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過去ログ236 2016/10/27 20:48

▼無名さん
続きです。どんどん長くなっていく……(´・ω・`)
10/27(木)20:48

▼無名さん

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 セントラルクルスの路地裏の一画に、【銀の牡鹿亭】という名の知れた酒場があった。

 ハロウィンの折りには、この酒場は聖騎士の貸し切りになるのが恒例である。

 ライシュルトは、【銀の牡鹿亭】でクラウドとともに蜂蜜酒が満たされた杯を傾けていた。

 「今年はピエール様からお呼びがかからなかったなー。ある意味、平和と言えば平和だけど、何か……」

 ライシュルトは言葉を切り、チーズとナッツ類の盛り合わせに手を伸ばした。アーモンドをひと粒つまみ上げ、口の中に放り込む。

 「物足りない、とか?」

 ライシュルトを一瞥し、クラウドがいたずらっぽく尋ねる。

 「ん〜、何かさー、刺激が足りないと言うか……」

 ここ数年、ハロウィンの仮装をめぐって、ライシュルトは第二位階にいいように遊ばれてきた。多少耐性ができたとはいえ、初回に渡された衣装が強烈すぎたため、ライシュルトにとってハロウィンはいささか気が重いイベントになっている。

 ピエールが選んだ衣装の着用をあれほど嫌がっていたはずのに、いざ召集がないとなると寂しく感じるのだから、不思議なものである。

 実は、第二位階は自分自身の準備に忙殺され、今年はイベントの仕掛人なんぞやっている暇がなかったのだが、ライシュルトがそれを知りようはずもなかった。

 「そうか――。女装が癖になっていたとは思わなかったよ」

 「んなわけあるかっ! オレの仮装を見て、団長が混乱するんだぞ。悩んで寝込んだりしたら、気の毒だろ」

 「メイド服もバニーガールの衣装もライにとても似合っていたけどね」

 クラウドがくすりと笑い、グラスに口をつける。

 ふたりでとりとめのないことを話しながら杯を重ねているうちに、めずらしく酔いが回ったのか、ライシュルトはとろりと眠くなってきた。

 うとうとしかけたとき、戸外で馬車の停まる音がして、ほどなく誰かが店の扉をくぐった。

 新たにやって来た客に、ライシュルトは何気なく視線を向ける。

 新参の客はフードを目深にかぶり、濃紺のマントに身を包んでいた。道中、人目を忍んで来たようだ。

 ライシュルトは、その人物に何となく見覚えがあるような気がした。同時に、とんでもなく嫌な予感が脳裏をかすめる。

(続く)
10/27(木)20:47

▼ぱんだまん
無名様
めっちゃニヤニヤしながら読んじゃいましたよー(笑)猫耳ミニスカメイドw斎になら似合いそうです♪( ´▽`)ぶん殴られそうですがw
髭様はさすがに御立腹みたいですね。どうなることやら!←
10/27(木)0:19

▼無名さん
続きです。直しました(´・ω・`)
10/26(水)21:49

▼無名さん

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 翌日――

 第二位階の執務室に大きな箱が届けられた。

 荷を受け取った侍従によれば、聖騎士団長の使いの者が持参したらしい。

 プレゼント用にラッピングされた箱には、封書が添付されていた。読まずとも、なんとなく内容がわかってしまう。

 気が進まないながらも、ピエールは封を切り、書簡に目を通す。

 セントラルクルスでも一二を争う仕立て屋に特注したこと、納期が短かったにもかかわらず素晴らしい仕上がりであることなどが記されていたが、嬉しくない贈り物であることに変わりはない。

 ピエールは人払いをして執務室の扉に鍵をかけると、箱の中身を検分しはじめた。

 最初に引っ張り出した黒い猫耳のカチューシャに、ピエールは失笑した。

 セディアも芸がないですねぇ、と思わずにはいられない。二番煎じがどうのこうのと言っていたわりに、黒猫の仮装は一度やっているではないですか、独創性のかけらもありませんねぇ、などと内心ツッコミを入れつつ……。

 ピエールは中身をひとつずつ取り出し、来客用のソファーに並べていく。

 黒い猫の尻尾、白いハイソックス、ガーターベルト、黒いビロード地のリボンに銀色の大きな鈴……。いかにもな品々に微塵も動揺することなく、淡々と作業を進めていたのだが、シルクのピナフォア・ドレスが出てくるにおよんで、ピエールの手がはたと止まった。

 フリルがたっぷりついたピナフォア・ドレスの丈は、ひどく短い。ためしに身体にあててみると、膝上25センチときている。

 鏡に映る自分の姿をしげしげと眺めやり、ピエールは首を傾げた。ソファーに並べた付属品をおもむろに見やり、ある結論に達する。

 これは、ひょっとすると、巷でいうところの「猫耳ミニスカメイド」なる服装ですかねぇ――

 セディアもずいぶんと小癪な真似をしてくれるじゃないですか――

 ピエールが衣装の形状とその用途を完全に把握したとき――彼の背後の壁に亀裂が走った。

 メキメキ、バリバリと派手な音を立て、漆喰の壁が半壊する。

 おっと。私としたことが……つい、魔力を暴走させちゃいましたねぇ――

 ピエールの緑玉の瞳が剣呑に煌めく。口許に浮かぶ氷の微笑は、見る者を震えあがらせるに違いない。

 第二位階を怒らせたら怖いということを、セディアは身をもって知ることになるのだった。

(続く)
10/26(水)21:48

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