落葉亭

過去ログ12 2013/11/1 15:14

▼chiharu
2013年、10月

秋天やビルに緊急ヘリポート

夕暮の埠頭を渡る秋の風

ため息は心の言葉秋夜長

鳥渡る空に国境なかりけり

一日を歩いて自由秋の風

歩きたき日や秋晴の空の下

金木犀咲き始めたる誕生日

秋天へ天使の梯子登りしか

運動会天気次第といふ予定

あの町もこの町も今日運動会

綱を引く心一つに運動会

露草に朝の光の雫かな

高台寺ライトアップの紅葉かな

すれ違ふ人も旅びと秋の風

夜なべする明日の仕事の下準備

団栗の紛れてゐたる玩具箱

秋思なほふっと途切れしオルゴール

スカイツリー仰げば秋の虹立ちぬ

空っぽのわたしの心秋の風

コスモスの好きより始む花占ひ

神護寺の門見えて来し薄紅葉

点滴の落ちて音せず夜の長し

諍ひのあとの沈黙秋の雨

見上げれば龍の居さうな秋の雲

授業料払ひ終へたる秋の暮

再びの父の入院秋の暮

秀吉とねねの眠りし紅葉寺

入院の父に林檎を剥いてやる

門前に人の列なす紅葉寺

釣人の傍に野良猫秋日和

江ノ電に乗るだけで良し秋うらら
2013/11/1

▼chiharu
山茶花、10月号より

麦酒飲む酔はねば言へぬ話あり

進みつつヨットは風を楽しめる

凹みたるまま置かれゐし夏帽子

人の恋打ちあけられてソーダ水

昼寝覚しばらく記憶遠くなる
2013/10/27

▼chiharu
ホトトギス、10月号より

あぢさゐの花に移ろひ心あり

遠き日の母の眼差し茄子の花

戻りたる猫の足拭く梅雨晴間
2013/10/27

▼chiharu
2013年、9月

長き夜やまだ書きかけのEメール

髪切れば心も軽く爽やかに

虫籠や図鑑ひろげし男の子

ふと見れば星のかたちに桔梗咲く

秋の虹口開けて見るタワーかな

秋雷や午前六時の旅枕

出勤や夜学教師といふ仕事

小鳥来て土曜の午後のティールーム

落款の位置ずれてゐる秋灯下

栗を剥くオリンピックの記事の上

芒野に風の輪唱ありにけり

愛の羽根つけてあなたに逢ひにゆく

台風の進路次第といふ旅路

台風の去りて広がる空の青

コスモスの揺れて住宅展示場

微笑の国より届く唐辛子

美しき古語思ひをる良夜かな

天と地を繋ぐこの道曼珠沙華

象牙色なす十六夜の月明り

名も知らぬ小鳥来てゐるテラスかな

父眠る墓所の一隅彼岸花

小鳥来て猫が獲物をとる姿勢

黙もまた抗議のひとつ露けしや

赤い羽根目印にする待ち合はせ

流星の消えたるあとの闇深し

芋虫のソテーにスリル異国の地

新涼の会ひたき友に会へし旅

萩零る風の悪戯かも知れず

故郷はちちははの国いわし雲

コスモスの嫌ひで終る花占ひ

踏み入れば我より高き芒かな

しろがねの風を集めて芒原

水色の空はキャンバス秋桜

露けしや明日閉店の鮮魚店
2013/10/27

▼chiharu
山茶花、9月号より

草笛を吹き少年に戻る父

笑顔さへ仮面のひとつ木下闇

仏壇のメロン食べ頃かも知れず
2013/10/27

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