廣海さんへ

もう随分と前の事になりますね。私は諦めてしまっていたし、続いた道も歩けずにいました。
覚えていてくれますか?
初めて会ったのは、性別が入れ替わってしまった時でしたね。懐かしいです。

私、貴方の事が、好きでした。惹かれていました。…貴方は気づいていたかもしれませんね。鋭い方でしたから。

貴方の名前すら忘れそうになった今、こうして手紙を書きました。我儘かもしれないけれど、貴方を忘れたくありません。
もし、気づいて下さったなら、返事を下さい。待っています。
藤枝
2 吉瀬
半露出狂女になってた俺に、上着を掛けてくれた藤枝のこと忘れるワケ無いっしょ。
覚えてる、うん。全部、とは言えないけど。時間開き過ぎて自分の事さえ曖昧、大丈夫かこれ。
まさかここで俺の名前見付けるなんて思ってもなくて、柄にも無く動揺してマス。

えーっと、取り敢えず、久し振り。元気にしてた?

気持ち、伝えてくれてありがとな。
気付いてたか気付いてなかったかはこの際海にでも放り投げるとして、素直に嬉しい。マジでね。

でも、ありがとうしか残せない。ごめん、とかはやめとく。ありがとう。
んー…時間を理由にすんなって思うかもしんねーけど、自分の事、学園の事を忘れるには十分な時間が過ぎてて。
まあ、たまに皆元気にしてんのかって思うこともよくあったけど。何処かで上手くやってんのかなって思えば自然とほっこりする訳で。それだけでいいかなって思ってんだよね。今も変わらず。

忘れたくないって我儘に、じゃあ忘れんなって言ってやりたいとこだけど。
早いトコ俺みたいなちゃらんぽらんなんぞ良い思い出にしてもっと素敵な縁を掴んで下さい。
そんで今以上に、もっともっと可愛くなって、もっと綺麗になって、いい女になって。後悔させてよ、俺の事。


俺と出会ってくれて、好きになってくれてありがとう。
この先、藤枝の両手じゃ足りないくらいの幸せが降り注ぎますように。