掌に - 短期募集

1 三／日／月／宗／近
掌に
ひとつ乘せるとしたらなにがいい。
望むものをあげるとしよう、代わりにそちらからもなにかこの手に乘せて貰うがな。
あらゆる事はこの手の開く範囲で事足りてしまう、花を愛でるにしろ柄を握るにしろ、頬を包み撫でてやるにしろ。掴み損ね、取りこぼし、指の合間からすり抜けてゆくようなものは、はじめから身の丈に合わないものだったというだけ、はじめから己のものではなかったのだというだけ。
掌にひとつ乘せるとしたらお前はなにが欲しい。望むものをあげよう、甘きか、花か、熱か、惻隠か、安寧か。
叶えてやれるだろう、代わりに俺のこの手にもひとつ乘せてやって欲しい。なに、御簾越しの姫君の如き難題を押し付けてやるつもりはないさ、そう構えずとも良い。

何れにせよこの手に握らせてくれたものをそっと温めたい。そのような夜だ。……近う。

(提供：月、募集：不問、連絡：仮宿)
2022/1/30(日)1:43
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