1 マルコ・ボット

三ヶ月を経て四ヶ月。

まずは謝罪をひとつ。
怒らないで聞いてほしいんだけど、一緒にいる時にはなかなか見せてくれないお前の心根を覗きたくて日付が変わっても出方を窺っていた。
自分でもずるいとは思ったけど、お前がこの場所に言葉を残すときはいつもより饒舌で素直だから…いいよな、好きなものを求めたって。

三ヶ月、ありがとう。
四ヶ月目もよろしく。

どうしても自分に自信が持てない僕を、時には″僕″の姿で励ましながら共に今日まで歩んでくれたことに感謝を。

僕のコイビトへ、まさか僕達の関係をそんな風に思ってくれていたなんて思わなかった。…嬉しいよ。

さらに追伸。
文字数制限に引っ掛かっちゃっただけだから、ここを見ても返事は要らない。
…恥ずかしいしね。
28 削除済
29 ジャン・キルシュタイン
忙しい盛りの俺の優等生へ。

その世迷い言の様な譫言の様な台詞はまさか暑さにやられた訳じゃねぇよな。もしかして夏風邪か?
…何つって、冗談だ。お前の瞳に俺がそう映るなら、間違いなくこの十四ヶ月の間に何らかの変化があったんだろうな。俺がお前と居たいが為に、お前が俺と居たいが為に、それぞれが影響し合って少しずつ変化して、今の形になった。俺はそう思うぜ。

それでもたまに不安になったりする。こんなに呆れる位陶酔して、いつか本当にお前に呆れられちまったらどうしようか、って。だからお前から連絡が来ると嬉しい反面少し緊張するんだ。そんでドキドキしながら手紙を開いて、薄目で文字をなぞって、漸く安心する。それから別の意味でまたドキドキし始めて…その繰り返し。
だからと言ってお前の気持ちを疑ってる訳じゃねぇ。それは違う。…なんだろうな、多分幸せ過ぎてびっくりしてんだ。あんまり幸せがでけぇから、咀嚼すんのに時間が掛かっちまってるような。

…そうだ、手紙。リクエストにお応えして此処に書き写そうかとも思ったんだが、照れ臭くなっちまったから後でこっそり枕元に置いとく。お察し通り体のことにも触れてる。あの時は心配掛けて悪かった。

なんだ、コンプレックスだったのか?俺はてっきりキスして欲しいって目印かと思ってたぜ。…マジになるなよ、でもそん位好きだ。お前を形作る色も体も心も。毒を飲んだつもりはねぇけど、蜜を吸った気はしてる。どっかの優等生がとろとろに甘やかしてくれちまうモンだから、夢見心地で足元すら覚束ねぇ。
もっともっと優越感に浸って自惚れて笑ってろよ。お前が笑うなら安心して隣で笑ってられる。

マルコ。俺のマルコ。俺だって負けねぇくらいお前が大好きだ。
十四ヶ月と一日ありがとよ。
十五ヶ月目もよろしく。


追伸。「囲う」云々辺りから「これからも傍に」の一連の言葉が、一瞬プロポーズに見えました。真面目な顔で蜜を差し出すその姿勢こそずるいと思います。
あと何回惚れ直せば良いのやら、見当もつきません。

更に追伸。朝になって誤字に気付いたので慌てて書き直しました。もうバレてしまったかもしれませんが、サラッと書いている風でいて、かなり緊張しています。公共の場で手紙を広げるのが恥ずかしいので、なかなか自分が書いた文章を読み返せず、普段よりミスが多くなってしまいます。……クソ、恥ずかしい。
30 マルコ・ボット
先月と同様、新たな節目を迎える前に一年と二ヶ月目を僕の言葉で締める。
…なんて、格好つけて言ってもただ遅筆なだけなんだけど。

ジャン。この一ヶ月も変わらず傍にいてくれてありがとう。
…はは、変わらずっていうのは語弊があるかな?うーん…、正面から僕と向き合ってくれてありがとう、か。
悩ませてしまってごめん。でもお前がその葛藤を一人で抱え込まず僕にぶつけてくれて嬉しかった。
初めこそ動揺したし、やり取りの中でお前に不信感を抱かせてしまった自分の至らなさを情けなく思って泣きたくもなったけど、話し合って、すれ違っていた思いに気付いて、歩み寄って…なんだか恋人みたいですごくいいなって思ったんだ。
もちろんジャンは僕の大好きな自慢の恋人だよ。
でも…そうだな。いつも気を遣わせて、まるで壊れ物を扱うように大事にされてるって思っている部分もあったから、ジャンが真っ直ぐに僕を見ていてくれたことが嬉しかったんだと思う。
はは、ジャンとだったらいい喧嘩が出来そうだ。

僕は本当に筆が遅い。
ふとした瞬間にこの世界にいるのは向いてないんじゃないかって、自己嫌悪に浸ることもある。
けれどジャンは僕のペースが遅いのを肯定した上で、「周りから見たらのんびりかもしれないけど俺たちには俺たちのペースがあるだろ」って言ってくれた。
僕はその言葉に本当に救われたんだ。
ありがとう、ジャン。
僕に少しずつ自信がついてきたように見えたなら、それはお前のお陰以外の何者でもないよ。
ジャンが僕を変えてくれた。

十四ヶ月間ありがとう。
十五ヶ月目もありがとう。
そして明日からもまたよろしく。

ジャンは呆れられないか不安になるって言ったけど、それはいつも僕の方だ。満足に想いを態度で示すことが出来ないでいる僕だけど、心の底からお前が大好きだよ。

追伸。
もし僕が本気でプロポーズをしたら、この手をとって首を縦に振ってくれますか?

追伸の追伸。
冗談が常識ですね。珍しいこともあるもんだと思わず口元が緩んだのを覚えています。そして緊張している胸のうちを明かしてくれた貴方がとても可愛らしく愛らしいと思いました。
周りの目なんて気にせずに、もっと僕だけを見てくれればいいのに。なんて、いうのは冗談です。

もう一つ。言の葉への返答。
お前の為にする夜更しなら悪くないと思いました。ただ襲い来る睡魔に筆を持つ手が震えるもので、きちんと判別出来る言葉を書けている自信はないです。
31 ジャン・キルシュタイン
俺のむっつり優等生へ。

一年を過ぎた辺りから何ヶ月目かあやふやになってて、そんでそれが何とも心地好いっつーか照れ臭いっつーか、とにかく今日も昨日も勿論明日もお前の腕なり寝顔なりに癒されてる。

この間はどうも。お前、一年以上前からそうだけどよ、時々急に男らしくなるよな。…あれは卑怯だ。女子でもねぇのに心臓がキュッと甘酸っぱく縮んじまう。
極めつけの台詞に卒倒しそうになるやら顔が茹で上がるやら、お前が寝てる隣で百面相してたんだぜ。勿論責任は取ってくれるよな。

いつも暖かく包んでくれるお前に日々の感謝を。
17ヶ月ありがとよ。
18ヶ月目もよろしく。
…たまにはこっちでお祝いも良いだろ?


お前のボット君より。


追伸。ふと筆を執りたくなりフラッと書きに来ただけですので、そちらは無理なさいませんように。くれぐれも御自愛下さい。