51 無名さん
(少しずつ進み始める列の中、空腹で微動だにしたくない足を鞭打つように一歩一歩と踏み出して昼食へと近づくものの、その先はまだ遠く。俯きながら進む最中、不意にかけられた声のする方へ顔を上げれば見知った顔がひとつ。偶然の遭遇に驚きながらもへらりと力ない笑みを浮かべて、こちらへ問いかける相手へと返答を返しながら、自身の前に並ぶお客達を指差し簡単な状況の説明をすると、その表情は苦笑いへと変わる。ふと相手の手元へ視線を向けると、そこには自分の求めていた昼食が二つ分あるではないか。羨ましさの滲む視線を向けそうになるのをぐっと堪えて相手を見るが、目の前にいる相手は彼女一人。店の中に友人がいるのか、あるいはこれを一人で食べるのか…?と浮かんだ疑問を遠慮なく相手へと投げかけ)あ、白石ちゃんじゃん。あー…うん。まぁ、あれよ。めっちゃ腹減ってんだけど、これだから。…ねぇ、白石ちゃん。それ二人分?一人分?

(列の後方にて注文を待つ相手の姿は弱弱しく、それでも返ってきた言葉の内容と相手の前に並ぶ人の列に納得し、空腹以外の体調不良ではないことに安堵。次いで空腹の相手・行列・二人分の昼食を順に移しては数度瞬きの後、改めて店内を見渡して空席を探し。ちょうど食事を終えた二人が席を立ったところを指差して、小さく笑って食事を誘い)ほんと、凄い行列……あ、えっと…ほら、あそこ空いたよ。飲み物はアイスティーだけど我慢してくれる?