┼ 鎖唄 ┼

過去ログ542 2010/5/11 23:15

投稿者:マーガレット
序章の夜想曲
 
ぶらりと外へ出ると
暗闇の中で月に照らされ
風に靡く髪を抑えながら
夢を見るように佇む女がいた

「こんな寒い夜にどうしたのですか?」

私が問い掛けると
女は黒い瞳をこちらに向け
一瞥した後に空を見上げた

「呼んでいるのです、私を」

呼んでいるのです、と
女は繰り返しそう言った

「なにが呼んでいるのですか?」

続けて問うと
突然強い風が吹いた

私はその強さに驚きながら
耐えるように踏ん張るが
女は風など感じないように
黒い瞳で私を射抜いた

「月が」

女がそっと答えると
風は荒れ狂うほど強さを増し
私は驚きと共に目をつぶった

ふっ、と風が止み
恐る恐る目を開けると
女は跡形もなく
消えていた


[次のお題は?]

5/11 23:15

投稿者:翡翠
ビー玉
毎日日々を刻んでは


私の頭は忘れていく


誰かに伝えたい言葉があった筈なのに…


何を伝えたいのか…


誰に伝えたいのかもう分からない


それでも時計の針は残酷に時を刻みつづけ

私を置き去りに太陽は沈んでいく…


砕け散った記憶のかけらをかき集めた


それはいびつな過去をさらけ出して


悲鳴をあげそうな唇を両手で塞いだ


また今日も私の記憶は砕け散った硝子のかけらのように弾けてく
[次のお題は?]
月下美人
5/11 10:35

投稿者:マーガレット
悲壮の組曲
 
思い出してみると
砕けた日常の破片がニッコリと笑う

朝日が昇り
月が舞い降り
夢から醒めると
また涙で頬を濡らす

ああ、変わってしまったんだ

そっと空を仰ぐと
グラリと景色が揺れて
また自らの底へ堕ちていく

誤解、憎しみ、悲しみ

どれも聞き飽きた言葉だが
その痛みは身に染みていると自負

破片を繋ぎ合わせれば
深い深い闇が待っていた

自らが招いたその闇は
底に行くほど冷えていって
いつになったらこの身を離すのかと
静かに叫ぶ


[次のお題は?]
かけら
5/8 2:10

投稿者:よしただ
イレモの
どこから来たっけな
安い露店の
ビニールに入れられて

忘れなかったっけ
ご大層な鉢に入れられて


むつかしいことは
まるでわかんない
僕のことばは
秒速3メートル


箱の中の視線の
世界は捩曲げられてさ
僕が気付くころには
その中にいない
[次のお題は?]
解ける温度
5/7 22:25

投稿者:翡翠
女性 23歳
幸せの箱
いつの間にか気が付けば此処に居た


小さく暗い布の中


誰かと言葉を交わしたことなんて皆無で


今が昼か夜かなんて考える必要さえないこの世界に一人ずっと佇んでいた


誰かが私を呼ぶ声が聞こえた気がしたけどそれさえも白昼夢のように不安定


空を見上げれば半円の空には雲一つ見当たらない


肌色の人の顔が見える


あぁ…


そうだったね…


ここはポケットの中だったんだ…


忘れさられた私は今日もポケットの空を眺めていた
[次のお題は?]
水槽の金魚
5/7 10:37

投稿者:マーガレット
夜空の楽劇
 
「僕の世界の中心は君だ」

太陽が目を醒まし
のそのそと起き上がりながら
月の面影に話しかけた

恋という名の甘い果実は
灼熱と、照らし出す光で成り立った

「私の世界の中心は貴方」

月が明るくなる空を見上げ
自らの目を閉じようとしながら
太陽の輪郭に呟いた

恋という名の静かな喜びは
情欲と、淡い鴉色の空で成り立った

それは交わる事のない
完成したソラ


[次のお題は?]
ポケットの中
5/6 14:32

543541

掲示板に戻る