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chiharu
平成30年 12月
冬紅葉寺に丸窓四角窓
亜夫利加に咲く大輪の冬薔薇
キャンドルを灯してクリスマスキャロル
北風や温泉タンクの上に猫
寒風に大漁旗のひるがへる
伐採の跡そのままに山眠る
羽布団猫足踏みをしてをりぬ
温暖なれど遠州の空つ風
この町に住み五十年空つ風
空つ風洗濯物のよく渇く
エクセルでつける家計簿十二月
花枇杷や主は入院中と言ふ
白菜や宮沢賢治自耕の地
白菜の甘さ溶けだすスープ煮て
白菜を包む新聞英国語
出勤のフロントガラス結氷す
氷塊を削りてマティーニの夕べ
数へ日や辞職願をポケットに
靴下やサンタクロースきつと来る
着膨れて財布を探すレジの前
旅人に駅ストーブのもてなしぬ
湯豆腐や京都三条河原町
ランナーに不屈のこころ息白し
息白き長距離ランナーの孤独

chiharu
平成30年 山茶花12月号
虫の音に包まれてゐる無人駅
小鳥来るロッヂの窓は森へ向き
敬老の日のオカリナのコンサート
古本に残る傍線秋灯
芒野に風の輪唱ありにけり

chiharu
平成30年 ホトトギス12月号
髪洗ふ今日も明日もあさつても
白南風や海を見てゐる風見鶏
盆用意姑の言ひなりとはならず

chiharu
平成30年 11月
短日の新宿駅といふ迷路
足元の猫湯たんぽとなるベッド
落葉舞ふ光の精と風の精
写真撮る猫の頭に蜜柑乗せ
もぎたての蜜柑を貰ふ垣根越し
花石蕗の盛りて父の忌なりけり
花石蕗を挿す厨にも厠にも
新蕎麦や席待つ人の大欠伸
小春日や駅のベンチの下に猫
伏見へと御霊納めて冬紅葉
冬花火海側の部屋予約する
凩や東京の夜ジャズの夜
耳は持たないで下さい兎抱く
会話して蜜柑貰つて知らぬ人
猫抱いてテレビ観てゐる炬燵かな
鯛焼を買つて息子の誕生日
鯛焼の顔の笑つてゐるやうな
バイク捨てられて十一月の雨
泥付きの葉付き大根貰ひけり
一人てふ至福の時間炬燵の間
置炬燵空気のやうな夫とゐて
引越のまづ炬燵組み立ててより
誰も待つ人無き部屋の寒さかな
三島忌の紅茶には浸すマドレーヌ

chiharu
平成30年 山茶花11月号
八月ももう終はりかと夫の言ふ
砂浜に寝転んで見る天の川
雨上がる花火大会待つ街に
向日葵の背丈羨ましく思ふ
新豆腐買つて今日より離乳食

chiharu
平成30年 ホトトギス11月号
自由てふ海月のやうに生きたくて
髪洗ふ心の張りを取り戻し
旗立ててゐる海の日の氷川丸

chiharu
平成30年 10月
小鳥来て午後の紅茶にしませうか
珈琲の冷める早さや秋寒し
紅葉撮る人と野鳥を撮る人と
正座して深呼吸して寺紅葉
秋雨や少し大きな夫の傘
小鳥来る風の謳つてゐるベンチ
そぞろ寒愚痴を言ふとも言はずとも
編隊はV字のかたち鳥渡る
編隊を崩すことなく鳥渡る
母の手の林檎うさぎとなりにけり
探査機の打ち上げられし十三夜
電飾を吊し都心の冬支度
彩食の野鳥の森の冬支度
柚子味噌を貰ふエレベーターの中
小鳥来る演奏会が始まるよ
秋日和釣り人と猫までの距離