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霞桜―第四夜――

静まり返った冬の夜に、沙蹴(よなける)は自室で床に座ったままビデオを鑑賞していた。
照明をやや落とした部屋にテレビ画面から白い光が漏れる。
その画面の中には、しなやかで雪のように白い身体が反り返り、妖艶にもだえている紫鳴(しなり)の姿があった。
何一つ纏っていないあられのない姿で、手首を縛られ、仰向けにベッドに拘束されている。
そして身体の中心には小さい玩具のバイブレータがくくわえられ、その奥にはそれより大きく太い男根型のものが差し込まれていた。
長い間そこに放置されていたのがわかるように、シーツの上にはいくつもほとばした痕が見られえる。
その中で紫鳴は本能のまま動く、獣のように妖艶な吐息を吐いていた。
「お兄様っ、はぁん」
時折愛する兄を呼び、腰をくねらせて綺麗なラインの横腹を見せる。
バイブの、達するには微妙な、むず痒い快楽が、心地よくもあり苦痛でもあるようだ。
そうして中途半端な刺激が紫鳴の身体を惑わせる。
「あぁん、いきたいよぅ」
身体全体にはじんわりと汗がにじんでいる。
目じりにはな涙が浮かぶ。
そこに手で触りたいのに、頭の上で縛られているので触れることも出来ない。
遂には我慢できず暴れ始めた。
そしてもっと刺激が欲しいと膝を曲げた状態で大きく足を開き、繰り返し腰を突き上げる。
でも、肝心の部分は空を仰ぐばかりだ。
「お兄様っ、ここを舐めてほしいのぉ、見て、ここだよ、んっ」
沙蹴を煽るようにカメラに向かって何度も腰を小刻みに前後に動かせる。
反りたったかわいいそれが、ふるふると自己主張するように揺れた。
先端からは透明の液があふれ、だらだらと伝っていく。
「お尻の中が暑くてむずむずするよう、お兄様ので紫鳴の中をぐちゃぐちゃに掻き回して、奥まで突いて欲し、よぅ」
沙蹴のものが自分の中へ入っていくのを想像したのか、興奮して小さなそこがびくんと震えて、大きなものを咥えているそこが小刻みにきゅっきゅと収縮する。
「ああんっ、擦って!擦ってよぅ!お兄様のでいっぱいにして〜」
兄とのセックスを妄想して、頭の中を沙蹴の陰茎でいっぱいにしてかぶりを振って叫ぶ。
2
淫乱になった身体は快感に逆らうことは出来ずに、熱くなっていくばかり。
「でるよぅでちゃうっ、ぼく、でちゃぁ、はああぁん、おに、さまぁあ!」
瞬間、フレームの中に精液を飛ばす姿が映る。
身体やシーツ、顔にまで白い液体が飛び散る。
紫鳴の身体は喜びのあまり、びくびくと痙攣した。
その様子を始終、沙蹴は表情も変えずに眺めていた。
すると、そろそろ来るだろうという沙蹴の予感通り、ドアをノックする音が聞こえる。
「どうぞ」
ドアが開き、隙間から忍び込むように紫鳴が入ってくる。
紫鳴は生まれたままの身体を白いシーツでくるんだだけの姿である。
沙蹴は黙って隣を示し、紫鳴を招く。
紫鳴は座って、嬉しそうに兄に擦り寄る。
沙蹴がいとおしく弟の頭を撫でながら、VTRから目を離さずに囁く。
「誕生日プレゼントありがとう」
紫鳴の髪をすくうように掻いた後、力強く抱き寄せる。
紫鳴の頬が少し赤色に染まった。
「とても綺麗だったよ」
紫鳴は恥ずかしそうに頷く。
画面はまだベットでもだえている紫鳴を映し出している。
その映像を見た紫鳴は、また身体が熱くなってくるのを感じた。
そうしてだんだん空を仰ぐそれを、堪らずに兄に擦り付ける。
ぼくのおんなになっちゃったよ。お兄様に触って欲しいよと。
それに気づいた沙蹴は、紫鳴の細い顎を掴み、上へ向かせるとゆっくりと唇を合わせる。
濡れそぼった音を鳴らしながら、紫鳴の唇を食べていく。
沙蹴は唇を合わせたまま紫鳴を抱き上げ、ベットへと運んでいった。
スプリングが弾み、ゆっくりと二人の身体が沈んでいく。
白い花弁を開くようにゆっくろとシーツをめくっていくと、中からしなやかな肢体が現れる。
沙蹴は包み込むように紫鳴を抱きしめると、囁いた。
「今夜はやさしく抱いてあげるよ」