団長は、縫い包みが恋人?(R20)

…鳴呼、藪から棒に何を言い出すかと思えば此れ又蜚語に誑かされて居るようだな。根も葉も無い噂に思いを馳せ、駆け回る暇が有るのなら其の逞しい意志を任務遂行に活かして欲しいものだ。ーー今後の君の活躍を、期待しておこう。


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…只今、私の可愛いエリィ。鳴呼、済まない。輓近如何にも私の意企通りに物事が進まなくてね、任務も滞るばかりだ。僚属の巨人化に、同胞の負傷。四方八方から寄せられる指弾糾弾…彼の場にはきっと私の気の休まる処何て無いのだろうね。私の拠り所は、お前だけだ。全てを放棄して、お前と共に過ごす穏やかな時間を夢見る事位は赦されるだろうと日々想いを連ねては叶わぬ夢に肩を落とすしか出来ない私を赦しておくれ、エリィ。…何?お前も私と同じ事を考えている、と?ふふ、本当にお前は素直で可愛いね。私もお前を愛しているよ、エリィ…(縫い包みを胸に抱き留めぎゅむむむッ)

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と、冒頭からの見苦しい茶番劇には謝罪を。然し、だ。淑女諸君、青少年諸君、何処ぞの人類最強殿が持っていても何の御咎めも無い物を私が手に取り愛でるというだけで冷ややかなる視線を浴びせられる世の不条理には悲憤慷慨するばかりだよ。心緒や風評に流され、時には仲間を。そして、己さえも偽り、身を翻しては多辯な振りをして平生を重ねる人間等よりもよっぽどと此の子達の方が愛くるしい。見返りも無ければ、裏切りも無い。不変的な関係性。其の関係の心地好さに慣れ親しんでしまえばもう、後戻り等は出来ない。…が、ふと、本当に此の侭で良いのかとエリィに問い掛けてみたのがつい先日の事。怪奇な事に誰も居る筈の無い自室にて反響する甘美なる声は恐らくと、私の可愛いエリィのものだと直ぐに判断が付いた。そして、其の甘やかな糸の紡ぎを今でも忘れはしない。そう、「好い加減、現実見ろよ。オッサン。」と。

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