Z-Z BOARD
過去ログ235
2016/10/24 22:31
▼無名さん続きです。今日の昼休みにぽちぽち書きました(笑)
10/24(月)22:31
▼無名さん『意外にも……2』
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翌日――
第二位階の執務室に大きな箱が届けられた。
荷を受け取った侍従によれば、聖騎士団長の使いの者が持参したらしい。
プレゼント用にラッピングされた箱には、封書が添付されていた。読まずとも、なんとなく内容がわかってしまう。
気が進まないながらも、ピエールは封を切り、書簡に目を通す。
セントラルクルスでも一二を争う仕立て屋に特注したこと、納期が短かったにもかかわらず素晴らしい仕上がりであることなどが記されていたが、嬉しくない贈り物であることに変わりはない。
ピエールは人払いをして執務室の扉に鍵をかけると、箱の中身を検分しはじめた。
最初に引っ張り出した黒い猫耳のカチューシャに、ピエールは失笑した。
セディアもまた、芸がない真似を――と思わずにはいられない。二番煎じがどうのこうのと言っていたわりに、黒猫の仮装は一度やっているではないですか、独創性のかけらもありませんね、と内心ツッコミを入れつつ……。
ピエールは中身をひとつずつ取り出し、来客用のソファーに並べていく。
黒い猫の尻尾、白いハイソックス、ガーターベルト、黒いビロード地のリボンに銀色の大きな鈴……。いかにもな品々に微塵も動揺することなく、淡々と作業を進めていたのだが、シルクのエプロンドレスが出てくるにおよんで、ピエールの手がはたと止まった。
幾重にもフリルがついた黒いエプロンドレスの丈は、ひどく短い。ためしに身体にあててみると、膝上25センチときている。
鏡に映る自分の姿をしげしげと眺めやり、ソファーに並べた付属品から類推し、ピエールはある結論に達した。
これは、ひょっとすると、巷でいうところの「猫耳メイド」なる服装ですかねぇ――
ピエールが衣装の形状とその用途を完全に把握したとき――彼の背後の壁に亀裂が走った。
メキメキ、バリバリと派手な音を立て、漆喰の壁が半壊する。
おっと。私としたことが……つい、魔力を暴走させちゃいましたねぇ――
ピエールの緑玉の瞳が剣呑に煌めく。口許に浮かぶ氷の微笑は、見る者を震えあがらせるに違いない。
第二位階を怒らせたら怖いということを、セディアは身をもって知ることになるのだった。
(続く)
10/24(月)22:25
▼ぱんだまん無名様
おー!ハロウィンの時期ですもんね!
ちょwww髭のバニーちゃん想像してしまいましたよ(笑)罰ゲーム以外の何者でもないっすwにしても団長に何されるかニヤニヤしちゃいますが♪( ´▽`)
10/24(月)1:35
▼無名さん書いてみました(笑)
10/23(日)21:48
▼無名さん『意外にも……1』
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「チェック・メイトだ、ピエール」
コトリ、と盤上に駒を置き、セディアが淡々と告げた。
素っ気ない口調とは裏腹に、グリーングレイの瞳は挑発的に煌めき、口許にはしてやったりといった不敵な微笑が浮かんでいる。
「ん〜。負けちゃいましたねぇ」
ピエールは数瞬黙考し、敗北を認めた。数手前から見えていた詰みであり、どう足掻いても回避不可能とあっては仕方がない。
チェスの勝負であれば、常は自分の方に分があるだろうが、今日のセディアはやたら強かった。その指し手にはなぜか鬼気迫るものがあった。
「では、約束どおり、こちらの命令に従ってもらおうか――」
聖騎士団長の口許にひらめく悪魔的な微笑に、ピエールは不吉な予感を禁じ得なかった。
「『命令』というのはなんです、セディア?」
内心恐々としながら、表面はあくまで冷静に問い返す。
「なに、簡単なことだ。昨年、ハロウィンに私がしたことと同じことをやればいい」
「……」
ピエールはしばし絶句した。去年、賭けに負けたセディアに要求したことと言えば――
聖騎士がたむろする酒場で給仕をさせたのは、まあよしとしよう。問題はその格好である。ほんの戯れと言うには、悪ふざけが過ぎた。あろうことか、セディアにバニーガールの衣装を着させたのである。うさぎの耳にハイレグレオタード、編みタイツ、ハイヒール――といった出で立ちは、さぞや聖騎士団長の威信を低下させたに違いない。
「私にバニーガールの衣装を着ろとおっしゃるのですか?」
ピエールはなにやら軽い頭痛を覚えながら、セディアに確認する。
「ふむ。二番煎じではつまらぬからな。少々趣向を変えて……」
覚悟はできているのだろうな――
グリーングレイの瞳には、魔界に君臨する魔王もかくや、と思われるようなよろしくない光があった。
(続く)
10/23(日)21:47