36 無名さん
あっ、あっ、あわわわはわわわわわ! ひえええ〜〜っ……! た、丞くん、えぇっと〜……ちょっとほっぺたがポカポカしちゃうなぁわた、(し。音になりきらなかった分は、ごきゅんと喉を鳴らして嚥下した。よく噛まないで飲み込んでしまった塊みたいで苦しくなった。けれど、それどころじゃない。――どうしてって、今、聞き間違いでなければ、丞くんは美味をプロムに誘った。まん丸いお皿型に瞠ったチョコレート色が、目下のグラサージュ・ピスターシュへまともに取り合うよりも先に、レモンみたいな歓声が周囲に弾ける。しかし、「………………ごっ」)〜〜ごっ、ご、ご、……ごめんなさいっっ!!(数人分のキャー!をびゅっと掻き消してしまうほど、前田美味史上随一の大声だった。顔だってもう、まっ赤っ赤だ。花蘭学院きってのプレイボーイからの誘いを一息でふっ飛ばし、勢いよく頭を下げる。あんまり高温で焼成するとスポンジケーキは基本的に爆発しますのでお気を付けください!)