺が、たった一つ求めていたことは。
今のお前には解り難いことかもしれない。俺が求めていることは目に見えるものじゃねぇから。
万人が見て納得できるような、損益の概念から外れたものかもしれねぇから。
いつか、伝わるといい。
俺は、愛したお前の心が傍に在れば、他に何も要らねぇんだ。
離れた間も、お前がずっと綴り続けてくれたから、打ち明けてくれたから。
今はお前を信じられる。お前の心を見失うことなく感じられる。ふとしたすれ違いや、失言なんかに惑わされることなく。
一緒に居るのはお互いに望んでいるから。そう信じ合うことが出来たなら。
見栄だのプライドだの立場だの、そんなものどうだってよくなる。俺はお前に惚れ狂った馬鹿な男でいい。
それさえあれば、俺はなんでも出来る。誰にも負けない。弱い自分の心にも。
もう、お前を見失わない。

……今までの手紙を読み返してみて、つい笑っちまった。
俺、ずっと同じ事書いてるな。壁内全てから「学習力無さ過ぎ」って総突っ込み受けても文句言えなさそうだ。
毎度同じことの繰り返しで、決意語ったってもう説得力もなさそうな気がするが……。

ミカサ。……なぁ、ミカサ。
俺はお前とずっと一緒にいたい。辛いことや切ねぇこともたくさんあったが。
胸を甘く締め付けられるような時間もまたたくさん過ごした。この感覚は、お前じゃなきゃ感じられねぇんだ。
そう言う感覚をなんて言うのか……言葉は知ってたが、自分が味わえるとは思わなかった。
「幸せ」だ。人間ってのは、そんな幸せを与えてくれるような奴に何人が逢えるんだろう。
全員逢えたらいいとは思うが、もしかしたらほんの一握りかもしれねぇな。奇跡と呼ぶのかもしれない。
……お前に出逢えてよかった。心からそう思ってる。

なぁ、たくさん思い出作ろう。旅行に行こう。
アパート行って部屋作りもしなくちゃな。…掃除は済んだって?
甘ぇよ。格子窓の格子の隅にある埃までチェックしたか?床の雑巾がけも三日は掛けなきゃな。俺が採点してやる。
お前の顔見りゃ、すぐに誰にも邪魔されねぇ部屋にシケ込みたくなるが……我慢する。
思い出を作るぞ。お前とやりたいことがたくさんある。お前の声をたくさん聞きたい。いつもお前の綴る言葉を目で追っていたい。

ミカサ……何度でも言うぞ。俺はお前と一緒に居たい。お前じゃなきゃ駄目だ。お前がいい。他に何も要らない。
「またか」と呆れるか?呆れられても言うからな。「二千年後もお前と共に」


…………最後に一つだけ言い訳を。
散々傷つけて、散々待たせまくったが……
お前を結局切り捨てることが出来なかったのは、戻って来ちまうのは。
心のどこかで、お前が俺にとってやっぱり掛け替えのない存在だと知っていたからだと思う。
残念な言語力に心の距離を感じても、どこかで信じてた。こんなに惹かれるお前が、俺にとってどうでもいいような女の筈はないと。
そこだけは認めてくれてもいいだろ?…認めろ。認めやがれ。…頼む。
もう、お前という俺の幸せを手放さないと誓う。

誰よりも愛しく、可愛い、俺だけの最愛の女へ。
十四ヶ月目に、愛を込めて。


Levi
15 ミカサ・アッカーマン
ちょうど一年前のこの日に私が願った短い祈りは、どうやら有効だったようです。一週間も経てばまた区切りの日がやってくる。私の隣には、あなたが居る。…あなたが居る。

虚しい言葉を散乱させた手紙を見返してみると、世間一般で想起される恋仲としては決して、理想的な日々ではなかったのかもしれない。
他の幸福なカップルたちのように、陽の匂いのする女性のように、あたたかな愛情と可愛げのある言葉だけを捧げられたならと何度も呪いながら、あなたを傷つけ、ここまで来た。
私ほど手の掛かる女は珍しいだろうが、あなたほど辛抱強い人もまた居なかった。
そんなあなたをさえ疲弊させ、もう駄目だと感じた夜が幾度あっただろう。
見放してしまう、その選択肢もある筈なのにあなたはその都度戻ってきて私の名を呼んだ。
胸までまっすぐに染み通る、その穏やかで確かな声を聴く度に、私の中で不確かで小さな確信が生まれていったのをあなたは理解してくれるだろうか。
ちっぽけな私でも、あなたに、愛してもらっていていいのだという確信だ。ちっぽけな私だって、あなたの傍に居ることを望む権利を持てるのだという確信だ。
…そしてそのちっぽけな私こそ、あなたの望んでくれた私だったのだという確信だ。
自分をさらけ出す恐怖と、あなたを求めてしまいたい欲に悩まされて、随分、長い冬の中に居たように思える。…そんな私にとってその確信は、あたたかな春にすら似た感触だった。
何重にも複雑に絡まった糸を解けば、笑えてしまうほどシンプルにあなたへと繋がっていた。
もう、見失いたくはない。あなたを。そして私を。

噛みつきながらここまで来て、今日もあなたを愛している。
理想的な日々ではなかった。散々と傷ませたその胸を思いやれば悲しくなって舌を這わせたくなるけれど、それ以上にあなたと笑っていたい。…笑って、生きたい。
あなたにもらったものを少しずつ返しながら、あなたの傍に居られることを、疑いもせずに。

幸せは、途切れながらも続くのだとどこかで聴いた。この先苦しい時がまた二人を襲ったとしても、そこにあなたが居てくれるなら、私は途切れた先の幸せを見つけることが出来るだろう。
ねぇ、リヴァイ。ありがとう。私を、あなたの心の、奥深く優しい場所に置いてくれて。私を、認めてくれて。そして、求めてくれて。
二千年後まで………と口にしてくれるのなら、私はあなたにこう返します。

あなたが望んでくれる限り、私はあなたの傍に。
ぎこちなく紡ぐ思い出に、吐き出すような手紙に。移ろうような日々の中に、あなたと居られる喜びを刻もう。
リヴァイ、あなたは私の生きる糧だ。
16 リヴァイ
記念日から一日遅れの手紙を此処に。

気付けば、出逢ってからもう季節を一巡りして、二度目の夏を迎えた。
去年の今頃、俺は……お前のことをまだまだ解っちゃいなかった。
いや、何一つ知ってる事なんてなかったかもしれない。
ただ、焦がれるように願ってた。近くにいるようで遠いお前をこの手に…
どうしようもなく惹かれる引力の理由を明確にしたくて、お前に腕を伸ばして。
傷付くことを恐れて、伸ばしあぐねて…………いたんだよ。知らなかったろ。
いつもお前は、俺を大人で余裕たっぷりに見えて悔しいと言うがな……
正直な話、俺から言わせればお前の前で格好いい大人の男でいられた瞬間なんてどれくらいあったか…あまり憶えがない。
お前の前では、ケツの青い粋がってばかりのクソガキ……みてぇな感覚だ。
恋って感情は、年齢も立場も互いを取り巻く有象無象を取っ払って、嫌でも同じ土俵に立たせられるのかもな。
そんな何もかも取っ払った俺という存在は、今日もお前にとって特別と呼べるものになれているのか。

……なれているんじゃねぇかな、と自惚れられるくらいには、今はお前の想いを感じてる。

最近、思い出す度に頬が緩んじまうことがある。
この間の夜中、部屋で待つお前の元に帰った時のことだ。あの日は、忙しくて日中に鳩が飛ばせなかった訳だが…
ベッドで丸まってるお前を、時間があれば話したいと誘ったが、お前は何だかノリが悪く、態度も素っ気なく今夜はもう寝ると言う。
どうやら、寂しかったらしい。胸がチクチクしてこのまま会っても俺を困らせるから……とか言う。
不貞腐れてる……とは言えないくらい控え目な、クソ可愛いいじけ方。
最近はそういう機会がないだけで、かつては何度も同じ想いを経験した俺には解り過ぎるくらい解るその感情。
……相手に惚れてなきゃ湧かないその感情を、お前が見せてくれた時、俺がどれだけ嬉しかったかお前は知ってるか。
多分、こんなこと書けばまた真っ赤になって「何故バラすの…」とか言ってぷるぷる震えんのかもしれねぇが……そんなの知らん。嬉しかったんだ、俺は。
ガキの癖に背伸びばっかりして大人の列に肩を並べたがるお前が、隠さずに見せてくれた。変に取り繕わず、伝えてくれた。
……添い寝してやったら機嫌直して、硬い声で謝って来たのにはもう堪らない。……愛くるしくて死にそうになった。

なぁ、ミカサ……毎日が嬉しい。
お前に想われ、お前を想う毎日が楽しい。
変な遠慮も、詰まらない意地もなく、お前と妥協なく、寧ろ競い合うように「好き」を伝え合える今日が嬉しい。
誰かとこんな風に過ごせる日が来るとは思わなかった。…こんなに、抵抗なく心を預ける事が出来るようになるとは思わなかった。
そんなお前という女に、この広い世界でよく逢えたもんだな。…よく、逢いに来てくれたもんだな。
この間話した事だが、それが一体どのくらいの可能性だったのか……どれほどの奇跡だったのかを考えると、またお前の尊さに胸が苦しくなる。

自分を守ることよりも俺を傷つけないことを選ぶお前を。選んでくれるお前を。
俺も全身全霊をかけて守りたい。例えどれだけ傷つくことになっても、恥を掻くことになっても。
お前が明日も俺の隣で笑っていてくれたら。…そう思う。

さて、夏だな…。
結構もうクソ暑くなってきたが……離れる気は全くねぇと伝えて置く。物理的な意味で。
苦手な季節だが、お前の露出が多くなって来ると考えると悪くない……好きな季節になるかもな。期待してるぞ。
……と、段々思考がアレになってきたから、残念な手紙になる前に此処で締め括っておくか。

ああ、そうそう。また記念日に間に合ってねぇが、その訳は当日はお前と濃厚な記念日を過ごしていたからだ。
結構気持ち良さそうにしてたが、ああいう体位は好きなのk……おっと、また逸れてるな。終わる。
…が、肝心なことをまだ伝えてなかったな。終わらない。


ミカサ。愛してる。…愛してる以上の言葉が見つからないから、何度も繰り返すしかねぇが。
…愛してる。お前だけを。十五ヶ月、傍にいてくれてありがとう。
荷物は大体移し終えたか?アパートに移ってからも、たくさん思い出を作ろう。その辺に散歩に行くのでも、飯食いに行くのでも。
何気ないことも、隣にお前が居れば全部俺にとっては掛け替えなく、特別だ。


Levi
17 ミカサ・アッカーマン
15ヶ月。…あなたが私の元に戻ってきてくれてから、およそひと月。
たくさん時間を割いてもらって、お茶を飲んだり、触れて、抱き締めてもらっているうちに……漸く…あなたが傍にいる。以前と変わらず、…想ってくれている。そんな実感が湧いてきた。
遅い、と呆れますか?…仕方ないでしょう。今だって時々、自分に都合のいい夢を見ているのではないかと頬を抓りたくなるのだから。

途切れていた幸せの続きは甘くて、……沈みそうです。
殊更、ずっと抱えていた私情を投げ出して、あなたにそれを理解してもらってからは……まるで素肌で、あなたを感じているように思えます。
…こんな目眩く感覚、エレンにだって、感じたことはなかった。
あらゆることに対して「俺が初めてか」と確認したがるあなたを恨めしく思うけれど、その度に頷くしかないのが、恥ずかしくて悔しい反面で、…うれしい。
あなたはそれを、笑ったりはしないと分かっているから。
ただ、心地よすぎて、近頃めっきり思考が幼児化してしまっているのは難点で……と書こうとしたら、…クソ…なぜバラす……墓場まで持って行く約束ではないの…。

………正直、あの夜は、「やってしまった」と後悔しきりだった。ああ、またすれ違う。また傷つけた。どうして私はこうなのだと、情けなくて。
書いている端から削ぎたくなるほど七面倒極まりないが……あなたは怒ったりなんてしなかった。
私が振り返れるように、傍に居て、…くっついたら、かまってくれて、嫌ったりなんかしないと、微笑ってくれた。
…あたたかくて、いい匂いのするその首にかじりつきながら、ああ、敵わない、と思った。
ライ/ナス………だったか。いつも毛布を引きずって歩く少年の話を知っていますか?彼はお気に入りの毛布を奪われると途端に動転してしまう……
長年マフラーを巻き続けてきた私には、彼の気持ちが理解出来る気がします。
毛布は少年にとって、世界の一部なの。世界を切り取られて、寂しく思わない筈がない。
あなたも、私の世界の一部。だから、居なくなると、寂しい…。

寂しい時に寂しいと、恐れずに口に出せることは、とても幸福だ。
……リヴァイ兵士長。あなたと出逢ったから、知れたことです。


以前より時間に余裕のある日が続いて、私はあなたの帰りを待つことが多くなった。料理も少しだけ、品数が増えた。
同時に空き時間を利用し、いろんな女性の書いたノートを見学に壁内の図書館へと赴く機会も増えました。第一回可愛げ調査……だ。
出撃する毎に素直で健気で可愛らしい理想の女性のような彼女たちと、
手の掛かる言動であなたを困らせてばかり居る自分自身の差を痛感し、心身を打ち砕かれて帰還する毎日でしたが……
いつもは意地悪ばかり言う癖に、あなたは茶化しもせず、そんな私がいいのだと言ってくれる。
上辺だけでない、いつもの論理的な持論と共に。疑うなんて出来る筈もない、まっすぐで飾らない言葉と共に。
…それがどんなに嬉しくて、ありがたくて、勇気づけられて…ひねくれて後ろばかり向きたがる私を安心させてくれているのかと分かっていますか、この人たらし。私たらし…。

だいすき、なんて四文字では、言い表せないくらい、
あなた以外いない。
あなたでよかったと。心からそう思うの。
…だいすき、リヴァイ。
あの時私を見つけてくれて、ありがとう。
呆れるくらいにあなたがすき。
「急いで寝たんじゃねぇか」とあっさり予想してしまうあなたが、私の奥深くまでを理解してくれるように。
私もあなたの一番深い部分に寄り添える存在で在りたい。そう願います。


…元々私は私物が少ない。荷物の整理は終わりました。
夏が来たからと、何をしよう、何がしたい…と思うことはありませんでした。変化するのは気温だけで、いつもの日常があるだけだと。
ですがあなたと過ごす夏ならば、何か思い出を作るのも悪くないのではないかと、ハンナとフランツの会話に耳をそばだてる毎日です。…露出云々はともかく。
こんな日々を繰り返せば、80分の1は、40分の1になったりするのでしょうか。…ねぇ、どう思いますか?

80分の1の思い出を、どうか尊いものにして。

あなたという人生の一欠片を構成出来ることを、誇りに思います。
16ヵ月目もあなたと共に。
18 ミカサ・アッカーマン
16ヶ月、というと、あなたも言っていた通り……一年と4ヶ月です、リヴァイ兵士長。
…長いのか、短いのか、よく分からない。ハンジさんの、背丈みたいだ。ミケ分隊長ほど大きくないし、あなたほど小さくもない。だから、付き合いが長いな、と誰かに言われる度、変な顔をして黙り込んでしまう。
気の早い話ですが…ここ最近は、早く、10月になればいいと思ってばかりいます。暑いから…私にとって嬉しい日があるから…だけではない。
10月になると………一年と、半分。
もしも誰かに長いな、と言われても、そうでしょう、と頷くことが出来るような気がしませんか。
………想像するとなかなか気分が良かった。報酬にパンを3つ用意して、10月になったら誰か私に「お前たち長いんだな」と言ってくれる人を捜してみることにしよう。

ヘソを曲げるとクソガキになるらしい私は、相も変わらずあなたを引っ掻き回した。
噛み付き合ったり、エレンが泣きついてきたり、憲兵団に入団してみたり、見切り発車で祭事に出掛けてしまったり。今月も今月とて、結構、色々あった……筈なのに。
今はどうしてか、穏やかに、あなたの居る壁の方角を眺めながら夜を過ごしていられる。
無論それは、あなたが雌ガキだと呆れながらも、成熟した対応をとってくれているからだ。重々感謝すべきことだし、ありがたく思っている。
でもそれ以上に、お互いにお互いが必要なのだと、いい加減分かってきたから…というのも関係あるのではないだろうか。

私は、結局、あなたが好きで。私があなたを必要とするように、あなたに私を必要として欲しい。
そしてどんな奇跡か、あなたは私を、必要としてくれている。
一人で拗ねたり、見えない最後に怯えていじけたりしてみても、それさえ実感出来れば、自分でも現金なくらい、力が湧くの。まるであなたの言葉に、生かされているみたいに。
…単純?何とでも言って。恋なんて、単純でないと、全てを投げ出せない。

雨が降った時、何かを感じられる人でありたいとあなたは言った。
私はその意味を知りながら、泥濘む泥に磨いた靴が汚れてしまうのを厭うばかりで、その下に固まりつつある地面が在るのを見落としてきたのかもしれない、とふと思った。
確かに、瞼が溶け落ちそうなくらい泣いた夜も幾度となくありますが…その夜がなければ、私はきっと今も、二人でいながら一人ぼっちで居たハズ。そしてそれは、世界に一人きりで居るより寂しいこと。
あなたが手探りでも私に詰め寄ってくれたから、今がある。
差し出して受け止めろ、と、辛抱強く導いてくれたから今がある。
兵士には敬遠されがちな感情も、 情けのない我が儘も。あなたなら笑わずに、時には少し笑って、受け止めてくれると信じさせてくれたから。
私の知らなかった種類の「嬉しい」や「楽しい」が、心の中に確かに息衝いている。
…あなたが、そうしてくれたの。分かる?それがどんなに嬉しいか。
本当に、もう少し威張ってくれたっていいくらいなのに、あなたは。

…夜中に綴るから?また面白くない内容になってしまった。便箋からキノコが生えてくるかもしれない…乾かす。
あなたはいつもこういう場でユーモアを忘れないのに、悔しい。…だが、私に出来ないことを、気負いもなくさらりとこなしてしまうのが、あなたの憧れる部分で…とても好きなところだ。
そしてそんな余裕を取り払って、剥き身の部分を見せてくれる瞬間が、…強くあなたをいとおしいと思う瞬間だ。

16ヶ月目。長くもなく、短くもない、なんでもない夏の日に、願いを託します。星の河はとうに通り過ぎた。でも、ありふれて陳腐な内容は、こんな夜にささやかに祈るくらいがちょうどいい。

こんな風にあなたを想いながら過ごす青い時間が、続きますように。ずっとずっと、続きますように。
夜の風が狼の遠吠えみたいに聞こえることがあっても、その中に、やさしさを感じていられますように。
永く、あなたが、永く、私を必要としてくれますように。

17ヶ月目もあなたと共に。好きです、兵士長。
3時間45分かかって書いた。お忙しい中恐縮ではありますが、これを見たら褒めてください。物理的に。


◎8月の目標
・素直になる(頑張る)
・人と比べない
・餅を焼きすぎない(程よく焼く)
19 リヴァイ
どうやら先を越されたようだが……また今月も記念の手紙を綴る。

一年と四カ月か。
どのくらいの期間が長いと称されるのか…それは考えても仕方のねぇことだろう。
自分でだって、これが長いのかどうなのかわからねぇんだ。きっと三年くらい過ごしてもその気持ちは変わらないと思う。
思うに…お前と共に在れるということを、客観視できねぇんだ俺は。
冷静に物事を客観的に捉えられねぇとは、組織を率いる長として、一兵士としてあまり芳しい話じゃねぇ。
だが……どうにもこればかりは、どうしようもねぇらしい。
一年と四カ月を過ごして、漸く解りかけたことの一つだが……俺は、お前に対してだけは他に対するようにはいかねぇんだ。
お前の一挙一動に、言葉一つに、感情は浮き沈み、時には飲み込まれ、見失い、持て余して暴走する。
およそ、戦場では生き抜けねぇ体たらくだ。…絶望するよ。
それは、一年と四カ月を過ごしても相も変わらず荒波がやってくることを見ればわかるだろう。
お前が言う通り、色々あった。冷静で在れたなら、毎度お馴染みのどたばたを演じる事も無い。
正直…そろそろ諦めが入ってきた。…………おい、勘違いするな。決してこれは悪い意味じゃねぇ。

お前の言う通り、俺達にはこのやり取りが必要なんだろう。
互いを知る上で、大切な術なんだ。確かに痛ぇ想いも、辛い想いもするが……それでも、長続きもしなくなった…と、そうは思わねぇか?
そう……なんだかな。長続きしねぇんだ。お前に背を向けてるのはよ。
諦めと言ったのは、そこだ。どんなに意地張って、喧嘩したって……結局、お前を嫌いになることができねぇ自分に諦めが入った。
俺の心臓には、とっくの昔から、お前の名が刻み込まれているらしい。
こんなクソガキにこの俺が?そんな訳ねぇだろ馬鹿が。……と強がってたのも、今は昔の話だ。

ミカサ……俺は、お前が居ないと生きていけない。

指輪の裏に託したメッセージの通りだ。全てはそこに集約していく。帰結する。
例え夕方にすれ違って、日付変わるまで机を蹴り飛ばして、クッションを投げながら怒鳴り合っても、夜が更ける頃には馬鹿らしくなって。
謝るのもそこそこにベッドで濃厚な対話に興じ、朝を迎える頃には仲良く抱き合って眠っている。
それを見た周囲の反応なんて考えたくもねぇが……とどのつまり、俺達は結局そんなものなんだろう。
カップルだろうが、夫婦になろうが、頭に「馬鹿」って文字は避け切れねぇ……そんなものなんだろう。
それが嫌じゃねぇってことが、まさに極め付けだ。…絶望するよ。

ともあれ、人が人を求めるって事は、それまでの自分の世界をある意味破壊して、再構築することなのかもな。
それが、一緒に居るということなのかもな。…お前の倍生きてるが、俺もまだまだ学ぶことは多いらしい。
学べたことに感謝を。知らなくても生きて行けただろうが、知らないままで良かったとは…思わねぇんだ。

愛してる。
お前じゃ無ければ知れなかった感情。喜びや楽しかったことは勿論、怒りや哀しみ…痛みだって、掛け替えが無い宝だ。
お前と出逢えたこと、今共に在ること。余計な疑念など持たずに、心で受け入れられる。
お前は俺に必要な…俺の探してた欠片だったってな。
だから……また、これからの一ヶ月も宜しく頼む。


Levi


◎8月の目標
・嫁をいやらしい目で見ない。(程よく見る)
20 削除済
21 リヴァイ
出逢い、求め、触れ合い、手探りに確かめ合って。

すれ違い、見失い、傷つけ合って。

形の違う二つの心を、擦り合わせ、形を近づけた二年の日々。


散々手を焼いたし、何度も諦めようとした。
なのに、一筋縄でいかなかったこの二年の日々が、俺は愛しい。
泣かせてばかりだが……ミカサ。お前が愛しい。

節目の今日に、花を一輪置いておく。
思い出深い、カモミールの花を。
抱え切れねぇ沢山の謝罪と、感謝を込めて。
22 削除済
23 ミカサ・アッカーマン
二年経って感じるのは、…色々なことが変わったということ。一口に、なにがとは言えません。でも…変わった。
私に関して言えば…青臭い衝動に生きる獣から、漸く一人前の人間になれたような心地です。

ところどころ欠けて、乱れた筆跡の残る「手紙」たちが示す通り、
あなたとの関係は、所謂世間的な理想の恋愛とは随分かけ離れていたように思う。
自分の中の理想を大事に生きるあなただからこそ、苦しめてしまった事もあっただろう。
私自身、酷く痛い思いもした。
それでも、みっともなくてぐちゃぐちゃでもあなたと二人で生きてきた。
綺麗なものばかり、安らかなものばかり見てきた訳じゃないけれど、
足掻いたからこそ見えた景色もある。
ですから私は…この傷さえもいとおしい。

誰にも等しく時は流れるから、私たちはこれからも少しずつ、変わっていくのかもしれません。
どんな道を選ぼうと、どんなに波が荒れようと、傍に居ようと、居まいと…
私は生きてあなたが在ればいい。出来れば笑って、穏やかに。
…淡白だと寂しく思わせたこの姿勢を、今一度こうして書き残すことを許してください。
きっと今のあなたなら、あやまたず受け取ってくれるのではないかと思うから。

40分の1を私にくださってありがとうございました、リヴァイ兵士長。

あなたが差し出してくれたから、私はカモミールのもう一つの花言葉を知れた。
誰かが居てくれるから、自分だけでは気づけないものを、感じ取れる……そんな日々はやはり、尊い。
記念日だと、気にかけてくれて嬉しかった。
私は幸せです。これからもきっと、ずっと。
だって世界は残酷だけれど、こんなに美しい。
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26 ミカサ・アッカーマン
あなたは、きっと変われる。
だって心の奥では、大切なことを解っているから。
だから私を選んだ。私たちは惹かれた。きっとそう思う。

辛い時や寂しい時は、
重たい鎧を脱いだっていいの。
怖い時は素直に凭れかかって、「俺の事を好きか」と聞いてくれていいの。
何も恐れることはないの。
私が笑って、あなたを抱き締めたように、
いつかの私に、あなたがそうしてくれたように、
誰かの心を殴りつけるような甘え方でさえなければ…
人はちゃんと、受け止めてくれるのだから。
あなたは誰にも搾取される必要なんてない。

心を開いてくれてたのでしょう。だから「私」が解らないのが、悲しかったんでしょう。
愛していたからこそ、憎んでしまったのでしょう。
あなたが最後に投げた言葉の数々が、本心ではないこと、知ってる。
無駄だなんて思ってないこと…ちゃんと知ってる。
それは二人で積み上げてきた信頼だ。
マグカップを買いに行く朝がいつまでも始まらなくても、
私はこの二年間を、愛しているし、後悔はない。
すべて出し尽くした。あなたのおかげです。

今日まで、お疲れさまでした。明日からはまた新しいあなたの1日が始まる。
この世界には、素敵な人、たくさん居る。素敵なこと、たくさんある。
ひとつひとつ拾い集めて、それを大事にして、そして頑張りすぎず、
自分を労わりながら、楽しい毎日にしていってください。
それからいつかあなたの苦手な晴れ空の下で、大切な誰かと笑い合って。
私もどうにか、やっていくつもりです。

いつの日かこの日々を懐かしく振り返るとき、あなたの中の私が、優しい思い出でありますように。
お元気で。ありがとう、リヴァイ。

…楽しかった。いつもいつまでも、幸せにね。
27 クリスタ・レンズ
やっぱりユミルの隣は落ち着くよ。わ、私が馬が好きだって訳じゃないから…!
それにね、私が「ヒストリア」でも「クリスタ」でも、どっちでも良いって言ってくれるの……凄く嬉しいんだ。私は、いい子のクリスタじゃなきゃダメだったから…。
ねぇ、これからよろしくね。次こそあなたを、ずーっと大事にしちゃうんだから!

暈かしてたって、あなたが好きよ。
28 ミカサ・アッカーマン
軽やかな夕暮れを、もう一度あなたと見てみたいと願う。
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