落葉拾ひ

過去ログ1 2013/1/12 15:00

▼chiharu
2012年 ( 3 )

訳ありの青森産の林檎かな

赤い羽根つけて東京丸の内

もう来ない予感落葉を踏みし音

ハミングを口ずさみつつ落葉掃く

秋冷や胸にちくりと注射針

別るるも出逢ふもご縁秋の雲

月の夜の石塀小路を歩こうか

濡れし服乾かすことも時雨宿

色褪せしアルバム開く秋夜長

白よりも紫が好き野菊咲く

また別のバス来る紅葉祭かな

高尾へと十一月の予定書く

空つぽのわたしの財布神の留守

缶蹴の缶残されて暮早し

会へば又話の尽きず十夜かな

散りてなほ意志ある如く落葉舞ふ

ゆふぐれの色の落葉を拾ひけり

もう少し歩いてゐたく落葉踏む

悔しくて悔しくて踏む落葉かな

朝寒や始発駅まで子を送り
2013/1/12

▼chiharu
2012年 ( 2 )

横浜線乗り過ごしたる夏の果

秋刀魚焼く向ふ三軒両隣

転生の父がくるりと赤蜻蛉

秋ざくら風に抗ふこともなし

子を送る駅までの道いわし雲

蜻蛉の翅透きとほる水明り

一病を忘れてゐたる良夜かな

いつまでも母と話して秋夜長

秋灯下鬱といふ字のむつかしく

小鳥来るギター抱へし男の子

おにぎりと山下清秋の雲

外人の一行もゐて萩の寺

休日に起きて用なき菊日和

廃校となりし母校や蔦紅葉

白も又燃ゆる色なり曼珠沙華

廃業の海辺のホテル鳥渡る

遊ぶ子のもう誰もゐぬ秋の海
2013/1/12

▼chiharu
2012年 ( 1 )

雪降ると声やはらかく母を呼ぶ
(毎日俳壇、西村和子選佳作)

ネクタイを選び店先春隣

五十路には五十路の恋や落椿

蓬摘むふるさとの野の起伏かな

子の丈に屈めば土筆見つけたり

尊厳といふ死歿あり涅槃の日

鳥雲に入りて人待つ無人駅

父の星ひとつ加へて春銀河

しやぼん玉光の泡となりて飛ぶ

行く春に取り残されている心地

花辛夷白を尽くして咲きにけり

制服のリボンふはりと春の風

石楠花に雨の重さを加へけり

穴あきのジーンズ穿いて夏来る

恋の日を思ふ金雀枝咲く頃は

焼きたてのクロワツサンと薔薇のジヤム

また母のいつもの話豆ご飯

旅五月今来た汽車に飛び乗って

薫風や上がりはじめの観覧車

あぢさゐの花に移ろひ心あり

笑顔さへ仮面のひとつ木下闇

緑蔭に雨の匂ひの猫来る

迷ふことこその道なり蝸牛

はつなつのコバルトブルーの空の色

風鈴や誰か呼ぶ声したやうな

ソーダ水その一言が言へなくて

折り紙で作るモビール夏休み

みどり児の大きな欠伸昼寝覚

スーパーの棚より熟れてゆくトマト

サンダルと麻のスカート夏が好き

繰り事を猫に聞かせて夕端居

冷静に毛虫を焼いてゐる女

夕焼のグレーブフルーツ色の海

やり投げのあとの雄叫び雲の峰
(毎日俳句大賞、小澤実選佳作)

まだ熱の残る日傘を畳みゐる

原爆の日や特売の水を買ふ

桃剥くや傷つき易き心なる

仕方なく猫を洗ひて晩夏なり
2013/1/12

▼chiharu
2011年 ( 2 )

この道もいつか果てありカンナ咲く

花たばこ摘みて縁切寺にあり

いつまでもメール交して夜の長し

思ふことどこか遠くて秋夕焼

誰もみな一病を負ひ秋暑し

もの言へばすぐに消へゆく流れ星

秋雲の行方はいづこ風見鶏

言ひ訳を言つても一人秋の海

江ノ電のカーブ軋みて秋の暮

草虱つけて日暮の猫戻る

ひとつ咲きまたひとつ咲き冬桜

ごめんねと言ひ出せぬまま蜜柑剥く

マフラーをがんじがらめに登校す

帰りたくなくて落葉を散らしけり

落葉踏む音にも母と分かりけり

凩の東京タワージャズの夜

着膨れの心隠してゆく如し

冬黄葉空の隙間を埋めにけり

カクテルの泡の弾けて冬銀河
(毎日俳壇、西村和子選佳作)

忘れたきことのありけり冬籠
2013/1/12

▼chiharu
2011年 ( 1 )

初暦約束の日を印しけり
(熱海市民文芸コンクール佳作)

蝋梅の匂ひ袋をポケツトに

冬日向母の温もりかも知れず
(熱海市民文芸コンクール秀逸)

定刻を過ぎてバス待つ春の雪

人の世の浮きつ沈みつ涅槃雪

別る日の花の吹雪となりにけり

ポケツトの釦そのまま卒業す

ただ歩くだけの汀に桜貝

颯爽と十字切りたる初燕

走り茶の終ひの一滴注ぎ切る

母の日や素直になれぬこと多し

半袖のシヤツの眩しき夏来る

巣立つ子の部屋そのままに夏帽子

昼寝覚しばらく記憶遠くなる

それぞれの塩の加減や鯵を干す

髪型の決まらぬままに梅雨深し

戻りたる猫の足拭く梅雨晴間

この町の祭が済めば梅雨明ける

生くるとは遺さるること沙羅の花

遠き日の母の眼差し茄子の花

サイダーの泡の弾けて誕生日

好きだから言へるわがままソーダ水

人を待つ午後の噴水広場かな

和菓子屋に無くてはならぬ渋団扇
2013/1/12

2

掲示板に戻る