1 エレン・イェーガー

償い

6年前の夏の終わり、二人で青い月を見た。
こんなにも月日が経って今更合わせる面は持ち合わせてねぇし、お前から何かを聞きたい訳でもない。
何で今になって…自分でもよく分からねぇしこの言葉が届くとも思っちゃいねぇけど、どうしても謝りたくて場所を借りる。

あの頃のオレは間違いなく飢えてて、お前のペースだとかやり方だとかを尊重できずに、ただただ不安だった。
最後の最後も、酷い別れ方したよな。安定してた時期なんてオレ達には無かったけど。
お前はずっと傷つく事を怖がってた。それだけ慎重なお前なのに、オレは待つ事すらできずに喚いて傷つけた。
オレは必要とされてないんじゃないか、愛されてないんじゃないか……そう苛まれて。
それでもお前は最後まで、オレの幸せを願ってくれた。
ごめん、ジャン。
不足感から無意識に理想を押し付けた事。余裕が無くてありのままのお前を受け入れられなかった事。
オレはお前に裏切られたと思い込んでたけど、あれはお前なりの身の引き方だったのかもしれない。
それくらい苦しかったんだよな…。苦しめてたんだと思う。

すげえ今更の話、6年前のお前に宛てて。
こんなオレを好きになってくれて、ありがとう。
本当に今更、オレは好かれてたんだなって気づいてさ。遅いのはオレの方だった。
その気持ちを素直に受け止められずに、そのくせ求めてばかりいた。ごめんな。

今、お前が幸せに笑ってる事を陰ながら祈ってる。心から。