1 無名さん

コード

ずっとこんなん
あっはは、ホントならそれこそ俺の出番じゃない?(このmissionが己ひとりに課せられたものならば、きっと早々に諦め学園へと逃げ帰っていただろう。けれど今、古安の隣には彼がいる。大丈夫だ。どうにかなる。そんな思考の下、ぽつぽつと言葉を交わし軽口を叩く中で、彼が鍵穴に鍵を差し込んだことによる金属同士が擦れて起こる微かな音に続き、不気味なまでに静閑な校内の廊下に響く鍵の開く軽い音が、秋始めの渇いた空気に溶けて消えていった。扉を静かに見据え、投げられた言葉に小さく頷く。そのまま彼の手が眼前の扉を開け放てば、僅か、身構えるも先に広がる景色に何ら異変はないように見て取れ。眉は情けなく傾き、苦笑を携え図書室へと歩を進めようか。こつ、こつ、こつ、こつ。古安の背丈より少しばかり高い棚があちらこちらに立ち並ぶ室内にて、鼓膜に届くのはふたりの足音だけであり、やはり気味が悪い。しかし同時に沸き上がる高揚感も確かなもので、陳列する棚と棚との隙間などに視線を這わせつつ、こんな状況でなければそれこそ大喜びで校内を探索することも出来たろうにと、ある程度行動が制限された中での自由の利かない不服さも、古安の表情や声のトーンから伺えるはずで。分かり易く唇を尖らせ彼を振り返っては、首を傾げて同意を求めたく。しかし恐らく彼は己みたく戯けた思考回路は有していないだろうに、果たして同意が得られるかは分からないけれど。)それにしてもさぁ、せっかくリアル肝試しが出来る絶好の機会だってのにそんな気力も時間もないのが残念だよねぇ。