3秒と5時間

見覚えがあるのはお前だけだろう、エルヴィン。

他に鍵は不要だと思うが
・ハーブティ
・徹夜

…徹夜は本当に勘弁してくれ。

あの後、机に積まれていた書類と格闘していた。…いや、これからする。
今までひたすらにお前のサインを書き写していた。恐らくお前以外代筆だと気付く人間はいないだろう自信がある。
これでお前が休めるのなら安いものだ。

今日は長時間付き合って貰って感謝する。お前の言葉は芯があってとても綺麗だった。会話も、本当に楽しかった。
直接礼が言えなかったのだけが心残りでな、ここで伝わる事を祈っている。


……あんな容易に受け流されるのであれば、理性など削ぎ倒しておけば良かったか。

お前が私宛に伝言を残すとは思わず、返事をするか迷ったのだが……とりあえず必要ないと思うが、鍵を。

鍵
甘い紅茶
止まり木のお前

本当に書類を片付けてくれたのか。
おかげで久しぶりにゆっくり夜にことが出来たよ。
お前は私に甘すぎやしないか？


私のこそ長時間相手をしてくれてありがとう。
至らぬ私でもお前が楽しい時間を過ごせたようで良かったよ。
色々と恥ずかしくて逃げてしまったが、逆に気を遣わせてしまったな。

気を悪くしていなければ、また、紅茶を淹れてくれ。

お前も迷う事があるのだな。
手間を掛けさせた事を謝罪しよう、迷わせてしまった事も。
だが反応があって嬉しかった、感謝するエルヴィン。

お前を甘やかすのは俺の特権だと思っている。言っただろう、過保護上等と。
他の人間にも多少は分けても良いが、この位置を譲るつもりは無い。

……恥ずかしかったのか。
それは惜しい事をしたな、無理にでも顔を見ておけばよかった。

お前が望むのなら紅茶でも珈琲でも。
ちゃんと休めよ。

状況がいつだって迷いを許してくれないだけで、
私はいつだって迷って足掻いて少しでも良い結果を残そうとしているだけだよ。
私の反応一つで喜んでくれるなど、安いんじゃないのか。

またお前は……そうやって私が恥ずかしくなる事ばかり言う。
私にだって人並みの羞恥心はあるのだからね。
人が恥ずかしがってる顔を覗くのもやめなさい。

あの日はとても穏やかで楽しかった。
これは……また、お茶をいれてくれる日を聞いてもいいのだろうか？

……私の勘違いだと、また逃げ出したくなるが、
また穏やかな時間を過ごしたいと思っただけで。
あまり言葉を重ねてもお前の迷惑になるな。
世迷い事……と気にしないでくれ。

俺は安いぞ、大安売りだ。恐らくお前に対してはな。

羞恥心があるならちゃんと見せてくれ。
二人の時まで団長の顔で居る必要も無いだろう。
お前の赤くなった耳はとても貴重だった。

俺の淹れる物でいいのなら。
日付が変わる頃までの短時間でも構わなければ、今週は21日か22日の21時以降。
来週の話になってしまうが、28日であればお前の指定する時刻から同じく0時頃まで自由に動けるだろう。
それ以降はまた応相談、と言ったところか。

もし忙しいお前のスケジュールと重なる空白があれば、飲み物のリクエストと併せて教えてくれると嬉しい。

勘違いにも世迷い事にもさせん。
俺もお前とまた穏やかな時間を過ごしたい。

お前がそうやって私をからかう言葉を書くから、
返事に悩んでこんな時間じゃないか。
いつからそんなに私で遊ぶようになったんだ、ミケ。

申し訳ないが平日は21時に仕事が終わるという確証がなくてな。
あまり長い時間を拘束をするのは申し訳ないと思いつつ、
28日であればちょうど内地からの帰りで昼過ぎからなら空きそうだ。

28日の15時に一緒におやつでもどうだ。
23時くらいまでしか起きていられないが……
内地から土産の一つでも買ってこよう。
だから、お前は紅茶を淹れてくれるかい？

そうか、それは悪い事をしたな。
俺は俺ごときの言葉に真剣に悩んでいるお前を想像していたらこんな時間だ。
…そうむくれるな。
普段皮肉と厭味の質量だけは身分に見合った上層部を悠然と論破しているエルヴィン・スミスが、と思うとどうにも可笑しくてつい、だ。

28日だな、了解した。
俺もお前とはゆっくりと話をしたかったから有難い。
確かに15時にお前の部屋に向かおう。

とっておきの紅茶を用意しておく。
土産は無理をしなくていいぞ。
お前が俺の前に顔を見せてくれるだけで十分な土産だ。

ただいま、ミケ。

土産にりんごのドライフルーツを手に入れたよ。
お前の口に合うといいのだがね。
あまりからかってくれるなよ。

15時には私室『free214』にいるようにしておく。