26631Hit.

haru
令和1年 8月
曼陀羅は家宝のひとつ盆用意
宅配で旅荷の届く子の帰省
かなかなや木立の中の芭蕉句碑
八月や祈ることしか出来なくて
花火の夜駅に臨時のバスが着く
八月の目を閉ぢて聴くレクイエム
退職の花束を下げ花火の夜
イグアナを描く八月十五日
カフェラテの泡やはらかき涼新た

haru
令和1年 山茶花8月号
父母の遺せし薔薇のまくれなゐ
定年の夫のスーツ更衣
駅前に床屋たばこ屋夏燕
湯の宿の廻る回廊竹落葉

haru
令和1年 7月
ソーダ水波音聴いてゐるテラス
ボクシング飛び散る汗と血のリング
市議会の色とりどりのアロハシャツ
草刈や人住まふこと無き生家
草刈にボーイスカウト集ひけり
検診の結果良好ビール酌む
ソーダ水夢みる頃の海の色
海の日の旗立ててゐる氷川丸
夜の秋溜まりしメール削除して
夕立や土の匂へる野球場
雑魚寝してクーラーの無き体育館
日盛や看板下ろすクレーン車
炎天やブラスバンドの野球帽
松葉牡丹今やポーチュラカの花壇
アスファルト匂ひし都心夕立後
新婚の夜のホテルのプールかな

haru
令和1年 山茶花7月号
初虹や歩道橋より海見えて
やはらかな朝日の中のさくらかな
桜貝さらふレースのやうな波
歩きたき坂を歩きて花の昼

haru
令和1年 6月
あぢさゐに音符のやうな雨雫
六月の海に眠つてゐる真珠
草笛の心そのまま音となり
怪談のからくり模型館涼し
レンズ越し光と影と紫陽花と
道野辺のあじさゐ雨をためらはず
オカリナに涼風の音森の音
さくらんぼ外して食べるプリンかな
梅雨籠悩ましきこて二つ三つ
どくだみの匂ふ空家の又一つ
十薬の花十字架の形して
五月雨や男と歩く歌舞伎町
梅雨寒やゆつくり溶かす舌下錠
サルビアや古きギターのアルペジオ
日の匂ひ包みしタオル梅雨晴間

haru
令和1年 山茶花6月号
窓叩く雨に朝寝の覚めにけり
花ミモザまだ来ぬ人を待つ紅茶
長雨の上がりし朝の花ミモザ

haru
令和1年 山茶花6月号
私の好きな句より
中原雅美 選
伐採の傷そのままに山眠る