身代り(R20)

嘗て愛した男を動物に例えるなら、獅子。
撓やかな肉体と、鋭い歯牙。隠然さを秘めて煌く眼光に、獰猛さを覆い隠す物腰。
人間で居て本能剥き出しの獣みてえな、男。
何時か愛した男の身代りに、俺はお前に触れたい。お前が彼奴じゃねえ事は理解してる。お前はお前の儘で良い。唯、今だけ。過去の男の幻を求めて追い縋る、気の狂れた男の戯言に付き合っちゃくんねえか。

お前の姿は、野郎なら一先ず問わねえ。女体や同じ顔でも構わねえし、属性も如何だって良い。但し、若しもお前があの男と同じ姿で現れたなら、それが例え女の姿をしていても冷静で居られる自信は無い、とだけ伝えておく。
仮宿で、俺の部屋へ訪れるロルを送れ。それだけで良い。この際、挨拶等は無くても構わん。所詮は一晩の戯れだ。
俺の他には、新兵が控えてる。好きな奴に声を掛けると良い。

未だ幻想に縋る俺を、嘲笑っても良い。
寧ろ、引き戻してくれる手を待ってんのかも知んねえな、俺は。全く、…――笑えねえ冗談だ。

長々と付き合わせて悪かったな。
お前の来訪を待つ。
久し振りに上げさせて貰う。
幾らか時間が経っては居るが、愛した男を忘れる事は出来ねえらしい。忘れられない今を受け入れるのも困難だ。
概要は上と変わってない。今日一日、お前の力を貸してくれ。

――…出来れば、これで最後にしたい。