1 ジャン・キルシュタイン

無題

やっと、少しだけ読めたぜ。
次の記念日を祝って、そこで、思い出に別離を。…告げられたら。
2 ジャン・キルシュタイン
まだお前と居たら、六ヶ月。
少しずつ朧気になってきた。このまま、完全に思い出になるんだろう。温もりも、言葉も、その笑顔も。全部。

お前が俺なんかを捜す事もないことくらい、わかってたよ。わかってたが、それを直接目の当たりに出来て…まぁ、良かった。
だから手紙は捨てられない。これは俺の弱さだ。もう二度と交わることのない道を、何度も振り向いてしまう、俺の弱さ。

七ヶ月は数えない。もうここには、用は無い。
いつか振り向かずに進めたらと思う。弱さなんか無くなればいい。

思い出は海に溶かして、そして、泡になるらしい。
3 ジャン・キルシュタイン
何だか懐かしい姿を見掛けた気がして、コイツを掘り起こすことにした。
俺から何度も送った手紙は、もしかしたらお前に届いていなかったのかもしれねぇな。
7月2日、8日、14日…それから、8月1日。確認ばかりする俺に、いよいよ愛想を尽かされちまったモンかと思ったよ。いや、強ち間違いでも無かったか。

お前がいた世界とやらが賑わいを見せては、元気にしてんのか、とか。考えたりもしてた。

まぁいいんだ、そんな事は。
あー…とにかく。俺は何度も、お前に声を掛けた、とだけ。
良い友人になれたらって思ってたよ。嘘偽りなく。
4 ジャン・キルシュタイン
11月8日。出会った日、ってヤツだ。
あれからそんなに経つ。し、それしか経ってない。

もしかしたら俺が遣いにやった鳩は全てお前に届いていて、なのにお前からの鳩が途中で違う所に行ったんじゃねぇかと疑ってその解決策を探ってもみたが…まぁ、違ったワケだ。端から俺の鳩が行き倒れていたらしい。そんな結果が解っただけ諦めもつくがな。
俺達が使っていた伝書鳩のシステム自体が消えて、それすら暫く経つ。いや、システムが消えた時点で諦めれば良かったんだ。機を逃すなんて俺らしくねぇ。なぁ、そうだろ。そう思うよな。

十ヶ月の節目に、俺もこの言葉を漸く紡げそうだ。
さようなら。ベルトルト。…多忙なお前へ。息災で在れよ。