1 エレン・イェーガー

埋まらない空席。

くっ…出逢いが全くねえってどういう事だ…!間違っても数撃ちなんて失礼は絶対にしたくねぇし、その人、そいつだから望むんだ。数が欲しい訳じゃねえ。
けどスタート地点にすら立てないのは…正直辛い。

なんて焦りや不安は確かにあるが、オレの何が悪いのか、意気がるばかりで訓練でさえ躓いてたあの頃みたいな無様になってねぇか、平和だった頃と何が変わっちまったのかを数年振りに根本から見直すいい機会なのかも知れない。
きっと壁外の実戦は勿論壁内での訓練実績も浅すぎるオレだから、経験豊富な周りの兵士から見たら稚拙に映ったんだろう。違った地区で培った経験に胡座を掻かず、まずはそれを恥じなきゃな。

誰かと出逢える事の稀少さを改めて思い知れたし、悪くはない日々だったと誇ろう。
そしていつか出逢えたその人には、精一杯の思いやりを以て接しよう。

その日まで訓練を積み、アルミンに借りた書物に何度も目を通しながら忍び耐えるだけ。難しい事じゃねえ。

大丈夫だ、雨雲はいつか晴れ間を刻み、その後には青空が広がるんだから。

……なんて格好つけたって、隣を見る度そこが永く続く空席だと…やっぱりちょっと切なくなるな。
2 リヴァイ
横槍を入れてすまない、が、どうにも捨て置けなかったものでな。
上官としてでは無く、同じ人間として共感と励ましを綴らせて欲しい。

お前みたいに真っ直ぐで誠意のある奴なら、必ず良い巡り合わせが有る。
俺ならてめえみたいな野郎は気に入る。
スタート地点に立ててないなんて事はねえよ、出逢いなんてのは本当に何処に有るか解らんものだ。人間同士、何処からどう発展するかなんて解りゃしねえからな。
お前を待ってる奴が必ず居る。そいつが伸ばし続けている手に気づく日が突然来る筈だ。その時は迷わず手を取ってやれ。そして後悔の無いよう愛せ。

俺はお前の力を信じている。大丈夫だ。
まあ、俺も似たような立場だからな……お前が記した言葉には共感しちまった、そして力を貰った。だから応援させろ。

互いに空席が埋まり幸福だと感じる日が来る事を願って。
3 エレン=イェーガー
…え、あの…これ、オレの願望が見せた夢や幻じゃないですよね?
と、言いたいのはそうじゃなくて。
ありがとうございます、兵長!
壁の落書きみたいな呟きに、まさかそんなにも暖かな言葉を残して頂けるとは思っていませんでした。実感がまだよく沸かないんですが、今本当に、本当に嬉しい。それだけは確かです。巨人を駆逐する為に捧げた筈の左胸の内がとても暖かくて、何というか霧が明けて道が見えたみたいな。そんな清々しい気持ちで一杯です。

そして道を見失ってたオレに先を指し示してくれたのは紛れもなくリヴァイ兵長、あなたの存在と言葉です。感謝を告げる言葉は一言に収まってしまうけれど、感謝を胸に今一度叫ばせて下さい。
ありがとうございます!
オレはきっとこの先何度もあなたを思い出すんだろうな。初めて出逢う誰かと縁を繋いだ時、誰かが誰かに向けた優しい気持ちを綴ってんのを見掛けた時、辛い時だって。きっと兵長から頂いた言葉を思い出す度に活力と笑顔を貰うんだと思います。
それぐらいあなたの言葉には沁みる力がある。少なくともここに一人、兵長の存在で救われたヤツがいますから。

そうだ、巡り合わせと言うならこれも一つの巡り合わせですね。
今回交わしたもの、得たものは見失わない様に心の中に大切に刻んでおきます。
そして焦らず巡り合わせを信じて自分のペースで頑張ろうと思います。

オレも、兵長がまだ見ぬ誰かと肩を並べ、幸福と安寧に身を置く日が訪れるよう祈ってます。

精一杯の感謝とエールを込めて。