1 リヴァイ

何時の日か書いた記事は誰の手をも掴む事なく風に流れ消えた。
それから、書き方なんぞ変えたつもりもなく表に立つ面だけを変え内容に相違ない貼り紙をしたら、両の手指がなきゃ数えられねぇ数の手紙が舞い込んだ。

書簡を記した時は確かに期待もあった。事実喜ばしい事の筈が、胸には感謝以上に苦い思いが滲んで自分が分からなくなっちまった。
求められてんのは俺の意志や綴った願いじゃねぇ、ただこの面、外見だけ。そう気付いたあの日から、女々しい事にこの面とあの日玉砕した面ではどうしても誰かと語る事が出来ずにいる。

世の中にゃ需要と供給がある。それの比率が平等でない事の方が多いのも理解はしてる。タイミングもそうだ、必ずしも同一じゃねえ。
ただそれが分かった上で、あの瞬間は柄にもなく苦しかった痛かった、それだけだ。冷静になってからは、受け取った手紙に目を通しながらも返事を綴れず全てを引き出しに仕舞っちまった不甲斐なさを恥じるばかり。時と想いを届けて貰いながらすまねぇ事をしたと罪悪が過ぎて仕方ねぇ。
身勝手だが、俺と同じ虚無に見舞われてねえのを願うばかりだ。

それ以来脚が遠退いていたこの世界だが、何時かまた誰かの手を掴める日が、俺として誰かを求めたいと思える日が来んのか。
よく頭と身体、心と頭が別モンだと言うが、俺の場合は魂と心を分断されてる気がしてならねぇ。何が正解で何が違うのか、それまでこの世界で笑えていた様々なモンがすっぽり抜け落ちちまったようだ。
自分でなくても代わりは沢山いる、それをあの日程痛感した日はなかった。
その先にあるのは繁栄と無の二択だ。

あの日文をくれた奴らが今は誰かに寄り添い笑顔で過ごしてるのを祈る。すまなかった。