23 無名さん
(窓から見える空には鉛色の雲が隙間無く広がり朝から絶間無く続く大地を打ち鳴らす雨音は屋内にまで届いて、日中は生徒達が賑やかに過ごす教室も彼等が部活動や委員会活動に出払ってしまえば静寂が広がり、雨の弾ける音のみが耳心地好く響いて。太陽が姿を隠している薄暗さと子守歌の様に穏やかな雨音は惰眠を貪るには最高の環境を作り、それに誘われるが如く下がり始めた目蓋に読書は中断を余儀なくし。自らの席に突っ伏せば微睡みに身を委ねるのは早く、机上に置きっ放した私物の文庫本が腕に押し遣られ落下しそうな事にも気付かず。/↑)

(図書委員会の仕事である書庫整理が終わり、しとしとと降る雨になんとなく帰る気を削がれたようで宿題でもしようか、と己の教室に向かえば荷物を持ったままガラリとドアを開ければ自分の席の斜め前の生徒が机に突っ伏している。とりあえず自分の席に荷物をそっと置いてから覗き込むようにして相手を見てぼそりと呟き/↑)平良くんおねむですなー。

(確実に夢の世界に片足を突っ込んで居たものの完全な眠りに落ちていた訳では無く、近くで響いた音は耳から脳へと伝わり緩やかに覚醒を始め、手首付近に額を付けて伏せ置いていた頭を揺らし顔を横に向けると小さく唸り。微かに震わせた目蓋を開き寝起きの瞳に映った相手をぼんやりと眺めるも無闇に動かした手が文庫本に当たり落下、教室内には本の背が床に叩き付けられる音が響けば身を起こし視線を足元に)…よね……あ…ごめん、本。