ひと夜 - ゲーム一日限定

1 謝／必／安
ひと夜
間も無く雨が降る。小糠の雨はこれならよかろうと機嫌を取られているようで気に食わないが、飛雨は一層疎ましい。貴方を喪ったあの昼下がりを思い出すから。

今宵、幻を見ようと思うのです。目蓋を瞑ってひと息、ふた息、それで見られる特別の幻。そこではかつての彼のひとにあいまみえる事が叶う。手を取り声を聞き、ひそひそ話で耳を打つ事だって。じゃれあうのもいい。それとも着せ替え遊びを致しますか。今は気楽な残花泪を纏っているのだけれど、お望みならばなんなりと他に袖を通しましょう。二人寄り合えばこれからを語り合う事だって、……。
……一人ではできない。貴方が居なくては何にもならない。

范／無／咎、どうか、今宵は私のそばへ。白鬼ではない、ひとりの男、謝／必／安として接してほしい。どうか、どうか。
部屋には戸締りを施しております。他の誰も我らの安寧へ踏み込めぬよう。ですから私より鍵をお届けに上がりますので、貴方は身一つで。

幻の貴方へ、この声が届くことを切に祈って。
2021/5/15(土)19:56
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