無題

体調も気持ちも、ようやく少し治まってきたから筆を取ろう。

縋るような思いで手紙を認めたが、お前の言う通りそれは届かずに戻ってきちまった。
それと同時に、お前にとって俺は本当に相応しくない相手だったと猛省した。
……離れないと言ったお前に、離れる選択肢を与えちまったから。

お前の事は恨んでいない。
別れるに至るまで、お前を待たせていたのは他でもない俺だ。
恨むとしたら、お前に対して何一つしてやれなかった俺自身にだ。
どうしてこんなにも自分が何も出来ないのか、それが非常に悔やまれる。

ただ一つだけ、恨み言…ではないが、お前の罪悪感を少しだけ煽らせてもらう。
…罪悪感を持ってもらえるほど、自分自身が良い恋仲だったかどうかは疑問だが。

白い救護室で目を覚まして、ようやく宿舎に戻ってきたときに、あの手紙が届いていたのは少しだけキツかった。
……いや少しじゃねぇ、大分か。その後に鳩が戻って来ちまった事もあるから。

しかしどちらにせよ、任務任務で多忙な日々が続いていた。救護室送りにならなかったとしても、きっとお前からあの手紙をもらっていただろう。


お前と話した時間は楽しかった。チーズケーキは最後まで食わせて貰えなかったが。
お前の心の深いところに触れて、少しでも気持ちの底を見せてくれたのが嬉しかった。
…俺に対して、喜怒哀楽の感情を揺らしてくれるのが愛しかった。幸せだった。

だから忘れろと言われたが、お前の事は忘れてやらねぇ。
連絡の取れないお前に対して唯一出来る俺の抵抗だ。ずっとお前の事を覚えている。
それが嫌なら直談判しに来い、住所は変えてない。

そんな抵抗も俺の事も、もう過去の事にしたいなら全て忘れて前に進んでくれ。
お前ともう一度会いたいと思う反面で、何もしてやれない俺とは離れて幸せになってほしいとも思っている。
…変な矛盾だ。


今まで悪かった。今までありがとう。
今まですまない。今もまだ愛している。

…夜更かしにも程がありますよ、アンタ何て時間迄起きてるんですか。

兎に角お久し振りです。…体調崩していたんですね、貴方の思惑通りオレの罪悪感が凄く煽られてますよ。…はは、本当ですって。あの時は唐突にすみませんでした。

大人しく待っていられない自分に嫌気が差したのと、同時に何で待てないのか不可解になって…分からなくて怖くなったんです。今迄はそんな事無かったのに。
…情けないですよね、自分の都合です。

オレと居て少しでも幸せだったって言葉が聞けて良かった。
貴方と同じですよ、オレもまだ好きです。…すみません。
会いたいな、と思うけどどの面下げて会いに行けばいいんだって話ですし…任務が忙しい貴方を支えてあげられないのも事実です。
貴方は悪くないのに、自己嫌悪して欲しくないのに。オレと居る事でそうさせてしまうのは嫌だ。
…だから離れた方がいいと思いました。

手紙を届かないようにしたのは一時的なものです、今は解錠しています。恨み言や直接罪悪感を煽りたいならまた送ってみて下さい。今度はきちんと受け取ります。
貴方の住所は他の友人の手紙諸共消してしまったのでオレから届ける事が出来ないんです。…気持ちを切り替えようとしたんですけど、それでも未だ胸の中がごちゃごちゃしてて。

オレも望む事はただ一つ、貴方が健やかに幸せで居てくれる事。いつも頑張っているんですから、幸せに過ごして欲しい。

頭が働かないんで支離滅裂ですが、それだけです。