1 ジャン・キルシュタイン

青い花の日

記念日っつうには何気ない一日過ぎて、それでも俺達にとっちゃ大切な一日に変わりない今日この日に慣れもしねえやり方でお前に愛の言葉?感謝の言葉か…?まあどっちでも良いんだが、そういうもんを書くと宣言してから早数日。
そうそうある機会でも無いし、お前が喜んでくれんならそれも有りかと似合いもしねえ感動的な言葉だの素直な愛の告白だのを考えてはみたものの何一つ浮かんで来やしねえ。言いたい事は沢山ある筈なのに何一つ言葉にならねえこの感じは何なんだろうな…。
失敗だのなんだの色々あるとは思うが、頭の出来云々じゃ無く諸々に慣れてねえ所為だっつう事にしといてくれると有り難え。精一杯愛情は込めて書く予定だからよ。

出逢ってから今日までの多分それ程短くはねえ期間を二人で過ごす間、俺の言葉選びや態度がお前にかけた苦労やつけた傷の数は一や二じゃねえ筈なのに、この先も変わらず一緒に居る道を選んでくれて有難な。
上でも下でも前でも後ろでも無く隣に並んでこれからもお前と一緒に日々を過ごして行けたらと思ってっから、クソ下らねえ事でマジ喧嘩してクソ下らねえ事でバカみてえに笑う毎日に末永く付き合ってくれっと嬉しい。
こういう時末永く付き合えよくらいの事を言っちまってもお前なら笑って頷いてくれる気がすんのは、何だかんだ理由をつけて後ろを向きたがる俺に呆れるでもなくお前が伝え続けてくれた言葉のおかげだと思う。
いや、呆れはしてたのかも知れねえけどよ……どちらにせよお前には感謝してる。しつけえのは分かった上で言うが本当、有難な。

そんで一方的に寄りかかっちまうだけの関係ってのは好きじゃねえのに、今の自分がお前を支えられてんのかと聞かれりゃ正直な所頷ける気がしねえ。
だからと言って申し訳ねえなんて思うのも違うって事はもう理解出来てっから、今は甘えてばかりでも近々出来る事見つけっから待ってろ…!くらいの気持ちで居ようと思ってる。
いつも俺が振り返った時手を引いてくれるお前がいつか立ち止まった時は転ばねえ力加減で背中を押してやれるような男になりてえとか、自分にアホみてえに厳しくて頑張り屋過ぎるお前が頑張らなくて良い相手になりてえとか、目標っつうか希望だけならいくらでもあんだけどな。
実際そうなんのは簡単じゃねえだろうけどよ、お前が出来るって信じてくれて応援とかしてくれたら結構何でもいける気がすんだけどなー……って、チラチラしとく。

おまけ程度に報告っつうか、宣言?相談?まあ、なんでも良いか。
いつどうなっちまってもおかしかねえ、なんてそれこそ心臓を捧げる覚悟を持って兵士になったわけじゃねえのによ…現実ってのは分からねえもんだよな。とか、最近思うわけだ。
お前の隣に居る明日は、俺が思うより当然じゃねえんじゃねえか?とかそういうアレがソレで。
恋人になってから何だかんだと今日までずっと、ゴネにゴネて聞き流しに聞き流して、それこそ俺達の喧嘩の要素として一番多く活躍しつづけて来たあの問題をだな。そろそろ解決しちまうかと。
今月はどれだけてれくさくても誤魔化さねえを目標に。来月まで頑張り続けられたら良いな程度で。気が向いたら、かかってこいよやってやらァ!くらいの感じで。つまり何だ……すまん、諸々察してくれ。


あー、最後に一言。今日もお前の事がすげえ好きだぜ。あの日、俺と出会ってくれてありがとな。
2 マルコ・ボット
この日に返事を書くことはずっと前から決めていたのに、当日になって何から話し始めて良いのか分からない。
愛の言葉も感謝の言葉も頭の中身がそのまま形になって伝われば良いけど、お前なら不慣れで纏まりの無いこの呟きから僕の気持ちを察してくれるって信じてるんだ。

出逢ってから今日までの間、自分一人じゃ絶対に経験出来なかったようなことを二人で経験して、楽しいことだけじゃなく苦しく感じたり辛かった時期も全部が今に繋がっているんだって考えると凄く感慨深いな。
頭で色々と考えてしまう僕の性格がジャンを傷付けてしまったり思い悩ませる日もあったと思うし、今もそれが全くないとは言い切れない。
衝突する回数は少なくなくてぶつかり方も毎回激しいから、お互いに思ってもみなかった怪我を負う事だってある。
そんな時に毎回申し訳なさそうな顔をさせてしまうけど、爪で引っ掻くような小さくて目立たない傷を沢山相手につけているのはきっと僕の方だって自覚してるんだ。
それでも見限ったりせずにぶつかり続けてくれるおかげで少しずつ距離が縮まって、思い起こしてみても馬鹿げてるような事で揉めたりもして、二人でその日の事を話して笑いあえるようになった。
懲りずに一緒に居てくれてありがとう。
今日からもきっとまたくだらないきっかけで険悪な空気になったりもするだろうけど、その時はその時でよろしく。

そういえば、時々直接伝えている話ではあるけどジャンは馬鹿だと思う。
もう十分、立体起動装置をつけた上で脱力して体全部を任せるくらいにはお前に凭れ掛かってるのに、不思議なくらいに本人が気付いてないんだから僕の方は体が鈍りそうだよ。
元々の性格は手抜き上手な方なのにここ一番の大事な所で不器用だから、一度立ち止まってしまえばそこにばっかり目が行って思い悩んで自分を責めて…横で一緒に止まって休憩してる僕の力の抜けた顔を見る余裕が無いんじゃないかな。
そういう器用貧乏な所も魅力の内で変わらずそのままでいてほしいとも思うけど、立派にしようなんて考え過ぎずに、頑張り過ぎずに、二人の早さで一緒に歩いていこう。これからもずっと。
それでも僕に何かあった時にはジャンが引っ張り上げてくれるって、お前じゃなきゃそれは出来ないしきっと出来るって、信じてるよ。
逆にジャンの方に何かあった時には、僕が支えたり一緒に待ったりしてやれるようになりたいとも思ってる。
二人のために頑張ってくれてありがとう。

宣言?相談?あの問題のことは、急ぐ気は無かったけど…ジャンがそう言ってくれるなら遠慮はしなくても良いのかな。
来月まで頑張り続けられたら、僕の方から改めて声をかけてみよう。
気ならずっと向いてるし、向かい合ってくれる事が凄く嬉しい。
心から楽しみにしてる。

最後に一言。
出会ってくれてありがとう、一緒に居てくれてありがとう。
きっと今まで以上にこれからもっともっと気持ちが大きくなるんだと思う。
本当に本当に、ジャンのことが大好きだ。
とりあえず今日伝えられる分だけでも届けば良いな。
今日からまたよろしく。
大好きだ。