落葉亭

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haru
平成31年 1月

面接を待つ会場のコート脱ぐ

元号の無き銀行の初暦

竹刀振る風切る音や寒稽古

雪降り積もる鉛筆の字を濃くす

初旅の故郷までの切符買ふ

継続は力となりぬ初日記

出勤やつけまつげしてマスクして

ふるさとの雪の匂ひの林檎かな

雪掻のシャベル売り切れたる都心

葉牡丹のプランター置く駐在所
chiharu
平成31年 山茶花1月号

秋灯や辞書より探す文字ひとつ

紅葉撮る人と野鳥を撮る人と

小鳥来る風の謳つてゐるベンチ

コスモスの風に抗ふこともなし

歓声を乗せて豆汽車秋桜

母の手の林檎うさぎとなりにけり
chiharu
平成31年 ホトトギス1月号

爽やかに愛告げる日のチャペルかな

小鳥来て午後の紅茶にしませうか

虫の音に包まれてゐる無人駅
chiharu
平成30年 花鳥諷詠11月号

安原 葉選
民宿の窓に夜干しの水着かな
chiharu
平成30年 12月

冬紅葉寺に丸窓四角窓

亜夫利加に咲く大輪の冬薔薇

キャンドルを灯してクリスマスキャロル

北風や温泉タンクの上に猫

寒風に大漁旗のひるがへる

伐採の跡そのままに山眠る

羽布団猫足踏みをしてをりぬ

温暖なれど遠州の空つ風

この町に住み五十年空つ風

空つ風洗濯物のよく渇く

エクセルでつける家計簿十二月

花枇杷や主は入院中と言ふ

白菜や宮沢賢治自耕の地

白菜の甘さ溶けだすスープ煮て

白菜を包む新聞英国語

出勤のフロントガラス結氷す

氷塊を削りてマティーニの夕べ

数へ日や辞職願をポケットに

靴下やサンタクロースきつと来る

着膨れて財布を探すレジの前

旅人に駅ストーブのもてなしぬ

湯豆腐や京都三条河原町

ランナーに不屈のこころ息白し

息白き長距離ランナーの孤独