4 無名さん
〜 ふじももを褒め殺したくて、冬 〜

時はとある某休日の午後、何の偶然かショッピングモールで買い物兼新譜のチェック中にばったりとふじももを見掛けた。だが私服姿にも隙がなく、もこもこボアコートを身に付けたピンクツインテールのその風貌は遠くからでも目を惹くのは自然なことだろう。
話しかけてみれば僕と同じく買い物中だという、積もる話もあるが寒空(建物内だけども)の下で立ち話もあれなので、近くのス/タ/バに立ち寄る流れに。そういえばス/タ/バでコーヒーを頼んだこと無いらしいし、僕はふじもも愛飲?の紅茶(ホットティー)を頼むことで互いのオススメを交換し合うのだった。席の確保はふじももに任せ、注文に向かう。

「グランデのチャイ、トールのス/ノー/メイ/プル/トフ/ィーラ/テのお客様ー!」
「ご苦労、謎のカフェ店員。──持って来たぞ」
「ありがとう、いい香りね。それとごめんなさい…窓際席しか空いてなくて。ここで良かったかしら」
「この混雑時に座れるだけ上出来だ。にしても、コートはどうした?」
「暖房効いてるから脱いだの。…ちょ、ちょっと。そんなにじっと見ないでくれる?」
そう言ってコートで太股辺りを隠すのだ、ここに何かありますよと教えんばかりに。好奇心と何かに負けセクハラ御用を覚悟し見てみると、そこにあったのは網目。ワンピースとニーハイブーツの隙間、所謂絶対領域から僕と話してた網タイツが覗いていたのだ。
「た、たまたまよ!今日はどちらかというと暖かかったし…試し履きしただけなんですからね!」
視線に気付いたのか慌てて言い分を述べるふじもも。膝かけっぽくコートを乗せて完全ガードするも時既に遅し、僕のおちゃめな悪戯心にはもう火が付いているのだ。

「ククク…何を隠す必要がある?普段の清楚なコーディネートとまた違って刺激的だ」
「刺激的ってそんな…!」
「褒めてるつもりなんだが、伝わらなかったか?ならば言葉を変えよう…よく似合ってる。僕が居てよかったな、1人じゃどんなナンパ男に声を掛けられたか」
この時点で仄かに顔を赤くしてたら都合いいんだが僕は止まらない。不用意に髪に触れると嫌がられるのは知ってるので、すぐ傍の空間へ添えるくらいに手を伸ばす。
「そういえば先程それをいい香りと言ってたが、隣からもっと甘い香りがするのでよく分からないな。出所に心当たりは?」
「それは…今日は、香水を…」
居たたまれなくなってきたのかふじももの体は縮こまっている。それはそうだろう、下手に騒げば周りの客や店員から注目を集めるのは必至。しかし──
「で…でも貴方、さっきから格好を褒めてばかりね。そんな軽い言葉で乗せられるわたくしじゃないわよ!」
どや!(=‘x‘´=)と言い返された。なるほど舌先三寸と警戒したか、レディを目指すだけはある。…こちらも肝を据えるべき時のようだ。
「無意識だろうが誘導尋問とは中々やるなふじもも。──なんだかんだで僕の意見も参考にしてくれている、そんないじらしさは可愛く思えるぞ」

…最後の台詞だけはチャイを飲みながらになりそうだがな。可愛いなんて褒め言葉正しく使うのはいつぶりだろう…いつ僕自身がナンパ男扱いされ平手を喰らっても可笑しくない内容になってきたのでここまでだ。最後まで付き合わせたんだし、友情出演共々礼を言う。しかし苦情は軽めに頼むぞ?鞭ならまだしも飴の加減は模索中だからな。