1 エルヴィン・スミス

そろそろ口にしてみようか

あれから時間も経ったことだし、吐き出してもいいだろう。

恋人とよりを戻したお前は少しだけ苦しそうで、それでいて幸せそうにも見えた。二番目でも構わないから傍にいたいと思う反面、自分の方が恋人よりも魅力的な存在であると認識されたいと思う自分はなんと愚かで醜い男なのだろうと自己嫌悪したものだ。

お前だからそう感じたのか、それともただの自己愛によるものなのかは定かじゃない。私にとって恋や愛というものはじっくりと時間をかけて育んでいくものなので、お前の傍にいたいと思い、体を繋げたいと思ったこと以上の事実は無かった。

傍にいたいと思う気持ちや体を重ねたいと思う気持ちは恋愛とは無関係ではないだろうが、明確な恋心とは言い切れない。

私の恋愛感情というものは得てして受動的であり、とても感度が悪いという自覚がある。自覚するまでには非常に時間がかかるうえ選り好みも激しい。我ながら面倒な性分だと自覚している。

あの時私が認識できたのは、お前の口から恋人とやり直す日々が幸せだと聞くのは辛いということと、私に対して告げられるであろう幸せになれという言葉を聞きたくないことだけだった。故に、返事を見ることを拒み、一方通行の別れを告げて逃げる道を選んだ。自分がお前にとって迷惑な存在であると思い込むことでしか離れる決意ができなかった。

それでもまだ、さ迷っていればお前に会えるのではないかと期待をしている自分がいる。お前はいまどうしているのだろうかと、知りたくなる。幸せな答えが返ってくるならやはり聞きたくはないのだがね。

吐けば吐くほどに己がいかに身勝手な男なのかと辟易するよ。………それでも、優しいお前は私を綺麗だと言うのだろうか。