落葉亭

過去ログ132 2022/5/3 15:53

▼haru
令和3年 12月雑詠

日溜まりに蟹さぼてんの鉢運ぶ

潤目焼く伊豆の地酒の添へてあり

釣つてすぐ潤目を捌く指の腹

ちり鍋や日に一組の隠れ宿

寝る前の猫が足踏みする布団

猫通る少し開けある襖かな

おでん鍋一人に一つづつ玉子

安息の湖白鳥は羽休め

猫亡きあとのリビングの寒さかな

どうしても作り過ぎたるおでんかな

自走する警備ロボット十二月

クリスマスハハとケーキを食べにけり

銭湯のイベントの日の柚子湯かな

レシートの膨らむ財布十二月

賃餅を搗き始めたる午前二時


▼haru
令和3年 山茶花10月号

揚羽来る歩道の小さき水溜り

近さうで遠きバス停炎天下

毎朝の日課の庭の草むしり

太陽に愛されてゐるトマトかな


▼haru
令和3年 10月、11月雑詠

秋風や露天風呂より海見えて

離乳食始まりし子に林檎擦り

秋風に吹かれし路線バスの旅

紅葉して旅に彩り添へにけり

冬温し交はし言葉の端々に

仮装より目立つ警察ハロウィーン

鰐の子を抱かせて貰ふ旅小春

旅小春あくまで蒼き伊豆の海

立冬や泡の弾ける入浴剤

紅葉散る橋の袂に虚子の句碑

宅配の不在通知や神の留守

音程の低きオカリナ冬に入る

入浴剤入れて勤労感謝の日

初冬やタルトタタンの焼きあがる

銀杏散る風は光となりにけり

銀杏散る大地に降り注ぐ光

冬温し散歩もリハビリの一つ


▼haru
令和3年 山茶花9月号

軍事基地囲めるフェンス夾竹桃

市役所の壁一面の蔦青葉

球場に響く快音梅雨晴間

紫陽花の名所と呼べる寺多く


▼haru
令和3年 9月雑詠

亡き夫の経木を流す水澄めり

小鳥来てゐる手作りのバードバス

月付いて来る銭湯の帰り道

秋晴やお宮参りの子を抱き

リビングの明かりを消して月を待つ

月を待つ間に二杯目の赤ワイン

カーナビにまだ無きホテル小鳥来る

高々と蜻蛉飛び交ふ夕まぐれ

夫の忌の金木犀の花盛り

名月や窓辺に運ぶ椅子二つ

名月や釣糸垂らす防波堤

木犀の香りし風の宅配便

黒板にワインのリスト秋灯し


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