もう5年も前の…大切な旦那様

昨日の夜にね、貴方の声にとても良く似た声を聞いたの。
あの言葉が貴方の言葉なら良いなあって思って、
…なにも行動を起こさないまま諦めたくなかった。
冒険者さん。

ずっと戻るつもりでよく執務室を覗いていたの。
でもね、なんて言って戻っていいか、わからなかった。
それに、戻っても前のようにちゃんと働けないだろうなってわかっていたから、お荷物になってしまいそう、とか思ってもいたりして。

それでも、本当に、ごめんなさい。
ずっとずっとあなたが大好きでした。
ふとした瞬間に、どうしてるかなあって頭を過りました。
1日だって忘れたことはありませんでした。
………セナ、愛しています。いまも。

カルツの海岸で酔ったあなたを助けたら人魚姫に間違われたりだとか
ふたりで悪魔帝国でちょっぴり怖い思いもしたりだとか
雅竜の露天風呂にふたりで入ったりだとか
小さくなっていたわたしとおなじくらいの大きさの白いふわふわのくまちゃん、フレーズくん。
アルカの特産の美味しい紅茶を、また、あなたと飲みたい。

昨夜見たあの影はあなたではないのかもしれない。
あなたに良く似た別の誰かかもしれないけれど、
一縷の望みをつないでみたい。

…あの姿があなたではなかったとしても、セナとまた幸せな日々を紡いでいきたい、です…
もしわたしのことを嫌いになったのではないなら、
この手紙を見つけたら連絡ください。
ずっと…あなたがきっとわたしを待っていてくれた年月よりも長くでも、待っています。