38 おまいらならどう後入りする?
(部活が顧問の都合から休みになった本日、図書室で課題を終わらせてきたとはいえまだ太陽が隠れきるには時間があるはずの夕刻。羽織った黒のカーディガンの袖口を引き伸ばして肌寒さから逃げるように指先を隠しながら見上げた空は分厚い雲が夕陽をすっぽり覆っている所為で薄暗く、降り頻る雨は空気にまでたっぷりと湿り気を含ませていた。朝はあんなに気持ちよく晴れていたのに、今は何がそんなに気に食わないのか空は泣き止む気配もなく、何処にそんな大量の水分を有していたのかと問いたくなる程に絶え間なく落ちてくる雨をぼんやり目で追いつつ考えるのは―どうやって帰ろう、そればかり。そういえば今朝に限って天気予報を確認しなかったなと傘を持たぬ我が身を憂いてみても文字通り後の祭り。友人たちももう帰ってしまっているかまだ部活に勤しんでいるかのどちらかだろう、かといって走って帰るのもこの気温では踏ん切りがつかない。ならやむのを待つしかない、望みは薄そうだと眉間に皺を寄せ、暇を紛らわすように昇降口の屋根からはみ出してみた両の手で作った器に雨粒を溜めて遊びながら溜息をひとつ)ああ、くそ。どうせ降るなら朝からにしろよ…。