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1 創作男
祖父のリリー
俺が産まれる前からお爺さんだった祖父はあらゆる事業を父に引き継いだ後、海の見える小さな町の土地を買って屋敷を建てた。そこが祖父の終の棲家となった。

紫陽花の季節だった。初めて祖父の屋敷を訪れたのは俺が十歳の時だ。朝から続く雨が庭の紫陽花を濡らしていた。紫陽花は紫色だけだと思っていたが、祖父の庭を飾る紫陽花は一様に白く、空は曇天だと言うのに花々は雨垂れを受けて煌めくようだった。
両親に連れられて祖父に挨拶した後は、手持ち無沙汰に邸内を散策するばかりだった俺に声をかけてきたのは祖父本人だった。上等の着物に身を包み老いてなお凛とそこに立つ祖父の姿勢は美しく、まだひと花もふた花も咲かせてしまえそうな祖父の、熱く大きな手に引かれて屋敷の奥へ奥へと通された。

「いいものを見せてあげよう」

そう耳打ちされた扉の前。祖父の指紋と声紋と、それから幾つかのパスコードを用いて漸く開かれた扉の向こうに、見た事もない程の美しい、真っ白な花が咲いていた。花はゆっくりとまばたきをして、大きな瞳で、祖父と、それから初めて見る俺を不思議そうに見つめた後、本当に花が綻ぶみたいに笑った。

私のリリーだ、隣の祖父の呟きはもはや俺の耳には入らなかった。


上記は俺とお前の幼少期の話となる。
お前は祖父の唯一の宝物、至高の花として育てられ、ただ祖父に愛でられる為だけに生きていた。お前の存在はごく限られた人間にしか知らされておらず、実の息子である俺の父すら祖父が息を引き取るまで知らなかったようだ。
便宜上、祖父の隠し子とされたお前の処遇に父は随分と困ったようだったが、なんとか遠縁の親戚筋に養子縁組を取り付けることが出来た。祖父最大のスキャンダルはこうして粛々と「処理」されたが、俺の胸に芽吹いたものは今もなお鮮やかなままだ。

当時の俺は何度も祖父の屋敷に遊びに行った。もちろん、お前に逢うために。祖父もそれを承知で俺を迎え入れてくれたし、行けばすぐに二人きりにしてくれた。今思えば、愛しい花の体のいい遊び相手として扱われていたのだろう。だがお前と過ごした時間は、あれから十年以上経った今も鮮明に思い出せる。
二人でたくさん話をした。お前は外に出た事がないかわりに部屋中の本を読み込んでいたから、俺よりも遥かに博識だった。植物や動物、海の生き物、世界の成り立ち、宇宙や神話について、分野を問わず楽しげに語るお前の横顔をまだ憶えている。
しかし別れは唐突に訪れた。かねてより病を患っていた祖父の容態が悪化したのをきっかけに、屋敷への訪問を禁じられてしまい、それからはとても、遊びに行けるような雰囲気でもなくなってしまった。……そうして祖父が亡くなり、当時まだ子供だった俺には到底預かり知らぬところであらゆる手続きや処理が公的にも秘密裏にも行われ、全てが綺麗さっぱり片付いた頃には、俺はもうお前と逢えなくなってしまった。


やり取りは、そんなお前と再会するところから始めたいと思う。再び出会えたのは運命や偶然などではない。俺はどうしてももう一度お前に逢いたかった。また昔みたいにいろんな話をして笑い合いたかった。必死で何年も探し続け、その努力が実ったに過ぎない。
やっと見つけたお前に今日、逢いに行く。


貴C側の詳細設定については自由に作っていただいて構わない。生い立ちや祖父の屋敷での過ごし方、祖父との関係性について、また、祖父が亡くなった後の境遇やこれまでどのように生きてきたか等も好きなように設定して貰いたい。俺の事を覚えていても覚えていなくてもいいし、半ば監禁されていたような屋敷での記憶ごと抜け落ちていてもいい。自賛でも悲愴でもそちらの人物像にふさわしい設定付けを歓迎する。もしもこちら側との関連が強くひとりでは決めかねる要素があれば遠慮なく相談して欲しい。
また、こちらへの要望があれば併せて教えてもらえると有難い。外見についても好みのものがあれば可能な限り応じよう。

そちらの設定を元に出逢いの場面となる接触を考えたいと思う。
先ずはお前のことを教えて欲しい。俺はまだなにも知らないから。

・プロフィール
・希望媒体
・萌萎
・大体の描写数

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