1 マルコ・ボット

三ヶ月を経て四ヶ月。

まずは謝罪をひとつ。
怒らないで聞いてほしいんだけど、一緒にいる時にはなかなか見せてくれないお前の心根を覗きたくて日付が変わっても出方を窺っていた。
自分でもずるいとは思ったけど、お前がこの場所に言葉を残すときはいつもより饒舌で素直だから…いいよな、好きなものを求めたって。

三ヶ月、ありがとう。
四ヶ月目もよろしく。

どうしても自分に自信が持てない僕を、時には″僕″の姿で励ましながら共に今日まで歩んでくれたことに感謝を。

僕のコイビトへ、まさか僕達の関係をそんな風に思ってくれていたなんて思わなかった。…嬉しいよ。

さらに追伸。
文字数制限に引っ掛かっちゃっただけだから、ここを見ても返事は要らない。
…恥ずかしいしね。
2 ジャン・キルシュタイン
こっちの出方を見てんだろうとは思ってた。ついでにここに書かれるだろうってのもある程度予想はしてた。
俺を唸らせてぇなら深く考えるよりお得意の正攻法やら不意打ちの方が効くと思うぜ。

…とは言え死ぬほど恥ずかしい。呼んでいいモンか悩んでた関係性をこうもあっさり受け入れられるとはな…。

あ?返信不要だと?遠慮すんなって。ついでにお前も茹蛸になりやがれ。
3 ジャン・キルシュタイン
最近やたらと男らしさ(男臭さ?)に磨きが掛かってるお前へ。
体の具合はマシになったか?

何はともあれ、1年の4分の1を共に過ごしてくれたことへの感謝と、5ヶ月目の挨拶を。

3ヶ月辺りってのは色々衝突や問題が浮き彫りになる時期らしいぜ。…一応普段言えねぇことは節目の時やらお前の言葉を見付けた時に言うようにはしてるが…それでも伝わり切ってなかったらちゃんと言えよな。
何が原因で自信が持てねぇのか俺にはさっぱり分かんねぇけどよ、お前は俺がいい、俺はお前がいい、それでいいんじゃねぇか?

お前の自信に繋がるか分からねぇが暴露話をひとつ。
物腰柔らかでお利口さんのお前が俺を″お前″って呼ぶのが好きだ。なんとなく特別のような…距離が近いような、擽ってぇような。

残念ながら俺は″離れたくない″なんてしおらしく言えたクチじゃねぇ。知ってんだろ?ただし俺はお前を離さない、お前は俺を離さない、それで手打ちにしとけ。

…それからその面で公衆の面前で告白してくれるな。恥ずかしい。…いや…嬉しいけど。
言おうと思ってた台詞を取られちまったから、俺の方は次回に持ち越し。

追伸。お前と同じ理由でこっちに書いただけだから返事はいらねぇ。…って言っても反応されそうな気はしてる。
4 マルコ・ボット
まさか一ヶ月前に置いたここに新たな言葉が綴られるとは思わなかったよ。
…あぁ、恥ずかしいな。探すの大変だっただろ?
その…ありがとう、ジャン。

体調の方はもう大丈夫。最近寒くなってきたし、天気が崩れる日も多いからジャンも風邪を引かないよう気をつけて。

うーん…、僕がお前の隣にいることに自信を持ててないことは、最近ではその、口にも態度にも出さないようにしていたつもりだったんだけど…。
ジャンが何で僕なんかを選んで傍に居てくれるのか、分からないんだ。
いや、分かってる。分かってはいるよ。
ジャンは気配りが出来て、聡明で優しい人だから…僕のどこが好きなのか、具体的に例を上げて言葉にしてくれる。
僕でいいんだって、自信を持てるような言葉をくれる。
それでもやっぱり、勿体無い、僕には相応しくないって思ってしまうことがあるんだ。
はは、″俺はお前がいい″なんて大胆な告白をもらってるのにな。

暴露話とは違うけど、僕もジャンに話したいことがある。
僕が告白した時に、ジャンは受け入れてくれたけど好きとは言わずに態度で示してくれたよね。
付き合う前も始めた後も、精一杯だった僕に対しジャンはどこか余裕のある態度だったよね。
すごくお前らしいと思って、そういう所にも惹かれたよ。
けど恋人として付き合い始めた以上、やっぱり甘い言葉のひとつも欲しくなるわけで。
…まぁでも、無理かなって思ってたんだ。
ところが、だ。
普段は割とつっけんどんなお前が、ここでは何だかんだ言いながらも素直な思いを口にしてくれる。
それがすごく嬉しくて、愛おしい。
初めて見つけた時は驚いたよ。
今は一緒に過ごす日を重ねるにつれて、普段でも見せてくれるようになってきた甘い態度に明日が楽しみで仕方ない。

ジャン。ありがとう、僕の日常に彩りを添えてくれて。
5ヶ月目もよろしく。

追伸。3ヶ月辺りとは言いますが、ジャンの気遣いのおかげで二人の間に問題などは特に感じていません。強いて言うなら、僕の自信のなさが問題でしょうか。
でもこうして文章にしてみると、ジャンがすごく僕を思いやってくれているのが分かって、大事にしてくれているのを改めて知って、僕でいいんだと思えるのです。
5 ジャン・キルシュタイン
好きだ。
好きだ。
お前が好きだ。
…好きだっつってんだろ、マルコ・ボット。

気掛かりだったのは事故の可能性とお前の体調だけ。俺はいつも通り全く気にしてねぇ。
自分で自分の枷を作るな。お前を選んだ俺を信じろ。

5ヶ月と1日、ありがとよ。
6ヶ月目もよろしく。


追伸。どうせだからお前の謝罪の分だげ好ぎを連ねてみました。真面目で優等生なお前の罪悪感も少しは軽くなりましたか。俺は穴があったら入りたいです。ちょうどいいサイズの穴を見付けたら御一報下さい。
毎月こそこそ残してた言葉が1日遅れたのも運悪く雪山の訓練とぶつかっただけなので気にしないで下さい。

…何笑ってやがる。俺の敬語がそんなにおかしいかよ、クソッ…。
6 削除済
7 マルコ・ボット
…っ、ごめん、ジャン。ごめん…!
もう嫌われたかと思った。
お前の優しさに甘えてばかりの僕にいよいよ愛想を尽かしたんじゃないかって、確証はないけど不安になるようなことがあったんだ。
そんな時に毎月決まった日にあるはずの言葉がなかったから、本当にもう駄目なのかと思った。

…だから今、泣くほど嬉しい。

好きだ、ジャン。
好きだ、好きなんだ。
好きなんだよ。

お前が今までくれた言葉を信じきれなくてごめん。
勝手に一人で不安になってごめん。
…相変わらず返事を待たせてばかりの僕だけど、どうかこれから先も傍にいてほしい。

P.S.身も心も震えるような熱烈な告白をありがとう。フルネームで呼ぶのは正直ずるいと思いました。
罪悪感の全てが拭えたわけではないけれど、抱えていた不安は綺麗さっぱりなくなりました。重ねてお礼申し上げます。

ついでにちょうどいいサイズの穴をご所望のようですが、それに関しては心当たりがありません。なので今夜、僕は布団の端に寝ようと思います。穴の代わりとして、隣にジャンが潜り込めるように。
言葉を残すのが遅れたのは、お前に嫌われたと思っていたからです。なのでここの言葉に気付くのも遅れました。

…笑ってないよ、ジャン。
嬉しくて泣きそうではあるけれど。

5ヶ月と2日、ありがとう。
来月で半年だね。
8 ジャン・キルシュタイン
マルコ。マールコ。オイ、マルコ。聞こえてんだろマルコ。こっち向けよ、マルコ。
…お前と過ごした月の数だけ呼んだだけ。

そろそろお前の罪悪感が重くなって来たんじゃねぇか、ってことで先手を打っとく。たまには定例日以外に書いたっていいだろ?

大分冷え込んで来たな。夏の暑さが少しだけ懐かしいのと、寒くなってますますお前の体調が気掛かりだ。赤い服のおっさんに風邪薬でも頼んどくか?微妙に年齢制限に引っ掛かっちまいそうだが、お利口さんのお前なら″いい子″の仲間入りさせてくれるだろうよ。

俺は…そうだな、でけぇ枕が欲しい。どっかの親切な優等生が穴の代わりにとんでもねぇ物を用意してくれたお陰で、今の枕じゃ小さ過ぎて距離が近くて死ぬほど恥ずかしい。…お前が今のままでいいならそれでもいいけどよ。

くれぐれも無理はしてくれるな。
お前がこれに気付くかどうかは別として、俺が言いてぇのはそれだけだ。
9 マルコ・ボット
ジャン、気付くのが遅くなってごめん!
なんだろう…その、すごく恥ずかしいよ…。
出会ってからも付き合ってからも、ジャンは僕のことを″お前″や″優等生″って呼ぶばかりだった。そんなお前がたまに呼んでくれるマルコって響きがすごく特別な気がして、大切で、大好きだったんだ。
…なのに今はこんなにも当たり前のように、求めるように、甘えるように僕の名を呼んでくれる。
それが今まで重ねてきた月日が与えてくれた変化だと思うと一緒に過ごしてきた日々がとても愛しく思えるし、飽きることも呆れることもせず僕の側にいてくれたジャンには言葉では言い表せないほど感謝の気持ちでいっぱいだ。

ありがとう、ジャン。
大好きだよ。

今回は連絡もしないで長らく返事を待たせてしまってごめん。
…不安にさせてごめんね。
こんな僕でも願いを叶えてくれる親切な赤い服のお爺さんが来てくれるなら、大切な恋人のわがままが欲しいってお願いしてみようかな。
いつも僕を気遣ってくれて、自分の主張はあまりしない優しくて健気な彼に普段出来ない分何かお返しがしたいんだ。

…枕は今のままでいいだろ?
だってジャン、僕の姿に扮して同じベッドで寝るだけじゃなくいっそのことくっついて寝るのはどうかって言ってたじゃないか。
それに、その…僕が離れたくないし、ね。

いつも心配してくれてありがとう。
その、怒らずに聞いて欲しいんだけど…今回は待たせている間、泣きたくなる程の罪悪感に悩まされることはなかったんだ。
それもこれもジャンがずっと気にするな、待ってるって言葉を掛け続けてくれたお陰だよ。心苦しさがなくなったわけじゃないけど…でも、ジャンの言葉を信じたら不思議と気持ちが楽になったんだ。
だからって甘えていいわけじゃない。
今回みたいなことにならないようこれからは気を付けるよ。

今僕が此処にいられるのはお前のお陰だ。
ジャン。本当にありがとう。
10 マルコ・ボット
今日でジャンと出会って半年だね。
あの時はまさかこんなに長く一緒にいることになるとは思わなかったよ。

僕がジャンを好きになったきっかけは今でもよく覚えてる。
…いや、根に持ってるって言った方が正しいかな。
キスのダメ出しをされたんだ、お前に。
がっつき過ぎてる、落ち着けって。
いい雰囲気だと思ってたのに、そんな流れを断ち切るジャンの発言を聞いて何てこと言うんだとすごく恥ずかしくなった。
けど…お前らしいとも思ったんだ。
場の雰囲気に流されない、自分の思ったことをはっきり口にするジャンは格好良くて…好きだと意識するようになったのはすぐだった。

だから、ジャン。
お前が一緒にいることを望んでくれた時は本当に嬉しかったよ。そして日を重ねるごとに少しずつ見せてくれる新しい一面に愛おしさは募るばかりだ。

半年間、今日までありがとう。
謝ってばかりいる不甲斐ない僕だけど、どうかこれからも共にいてほしい。

追伸。プレゼントは決まりましたか?
11 削除済
12 ジャン・キルシュタイン
お前の目に触れたか分からねぇが、削除したページの分は所定の場所に書かせて貰った。やっぱ盗みみてぇなせこい真似や礼儀に反することはしたくねぇし、ちゃんとあの場への感謝も添えたかったしな。まぁ、かなりの覚悟を要したが。…で、こっから先は恥ずかし過ぎるのと長ったるいのとであの場に書けなかったこと。


超がつくほど真面目でお人よし、押しが強い癖に謙虚な男前、優等生の割に早熟、お利口さんなワル。相反する性質をいくつも併せ持って、それでいて要所を外さず俺に真っ直ぐ気持ちを届けてくれるお前が好きだ。
改めて、6ヶ月ありがとよ。相変わらずの繊細な音色が俺の糧になってる。少し早ぇけど来年もよろしく。


追伸。
プレゼント、考えてみた。とは言え、パッと思い付く物がねぇ。俺は俺で好きに動いてるだけだし…もしかして俺の生き方自体がわがままなんじゃねぇか?とか言ってもおそらくお前は納得しねぇだろうから、ひとつだけ。
もし街に行く機会があったら、何か揃いの物が欲しい。あからさまなヤツじゃなくて、例えば靴下とか…あんまり目立たねぇヤツ。…わがままってこれで合ってるか?

更に追伸。
まぁ、半年だしな。サービスも込めて。
…大好きだぜ、恋人さん。もとい、俺のマルコ。

しつこく追伸。
待たせといてなんだが…お前、全ッ然恥ずかしがってねぇだろ。ツッコミと表情が一致してねぇぞ。
…返事ありがとよ。普段のお前の気持ちが少し理解出来た気がする。その上で、これからも無理無く俺たちのペースでやっていけたら、って思ってる。不甲斐ないって勝手に勘違いしてんのはお前だけだ。
俺はお前がいい。″わがままが欲しい″なんてサラッと言っちまうお前がいい。
13 ジャン・キルシュタイン
瞬く間に過ぎたような、それでいて穏やかな時間。累々たる言葉は数知れず、想いもまた募るばかり。
コイビトさんは真面目な優等生、誠実で素直で、好意を包み隠さず言葉に出来るヤツで。…翻弄されっ放しな気はするが、それはそれでいい気もしてる。
慕情を口にする度お前も真っ赤になってるし、それであいこだよな。

追伸。
とてもとても幸せです。


7ヶ月にちなんでお前に7音の伝言を。
8ヶ月目もよろしく。

ヒント。文頭1文字目を全部抜き出す。
14 マルコ・ボット
マルコ・ボット。

僕にとっては物心ついたときから…いや、覚えていないだけで生まれたときからずっと、当たり前に受け取ってきた響きだ。
僕の名前なんだから、当たり前だと思っていたよ。

…なのに、ジャン。
お前が紡ぐとたちまちそれが特別な響きに変わるんだ。
僕が”マルコ・ボット”で良かったって、心の底からそう思える。
普段は僕のことをお前や優等生って呼ぶジャンが、たまに呼んでくれるマルコって響きが大好きだよ。
…素敵な伝言をありがとう、ジャン。
お前の貴重な時間を使って僕の為にこの仕掛けを考えてくれたと思うとすごく嬉しい。
嬉しいよ…泣きたくなるくらい、嬉しい。

最初のうちは素直に言葉にしてくれなかった想いも段々と伝えてくれるようになって、今では僕よりもジャンの方が大胆だと思う。
翻弄されているのは僕の方だ。
口は悪いのに思いやり深くて、素直じゃないのに向ける気持ちはどこまでも真っ直ぐで…お前から目が離せない。

いつも手紙を返すのが遅い僕だけど、返せない間は貰った手紙を何度も読み返しているんだ。
ありがとう、ジャン。
僕も今、毎日がとても幸せです。

追伸。
一応僕の名誉の為に言っておきますが、ジャンと過ごした月日の数は決して忘れてはいないです。
ただ言い方を間違えただけで…。
なので言い直しさせて下さい。

7ヶ月ありがとう。
8ヶ月目もよろしく。
15 ジャン・キルシュタイン
お前と巡る季節ももうすぐ一周しそうだな。どんな気分だ?優等生。三寒四温にやられて寝込んでくれるなよ。…まぁ、そうなったらなったで、下手なりに面倒見る気ではいる。

…そうだな。たまには少し思い出とやらを語ってみるか。
お前と出会ったあの頃はまだこの界隈も人の気配やら声やらが今よりずっと少なくて、実のところ半分くらい駄目元で医務室の外に呼び掛けた。誰もいなきゃいねぇで寝りゃいいだけだ、ってな。
そこにどっかのお人好しが現れて、しかもそのお人好しがまた甲斐甲斐しいのなんの、曇りの一点もねぇような誠実さでシャンと背を伸ばしてやがるモンだから、俺は不調を口実にズルズル深みへ嵌まって行った。

気が置けねぇヤツと話すのは楽しいし、悪ふざけに律儀に引っ掛かる姿を見るのも面白いし、そんなわけでお前と呼吸を重ねるのが俺の糧になって、…持て余した感情をこっそり吐き出した。これが最初の呟きだ。正直、お前が見るとは思ってなかったから完全な自己満足だった。それでもやっぱりこっ恥ずかしくて、悩んだ挙げ句に優等生面を借りてまで書き残した。
…手元にある、って言ったよな。お前は気付いてねぇかもしれねぇが、俺が呟いた時間、お前の最初の声の丁度1ヶ月と1分後なんだぜ。

で。どうせ反応なんかねぇだろうと思って何気なく確認したら…この野郎、ソッコー見付けやがって。「何が゙敵わねぇ゙だ。俺の方が参ってんだよ、バカ」とかなんとか思いながら顔が緩んじまったりして。
お前は俺がドライに見えてたみてぇだが、それは俺も同じだ。だからこそお前からまさかの反応があって、嬉しくもあり恥ずかしくもあり…いや、嬉しいって方が格段にでかかった。今思えば、腹の探り合いもクール振るのもお互い様だった気がする。要するにあいこだ、あいこ。

あー…まとまんなくなって来た。だらだら語ったところでお前みてぇに柔らけぇ文章は書けねぇが、…少しでもお前を喜ばせてやれてりゃ幸い。

8ヶ月ありがとよ。
9ヶ月目もよろしく。
元親友、現恋人、俺のマルコへありったけの感謝を込めて。


追伸。
甘いものはお好きですか。それとも本の方が喜びますか。こちらとしてはダズンローズも捨て難いと思うのですが、いかがですか。飾った後はドライフラワーにしてもいいと思います。…生憎花の手入れは出来かねますので、その場合はそちらにお任せします。
16 マルコ・ボット
ジャン、ここに来るのが大分遅くなってしまってごめん。ちょっと体調を崩して参っていたんだけど、それはまた後で話すよ。今はようやくここに来れた喜びと、お前への申し訳なさを胸に筆を取ろうと思う。

出会った頃を振り返って話をすると、僕はお前に会いに行くことを本当は迷っていたんだ。だから一度は見送ったんだよ。筆の運びが遅いのは自分で承知していたから短い期間のやり取りには向かないと思ってた。
でももう一度ジャンの姿を見掛けた時…思いきって声を掛けてみたんだ。まさかその縁がこんなに長く続くとは思わなかった。

ジャンは初めて言葉を交わした時から気を遣ってくれていたよね。やり取りを始めたら僕が不安や不快に思うかもしれないと、そうお前が考えたことは予め全部伝えた上で改めてやり取りの意思を聞いてくれた。すごく真面目で、すごく誠実で、とても思い遣り深い人だと感じたよ。
僕は思うんだ。
ジャンは相手の立場に立って物事を考えるのが上手い人だって。
最近の僕達で言うと、僕が手紙を書くのが遅くてお前を散々待たせてしまったことに対して謝罪をしようとすれば、僕を責めるようなことは決して言わずに、負担も負荷も与えないよう言葉を選んで、返事を楽しみにしているけど待つのは苦じゃないから急がなくていいってことを柔らかく伝えてくれる。それはきっと、僕が自分自身を責めているのをジャンが分かっているからだと思うんだ。
だから自分を責める僕の心が少しでも軽くなるように、言葉を選んで掛けてくれているんだろ?

そんなお前が紡ぐ言葉は、実直な内面が文字に滲み出たかのように綺麗で、澄んでいて、僕なんかが相手をして貰うなんておこがましいくらい魅力的な内容で。
今だってそう思ってる。
ずっとジャンの紡ぐ言葉に憧れてる。
だから一ヶ月目の節目の日、最初の呟きを見付けた時は僕に宛てたものなのか半信半疑で、でもお前だったらと思うと指先が震える程嬉しかった。
ジャンが、僕を見てくれているってね。
お察しの通り、ジャンはドライだとも思っていたから。僕がドライって思われていたのは心外だけど…はは、でも出会った頃は今よりずっと格好つけようとしていたかもしれない。

…あぁ、駄目だ。
ジャンのことになると伝えたい言葉が次から次へと出て来て言いたいことがまとまらなくなってしまう。
だけどこれだけは。
ジャンが残してくれる言葉に馬鹿みたいに喜んでるよ。本当に馬鹿みたいに。何度読み返したか分からない。お前の言葉を読むと不思議と温かな気持ちになって、穏やかな一日を過ごせるんだ。

8ヶ月間ありがとう。
9ヶ月目もよろしく。

僕の大好きなジャン・キルシュタインに宛てて。


追伸。
甘いものは好きです。本を買ったら揃いのしおりを選ぶのも楽しそうです。ダズンローズは初めて聞きましたがロマンチックな貴方のこと、きっと素敵な意味があるのでしょうね。勉強しておきます。
ですが何よりも欲しいのは貴方です。
甘いものも本も花も手に入れた一日の終わりには、私が最も望むものをいただけないでしょうか?

更に追伸。
ここ数日、流行り病にかかり寝込んでいました。お伝えしていなかったのでそちらが知らないのは無理もないことですが、まさか熱がピークの時にあのような手紙を受け取るとは思いもよりませんでした。お陰で体中の血液が沸騰して気を失いかけ、しばらく動悸と目眩が収まりませんでした。
責任は取って貰います。
17 マルコ・ボット
出会って9ヵ月目にして僕が心に強く決めた覚悟をお前は受け入れてくれるかな。
ジャンは頭が良くて察しもいいから全てを言わなくても僕が何を求めているのかきっと分かってくれると思う。

僕にとってジャンは、触れるのが恐れ多いと思えるくらいに気高くて、優しくて、尊い存在なんだ。ジャンは僕の憧れの人なんだよ。出会ってから今日までこの想いが褪せたことはない。
だからお前と思いが通じ合った時すぐには信じられなかったし、今でもやっぱりたまに思う。なんで僕が、って。
あ…、ジャ、ジャンの言葉を信じてないわけじゃないんだ!
普段はこんな形で会えない分、毎月ここで想いを綴って好意を示してくれるお前の言葉と優しさが泣きたくなる程嬉しいし、僕でいいんだって思える。ジャンが僕のことを『恋人さん』って呼んでくれる度に照れ臭くも誇らしい気持ちになる。

…でもそんな思いがあったからこそ、お前との距離をずっと測りかねて遠慮が消えなかった。だけど一度だけ、優等生を休んで僕自身をぶち撒けたことがあったよね。
口に出したら今まで燻っていた思いが溢れて止まらなくなったんだ。加えてお前が煽るような態度を取るもんだから…。

だから、ここまで書いて何が言いたいのかって言うと、僕は…決めたから。何をとは言わない。察してくれ。
責任を取ってもらうって言葉を嘘にするつもりはないから覚悟しておいてね。

ジャン、大好きだ。

今日までありがとう。
10ヵ月目もよろしく。

追伸。
ダズンローズについて調べました。やっぱり僕の予想通りロマンチックなものでしたが、想像以上にロマンチックで…。
…花の世話は僕がするとして、これを贈ったら貴方は応えてくれるのでしょうか?
18 ジャン・キルシュタイン
お前の真摯な姿勢が好きだ。
始めの断りから今に至るまで、お前は俺の言葉に対して真正面から向き合って応えてくれてる。

お前の誠実さが好きだ。
連絡一本、例え期間が開いたとしても、欠かさず届く言葉にいつも安心させられる。

お前のひたむきさが好きだ。
俺の根っこを否定せず、いつだって寛容な態度で俺を見てくれてる。

お前の一途さが好きだ。
馬鹿みてぇに褒め倒すモンだから、時々お前が見てんのは幻なんじゃねぇかって疑っちまいそうになることはあるが。

お前の謙虚さが好きだ。
お前が自覚してるよりお前はずっとすげぇ奴なのに、それをおくびにも出さねぇ。

お前の柔らかい音が好きだ。
俺の荒削りな響きと違って、お前の言葉には熟考と推敲を繰り返したが故の温かさがある。

お前の人間くささが好きだ。
ほんの時々、優等生の皮を脱いだお前が見せるギャップに眩暈すら感じる程度には。

お前の優等生っぷりが好きだ。
でもたまにはがっついたって逃げやしねぇぞ。

つまりはお前が好きだ。
好きだっつってんだろ、マルコ。


9ヶ月にちなんで9つ、思いの丈を記してみた。が、書いてる途中で気付いちまった。9個じゃ全然足りねぇなって。
お前は褒め殺しが得意みてぇだけどな、俺だって同じ位、お前に感謝してるし尊敬もしてる。じゃなきゃこんだけ長く連れ添ったりしねぇよ。
人間関係の全部を損得で勘定するつもりはねぇが、少なくとも俺がお前の隣に居てぇんだ。だから連れ添ってんだ。お前こそいい加減察しやがれ、優等生。


9ヶ月ありがとよ。
…今回はしてやられた。まさか日付ぴったりにとんでもねぇ覚悟を見せ付けられるとは思わなかった。
10ヶ月目もよろしく。恋人さん。


追伸。
俺は貴方が思うほど頭も良くなければ察しもそれほど良くありません。…ということにしておきます。ですから、その覚悟の内容を聞かせて頂ければ幸いです。貴方の口から、貴方の言葉で。それを受け止める覚悟ならこちらも出来ているつもりです。

更に追伸。
真面目な貴方のことだから、きっと調べるだろうと思っていました。見付けた時の貴方の反応を間近で拝見出来なかったことが残念です。きっと、驚きと喜びと恥ずかしさで真っ赤になった顔を必死に覆い隠していたことでしょう。選んだ1本の花びらを押し花にして、揃いのしおりにするのも良いかもしれません。
どちらにしろ、手入れはお任せします。何しろこちらは、花を愛でる貴方を愛でることに両手が塞がってしまいますので。
19 ジャン・キルシュタイン
300日+αを共に過ごした俺の優等生へ。

この間の花冷えでまさか寝込んだりしてねぇだろうな。
その節は一番乗りありがとよ。同じ時を過ごすにつれて短くなってく貴重な同い年期間を、一日一日噛み締めてる最中だ。
…で。現在進行形でプレゼント的なものを貰ってるわけだが。その…、例えば不満とか不安とか疑問とか、湧いたらすぐに言えよ。真面目なお前のことだから、もしかしたら俺の提示条件やら何やらを引っ張り出して慎重に生真面目に手順を踏んでるかもしれねぇが、なんつーか…俺はお前がいい。色々引っくるめてお前がいいから、お前はお前がしてぇように動けばいい。惚れた相手には案外甘いんだぜ、お前の恋人はよ。

来る日も来る日も訓練続きで、なかなか腰を据えて話すことは出来てねぇな。それでも俺の気持ちは変わらねぇし、お前と対等に肩を並べられる位の想いを持ってたい。何度も言ってるが俺が好きなのはお前だ。今度また妙な発破掛けやがったら罰ゲームでもして貰う。食堂でラブレター発表とか。…いや、やっぱりそれは止め。俺が恥ずかしい。

早春に芽吹く花みてぇに柔らかくて、隆々たる大樹みてぇに男前なお前へ。

10ヶ月ありがとよ。
11ヶ月目もよろしく。


追伸。
遅れた理由は忘れたわけでも愛想を尽かしたわけでもありません。このタイミングで言葉を残すのが恥ずかしかっただけです。それから万が一貴方が体調を崩していたら、一人で逆上せ上がるような真似をしたくなかっただけです。声が聞けて少し安心しました。くれぐれも御自愛下さい。
20 マルコ・ボット
ようやくこの場に来ることが出来た。
随分と待たせてしまってごめん、ジャン。
もう次の出会いの節目もすぐそこだな。
本当に、待たせてしまった…。

10ヶ月間ありがとう。
そして11ヶ月目も、こんな僕に愛想を尽かさず傍にいてくれてありがとう。

出会った頃から僕のことを『優等生』や『お前』って呼んでいたけど、最近は名前をよく呼んでくれるね。
その響きが少しずつ、でも確実に甘さを帯びてきていることに愛しさを感じずにはいられない。
つっけんどんだと思っていた僕の恋人は可愛くて、思いやりに溢れていて、優しくて、とても気遣い屋で、いつも僕を大事にしてくれる。

ありがとう、ジャン。
日を重ねるにつれて少しずつデレていく態度の変化にどきどきさせられっぱなしで、一挙手一投足から目が離せません。

僕だからジャンがここまで柔らかい表情を見せてくれるようになったって、自惚れてもいいかな…?
僕以外には見せないで欲しいんだ。笑顔も、優しさも、気遣いも、お前の良いところ全部。

…なんて、冗談だ。

ジャンに"俺の恋人"って言ってもらえる僕を僕は誇りに思う。
大好きだよ、ジャン。


ありったけの感謝と恋慕を込めて。
お前の恋人より。
21 ジャン・キルシュタイン
お前が三ヶ月記念に筆を走らせた日から随分経った。その後どうだ?あの頃と今と何か変化はあるか?マルコ。

俺は…そうだな、お前が言うようにデレが出て来たかもしれねぇ。一応自覚はあるぜ。なんせ優等生のお墨付きだ。けどな、勘違いされちゃ困る。お前が俺を変えたんだ。お前だからデレて来ちまったんだ。

約十一ヶ月前。その時の俺はお前にこんな感情を抱くなんて考えてもいなかったし、夜寝る前に瞼を閉じて浮かんで来る顔も勿論お前じゃなかった。それが今じゃどうだ。寝る間際までその面を拝んでる癖に、夢にまで出て来やがる。大した奴だよ、俺の恋人さんは。

…ああ、でも。勘違いしてくれるな。何度も言ってる通り、流されたつもりも生半可だったつもりもねぇ。お前は俺の、名前を付けられねぇもやもやした感情に゙恋゙って名を授けて、ほんの少し手を引いてくれただけ。掴まり立ちを経て歩き方を覚えた俺は、ちんたらしつつも確実にお前の゙恋゙に向かって歩き続けてる真っ最中。そうなりゃデレが生じるのは自然なことだろ。…どうだ、少しは独占してる実感わいたか?恋人さん。

マルコ。なぁマルコ。俺はもうこの感情を知らねぇ頃には戻れない。歩みを止めることも出来ない。だからな、マルコ。そんなにいつまでも怖がんなくていいんだぜ。俺の歩みを止められるのはお前だけだ。その逆で、お前がいる限り俺の足が止まることはねぇ。

マルコ。マールコ。
十一ヶ月ありがとよ。
十二ヶ月目もよろしく。


追伸。今から来月のあれこれのことで頭がいっぱいです。まとまらなくて焦りが生じるのに何故か幸せです。この感情の名ば色ボゲでしょうか。

追伸の追伸。まだまだ自惚れが足りません。今後の頑張りに期待しています。
22 マルコ・ボット
僕の大好きなジャン・キルシュタイン様へ。

十一ヶ月。
経った今でも、出会った頃からジャンに抱いている尊敬と憧れと…自分に対して卑屈になってしまう自信のなさは相変わらずだと思う。
変わったことと言えばジャンのことを『恋人』って呼ぶのに抵抗がなくなってきたことかな。
初めは恥ずかしかったし、僕がお前をそう呼ぶのがおこがましいような気がしていたんだ。

…けど、良いんだよな。
僕がお前の恋人で。

筆を走らせていて思ったけど、同じような事を前にも書いた気がする。
恥ずかしいから自分の過去の書記は読まないけどね。
でももしそうだとしたら、やっぱり今もどこかでジャンが僕に好意を向けてくれるのを半信半疑にしてる自分がいるってことだ。

けどね、僕も変わるよ、ジャン。

十一ヶ月一緒にいて、ジャンが少しずつ、でも確実に歩み寄ってきてくれたように、僕も怯えるのは止めてもっと自分に自信を持とうと思う。
僕だから好きになってくれたんだろ?って胸を張って言えるようにするよ。

ジャン。僕はね、もっとお前が欲しい。
好きだと囁き合って、一緒に寝て、お前の夢の中まで侵食して…それでもまだ足りない。
まだまだ、僕の独占欲を満たすには遠い。
意外と貪欲なんだ、僕は。

もっといい男になるよ。
お前が目を離せなくなるくらい。
だからこれからも傍にいて、ジャン。
僕の決意を見守っていて欲しい。

十一ヶ月間ありがとう。
十二ヶ月目もよろしく。

追伸。
それが"色ボケ"だとしたら、いえ、例えそうでなくても貴方にそこまで想われ大切にされている僕は間違いなく幸福者です。

追伸の追伸。
精進します。
迎える節目には成長した僕をお披露目出来たらと思います。
23 マルコ・ボット
一年。
ジャンと出会ってから、今日でちょうど一年が過ぎた。
思い返せばあっという間だ。
それは僕が遅筆のせいで、言葉を交わすのに日を空けてしまっていたからかもしれない。
…なんて、そんなことは言わないよ。
こんなにも月日の流れが早く感じるのはジャンとのやり取りが楽しくて仕方ないからだ。
お前の言葉を受け取る度、新しい顔を見る度にどんな返事を返そうか考えて、先のこと先のことに夢中になっていたら一年なんてあっという間だった。

この一年、僕は何度お前に謝っただろう。
返事が遅くて、ろくに言葉を交わせない日々が続くことなんて当たり前で、また謝罪を繰り返すのに結局口先だけで改善されない。
そんな僕に、お前は愛想を尽かすわけでもなく怒るわけでもなく呆れるわけでもなく傍に居てくれた。
傍に居て大丈夫だ、気にするなってずっと励ましてくれた。
ありがとう。ジャン。

一度、もう全てを手放してしまおうと思ったことがあった。
ジャンも分かるって言ってくれたけど、待たせてばかりいるのが本当に辛かったんだ。
だけどあの時手を離していたら僕はきっと後悔していたよ。
今、ジャンの隣にいられるのがこんなに嬉しくて幸せなんだから。

情けない僕をずっと支え続けてくれてありがとう。
感謝の気持ちを述べても『自分のしたいようにしてるだけだ』っていつもジャンは言うけど、そんなわけないだろ。
僕を想ってくれていたからこそ出てきた言葉、気遣い、いっぱいあるはずだ。
なのにそうやって自分本位の行動に見せようとする素直じゃないところとか、不器用な優しさとか…今日までずっと愛しいと思わずにはいられなかった。
大好きだよ、ジャン。
一番伝えたい言葉は直接お前に。

誕生日のお祝いもありがとう。
お前は短い言葉でも鳥肌が立つくらい深い愛の言葉をくれるのに、僕は長々と綴るだけで要点もまとまっていないから恥ずかしいよ。

一年間、ありがとうジャン。
二人で刻む新たな年もよろしく。
24 削除済
25 ジャン・キルシュタイン
上のはミスっただけだ。気にすんなよ。


365日の経過と共に寝る場所が限りなく近くなった元親友へ。

まずは大事で貴重な節目の言葉が遅くなっちまったことを詫びさせてくれ。俺としてもやりたいことは色々あったんだが、残念ながらお前の言葉に反応するのに手一杯だった。すげぇ申し訳なくて、意識半ばで布団被りながらぼそぼそ歯切れ悪く返事したってのに、お前は受け止めるどころか泡食って看護してくれて。…なんつーか参った。怪我の痛みじゃなくてお前の声が優し過ぎて目の前が霞みそうになった。

…で。肝心の一年な。俺もあっという間だったって思ってる。まだまだお前とやりてぇことも見たい景色も沢山あって、……オイ、今更勘違いすんなよ。お前の筆運びがどうこうって言ってる訳じゃねぇ。要はもっとお前と言葉を交わしたいってこった。頻度の問題じゃなく、お前と居る空気が心地良い。

けどまぁ、色々あったよな。色々あって、根気強く向き合って、最終的にお前は一番大事な所を自分から理解してくれた。ついこの間もそうだった。
″会う度に申し訳なさそうに頭を下げられるより、楽しそうに笑っていてほしい″。
正にそれだ。お前は相手の立場に立って物事を考えられる人間だから、人の輪を結び付けるのに向いてるんだろうよ。そんで所謂、輪からはみ出し気味な俺にまで世話焼いてくれてるし。…別に拗ねてねぇぞ。客観的に見たらそうだろって話。

俺も直接言うべきことは伝えたからこの位にしておく。
一年と半月ありがとよ。
十三ヶ月目もよろしく。
現恋人さん、俺のマルコへ。
26 ジャン・キルシュタイン
…オイ、勘違いすんなよ。律儀な彦星さんの襲来に返事しなかったのは単に恥ずかしかっただけだ。すげぇ嬉しかった。返答の手紙も半分まで書いたんだが、なんかますます恥ずかしくなって引き出しにしまっちまった。
…詫びの代わりに、たまには普段言わねぇこと言ってやるよ。お前が喜びそうで、恥ずかしがりそうなこと。

一年記念からもう一月か。お前と過ごす季節は居心地が良すぎて、ふと気付いたら記念日が巡って来てる。穏やかな幸せっつーか。…お前もそうだと嬉しい。

そんで十三ヶ月目にして俺が今一番したいこと。

キスがしたい。

「…え?」って顔すんな。キスしてぇ。お前のチャーミングなそばかすの倍の数だけキスさせろよ、優等生。勿論、お前は更にその倍返しな。そうやってふやけるくらいずっとキスしてたい気分。
…言ってる俺も恥ずかしくなって来やがった。タイミングがタイミングだし、あんまり積極的に声掛けてねぇけどな。変わらず好きだぜ、マルコ。

寝る前に地肌から香る匂いが抜群に好みな恋人さんへ。
十三ヶ月ありがとよ。
十四ヶ月目もよろしく。
27 マルコ・ボット
参ったな…。
ここへ来るのが遅くなってしまったこともそうなんだけど、何て言うか、その……ジャン、さ。

…可愛い。

返答を送ろうとお前の残した手記に目を通す度に、恥ずかしくなって手にした筆が止まってしまうんだ。
本当に参った。ずるいよ、ジャン。

気が付けば一年と一ヶ月目も今日が最後で、明日には出会って一年と二ヶ月になるんだな。
本当に遅くなってしまってごめん。
十三ヶ月間ありがとう。
十四ヶ月目も変わらずありがとう。
そして節目を迎える明日からもまたよろしく。

今更だけど、お前が引き出しにしまった書きかけの手紙が欲しいなんて言ったら怒るかな。ジャン、お前の調子が悪いって聞いたときは本当に心配したよ。
きっと引き出しに閉まった手紙にはその時の体調のこととか書いてあるんじゃないかって思うんだけど…どうだろう?
そうじゃなくてもジャンが僕に向けてくれた言葉を僕が知らずに終わるなんて可笑しいじゃないか。

っ、僕のそばかすをチャーミングだなんて表現するのはジャンだけだよ…。
人のコンプレックスを捕まえてキスしたいだなんて、それも他人が見れるこんな場所で…あぁ、もう!恥を知れよ!
本当に、悪い毒でも飲んだんじゃないかってくらい最近のジャンはぐずぐすに蕩けるように甘くて可愛くて、僕の心臓が保たない。
だけど築いてきた月日の中で手に入れたお前の一面だと思うとすごく愛おしくて、優越感に満たされて、このまま誰の目にも触れさせず僕の元だけで囲っていたくなる。
…最後のは冗談だけどね。

ジャン、僕はお前が大好きです。
最上級の言葉は二人きりの時だけに。
今日まで共にいてくれてありがとう。
そしてどうかこれからも傍にいて下さい。
28 削除済
29 ジャン・キルシュタイン
忙しい盛りの俺の優等生へ。

その世迷い言の様な譫言の様な台詞はまさか暑さにやられた訳じゃねぇよな。もしかして夏風邪か?
…何つって、冗談だ。お前の瞳に俺がそう映るなら、間違いなくこの十四ヶ月の間に何らかの変化があったんだろうな。俺がお前と居たいが為に、お前が俺と居たいが為に、それぞれが影響し合って少しずつ変化して、今の形になった。俺はそう思うぜ。

それでもたまに不安になったりする。こんなに呆れる位陶酔して、いつか本当にお前に呆れられちまったらどうしようか、って。だからお前から連絡が来ると嬉しい反面少し緊張するんだ。そんでドキドキしながら手紙を開いて、薄目で文字をなぞって、漸く安心する。それから別の意味でまたドキドキし始めて…その繰り返し。
だからと言ってお前の気持ちを疑ってる訳じゃねぇ。それは違う。…なんだろうな、多分幸せ過ぎてびっくりしてんだ。あんまり幸せがでけぇから、咀嚼すんのに時間が掛かっちまってるような。

…そうだ、手紙。リクエストにお応えして此処に書き写そうかとも思ったんだが、照れ臭くなっちまったから後でこっそり枕元に置いとく。お察し通り体のことにも触れてる。あの時は心配掛けて悪かった。

なんだ、コンプレックスだったのか?俺はてっきりキスして欲しいって目印かと思ってたぜ。…マジになるなよ、でもそん位好きだ。お前を形作る色も体も心も。毒を飲んだつもりはねぇけど、蜜を吸った気はしてる。どっかの優等生がとろとろに甘やかしてくれちまうモンだから、夢見心地で足元すら覚束ねぇ。
もっともっと優越感に浸って自惚れて笑ってろよ。お前が笑うなら安心して隣で笑ってられる。

マルコ。俺のマルコ。俺だって負けねぇくらいお前が大好きだ。
十四ヶ月と一日ありがとよ。
十五ヶ月目もよろしく。


追伸。「囲う」云々辺りから「これからも傍に」の一連の言葉が、一瞬プロポーズに見えました。真面目な顔で蜜を差し出すその姿勢こそずるいと思います。
あと何回惚れ直せば良いのやら、見当もつきません。

更に追伸。朝になって誤字に気付いたので慌てて書き直しました。もうバレてしまったかもしれませんが、サラッと書いている風でいて、かなり緊張しています。公共の場で手紙を広げるのが恥ずかしいので、なかなか自分が書いた文章を読み返せず、普段よりミスが多くなってしまいます。……クソ、恥ずかしい。
30 マルコ・ボット
先月と同様、新たな節目を迎える前に一年と二ヶ月目を僕の言葉で締める。
…なんて、格好つけて言ってもただ遅筆なだけなんだけど。

ジャン。この一ヶ月も変わらず傍にいてくれてありがとう。
…はは、変わらずっていうのは語弊があるかな?うーん…、正面から僕と向き合ってくれてありがとう、か。
悩ませてしまってごめん。でもお前がその葛藤を一人で抱え込まず僕にぶつけてくれて嬉しかった。
初めこそ動揺したし、やり取りの中でお前に不信感を抱かせてしまった自分の至らなさを情けなく思って泣きたくもなったけど、話し合って、すれ違っていた思いに気付いて、歩み寄って…なんだか恋人みたいですごくいいなって思ったんだ。
もちろんジャンは僕の大好きな自慢の恋人だよ。
でも…そうだな。いつも気を遣わせて、まるで壊れ物を扱うように大事にされてるって思っている部分もあったから、ジャンが真っ直ぐに僕を見ていてくれたことが嬉しかったんだと思う。
はは、ジャンとだったらいい喧嘩が出来そうだ。

僕は本当に筆が遅い。
ふとした瞬間にこの世界にいるのは向いてないんじゃないかって、自己嫌悪に浸ることもある。
けれどジャンは僕のペースが遅いのを肯定した上で、「周りから見たらのんびりかもしれないけど俺たちには俺たちのペースがあるだろ」って言ってくれた。
僕はその言葉に本当に救われたんだ。
ありがとう、ジャン。
僕に少しずつ自信がついてきたように見えたなら、それはお前のお陰以外の何者でもないよ。
ジャンが僕を変えてくれた。

十四ヶ月間ありがとう。
十五ヶ月目もありがとう。
そして明日からもまたよろしく。

ジャンは呆れられないか不安になるって言ったけど、それはいつも僕の方だ。満足に想いを態度で示すことが出来ないでいる僕だけど、心の底からお前が大好きだよ。

追伸。
もし僕が本気でプロポーズをしたら、この手をとって首を縦に振ってくれますか?

追伸の追伸。
冗談が常識ですね。珍しいこともあるもんだと思わず口元が緩んだのを覚えています。そして緊張している胸のうちを明かしてくれた貴方がとても可愛らしく愛らしいと思いました。
周りの目なんて気にせずに、もっと僕だけを見てくれればいいのに。なんて、いうのは冗談です。

もう一つ。言の葉への返答。
お前の為にする夜更しなら悪くないと思いました。ただ襲い来る睡魔に筆を持つ手が震えるもので、きちんと判別出来る言葉を書けている自信はないです。
31 ジャン・キルシュタイン
俺のむっつり優等生へ。

一年を過ぎた辺りから何ヶ月目かあやふやになってて、そんでそれが何とも心地好いっつーか照れ臭いっつーか、とにかく今日も昨日も勿論明日もお前の腕なり寝顔なりに癒されてる。

この間はどうも。お前、一年以上前からそうだけどよ、時々急に男らしくなるよな。…あれは卑怯だ。女子でもねぇのに心臓がキュッと甘酸っぱく縮んじまう。
極めつけの台詞に卒倒しそうになるやら顔が茹で上がるやら、お前が寝てる隣で百面相してたんだぜ。勿論責任は取ってくれるよな。

いつも暖かく包んでくれるお前に日々の感謝を。
17ヶ月ありがとよ。
18ヶ月目もよろしく。
…たまにはこっちでお祝いも良いだろ?


お前のボット君より。


追伸。ふと筆を執りたくなりフラッと書きに来ただけですので、そちらは無理なさいませんように。くれぐれも御自愛下さい。