篠木堂の、若隠居殿。

不意に引き寄せられたのなら、きっと貴方。

文箱の埃を払いて、懐かしい文字に触れていました。季節は何度も移ろえど、彼の日覚えた感情は今も猶、褪せぬ儘。秋の夜長を持て余して御出でなら、昔話でも如何かしら。思い出の、彼の場所で。


・茶斑の仔猫
・眉間の皺と千里眼
・「笑って頂戴」「笑ってくれ」

思えば、可笑しな話ね。互いに口癖の様に言い合って、けれど、互いに唯の一度も笑った事がないのだから。

何時ぞやに背中を押した七夕の夜は過ぎ去って、途切れた縁、結び治すはそう簡単ではないでしょう。だから、全てはわたしの運次第。再び言葉を交わせる日々を、そして何より、貴方の無事と息災を願って。