1 ミカサ・アッカーマン

薄れていく、あなたに。

今なら言える、あなたが大好きだと。平凡な日常を流されるように過ごしていた私にとって、あなたは癒しの存在であり、疲れきった羽を休められる唯一の場所だった。
寂しさから、私はあなたに伝える言葉を減らしていった。一通、また一通。そうしていくうちに鳩を飛ばすのが怖くなってしまったの。

今はもう、あなたと一体どんな会話をしたのかは思い出す事は出来ない。髪を乾かしてくれた安心感のある手や、向けられた優しい眼差し、心地良い温もりも全てが次第に薄れていく。でも、分かった事もある。たった一月余りで、あなたは私の心をこんなにも埋めてくれていた事だけは、はっきりと。

私からは別れの言葉は言わない、否、言いたくない。本当はずっとあなたの傍に居たい。恋人になれなくても良い、友人のままで構わない。……あなたに会いたい。あの日、あの子の生まれた日にあなたがくれたたった一言はあの子を喜ばせ、悲しませた。もう二度と会えない、そう言われた気がして…ぐっと胸が苦しくなった。

合鍵とネックレスは此処に。薄れていくあなたの笑った顔が、私にとっては何よりの宝物だった。

私はあの子の代理。