1 ライナー・ブラウン

無題

何度も醜く追い縋って、お前の中の俺はただのつまらん男に成り下がった事だろう。

それもそうだ。
今の俺の中には、お前が好きだと言ってくれた俺なんてもんは欠片も残っていない。
あるのはただ、胸の中央に巣食うがらんどうだけだ。


自分が分からなくなるような恋や愛なんてもんに、心を許すべきじゃなかった。
始めからこの結末が予見できただろうに、心地好い愛情の海に溺れて気付かぬ振りをした俺が悪い。

思慕、未練、慈愛、嫉妬、欲情、悲哀。ありったけの想いは全てここに埋めていく。……ただ、今夜だけは。今夜だけはまだ、この感情を抱いたまま眠らせてくれ。

もしもまた、お前が邂逅を許してくれたのなら。その時は俺は、ただの幼馴染みとしてお前の前に立とう。

……最後まで、恋人にはなれなかったお前へ。
愛してる。もったいぶらずに、擦り切れる程にこの言葉を何度も言えば良かったな。そんな後悔と共に感謝を込めて、つまらん男からみっともねえ最後のラブレターを、ここに。