1 エルヴィン・スミス

大切な翼へ

言葉という形の無い物は残酷だ。
形ある物は壊す事が出来る、だが言葉は胸に残り続ける。

離れる事を決めても必ず報告には行く。
何も言わずに消えたりはしない。

この言葉を私が未だに信じていると言えば、きっとお前は嗤うだろう。
あの言葉ほど嬉しかった事は無かった。
同時に安堵した事も無かった。

お前からの連絡が途絶えて十日以上。
きっと私の無意識での不用意な言動がお前を傷付け、その足を竦ませてしまったのだろう。
すまなかった。
優しく、とても温かで繊細な心を持ったお前に無言で背を向けさせてしまった。ほとほと私は愚かな人間だと思う。

鳩を飛ばす事も考えたが、お前が何も言わないのにこれ以上私からの直接の言葉は苦痛だろうから此処に記す。

お前と共に居られた約三カ月は本当に幸せだった。どれだけお前の存在と言葉に救われたか知れない。
心からの感謝を。

お前は本当に魅力的な人間だ。
幸せにしたいと願う者は数多居るだろう。
今度こそ本当に心を許し、安心出来る人間の傍に居られる事を祈っている。
どうか体に気を付けて。

過去形にはしない、出来そうにない。
愛している、リヴァイ。
2 リヴァイ
言い訳も説明も不用だ。
お前の前から何も言わずに消えた、それがお前にとって事実であり全てだろう。

すまない、すまない、…すまない。

俺の独り善がりでしかないが、お前の幸せを祈らせてくれ。
お前の隣は暖かかった、…ありがとう。
3 エルヴィン・スミス
息災で良かった。
それだけで、十分だ。


言葉をありがとう。きっと随分な勇気や決意が要っただろう。
唯一の大切な翼。
どうか幸せに。

もしも不安や寒さに苛まれる事があればこの身を喰らうといい。
お前のものだ。再び出逢ったあの時から、ずっと。