1 エルヴィン・スミス

さて、

すべてが、恐ろしくなった。
終わらない書類も、朝の鳥の鳴き声も、夜の雷の音も、すべてが今まで通りで同じだというのに。
お前がいない。それを確認することすら、今の私には恐ろしい。
あの言葉に返事をしなかった。それが君の答えだろう?
私はいまでも、君を愛しているよ。震える肩を抱いて月を見上げたあの夜を、私は今でも鮮明に思い出せる。
だがどうしてかな、もうすべてがどうでもいい。
2 エルヴィン・スミス
手を離れた鳥は戻らない。きっと翼は太陽に近づきすぎて燃えてしまったから。
君が、私に興味を失ってきたことにはずっと前から気づいていた。
だから君を責める気はない。
寂しがり屋で、誰かに甘えてしまうと言っていた君のことだ。
きっと私とは相性が良くなかったのだろうね。
私は君に甘えてしまったし、寄りかかって抱きしめて欲しいといつもねだっていた。それが君の負担になっていたのだろう。
真実を言えとは言えなかった。
「お前以外に相手を見つけたら」と言われれば、きっと私は今以上に深い闇に沈んでしまっていたのだろう。
だから、君を恨む気持ちはない。君を責める気持ちはない。
全ては、君の愛を守りきれなった私自身にあるのだから。