1 ミカサ・アッカーマン

泡沫

初めて手を伸ばした人だった。

あの頃は、ごめんなさい。合わせてもらって、何を返せていたのだろう。私はとても、我が儘だった。
知っていました。私に対して、もう出来ることは何もないと呟いたあなたを。それがこの上なく………申し訳ない。
もう少し違う風に振る舞えていたら、なにか、変わったのだろうか。
何の非もなかったあなたに、残念な結末を迎えさせてしまったこと。今でも胸が、苦しくなる。

あなたの隣には、きっと私ではない私がいて、私の知らない世界がある。だけど私の中にも、私しか知らないあなたの世界が残っている。

ただの犬だった私に、家庭をくれると繰り返したあなたを、時々思い返します。それはとても嬉しくて、幸せな瞬間だった。
あなたの居る場所に、光が射しているといい。