1 エレン・イェーガー

戻れない

貴方に出会い、オレは変わりました。
貴方からのああして欲しいこれは苦手だとの申告を幾つも聞き、萎えが沢山あるらしい貴方の何処に地雷があるかが読めずやがて常に顔色を窺うようになった。

最初は貴方にも楽しんで欲しいと、貴方を少しでも多く笑顔にしたいと…純粋にただそう思って、どんな我が儘もお願いも叶えてきた。それがいけなかったのか。…そうだろうな。
オレが初期の頃に何でも聞いて何でも叶えて甘やかしてしまった事で、味を占めた貴方にとってそれが当たり前になっちまったのかも知れない。

けど振り返ってみたら、貴方の我が儘は叶えてきたけど、オレの我が儘は何一つ叶ってねぇし貴方のほうから聞かれた事すら無いんだよな。それに今更気が付いた。
気付いちまったら一気に哀しくて虚しくなって、それまで無意識に見ない様にしていた本当は愛されてないんじゃねぇか、ただ甘やかしてくれて我が儘を叶えてくれる都合のいい存在なんじゃ、って言う疑問と恐れが堰を切ったように噴き出した。

すみません。この対等の文字のひと欠片すらもねぇ状況には、もう堪えられません。
愛したかった。それと同じくらい愛されたかった。貴方と二人で笑顔溢れる日々を築きたかった。
気付いてしまったあの日から、貴方から見えない場所で毎日のように涙を堪えてます。無様に、でも素直に泣ける場所も、撫でてくれる手の温もりさえオレにはない。楽しかった最初の頃の日々はすっかり遠い思い出で、もう手なんて届きもしねぇ。

もう少ししたら…今のこの雷雨や泥水みてぇな感情が落ち着いたら、真っ白い手紙を持ってお別れを言いに行きます。
次に出会う方にはして欲しい事だけを告げずに、相手の声やその人の心の痛みも思い耳を傾けてあげて下さい。そうすればきっと貴方にももっと穏やかで暖かい居場所が出来るから。
こんな痛い思いをするのはオレだけで充分だ。お世話に、なりました。