1 ヒストリア・レイス

愛していたの。

捨てたつもりだった、貴方からの手紙を入れた木箱。たまたま見つけて、開けてみたの。手紙に並ぶ綺麗な字も、ついぞ見せる事も叶わなかった、あの天然石をあしらったブレスレットも。どれも懐かしくて、思わず笑いながら泣いてしまった。ねえ、貴方は私といて幸せだったかな。沢山傷付けて、都合の良い時にだけ連絡を寄越した私をいつも優しく受け入れてくれた人。本当はね、最後の最後まで貴方を愛していたの。それでも、弱い私は貴方から逃げ出した。…もう、一年と少し前のお話。

久しぶりに腕で揺れるそれは、私への戒め。貴方を傷付けてしまった事だけは絶対に忘れてはいけないから。

世界で一番幸せになって。私の大切な、少し臆病で寂しがりやな巨人。…許されるのであれば、これからも私の背を押して見守っていてね。