落葉亭
過去ログ120
2020/5/30 14:02
▼haru令和2年 5月
伽羅蕗や舌が覚へてゐるレシピ
庭いぢることもリハビリ牡丹咲く
若葉風散歩はリハビリの一つ
ジョギングの靴のみづいろ夕薄暑
子供の日メール既読の印つく
更衣して似たやうな色ばかり
物持ちの良くも悪くも更衣
キャベツ買ふ間隔空けて並ぶレジ
母の日のポストに不在連絡票
友達のやうな母ゐてカーネーション
鎌倉に海辺山の辺風は初夏
レース編む昔電話は玄関に
羽衣の海を背にして薪能
柿若葉屋根にソーラーパネル付き
やり投げの滞空時間青嵐
客船の遠くに見えて花蜜柑
湯の宿の石の回廊竹落葉
Kindleの寺山修司読む五月
葉桜となりて小さき駅舎かな
小満や声の集まる道の駅
麦の秋明日のパンを買ひにゆく
麦秋やバゲット包む巴里の地図
蚕豆を剥く法案の記事の上
風薫るフォークにパスタ巻きつけて
断捨離と呟いてゐる更衣
大学の名が停留所樟若葉
妃殿下の名前冠せし薔薇を撮る
阿弗利加に咲く大輪の紅薔薇
2020/5/30
▼haru令和2年 山茶花4月号
元日の朝まつさらなシャツを着る
源泉の湯気たくましき寒玉子
冬ぬくし撫でれば喉を鳴らす猫
葉牡丹のプランター置き駐在所
2020/5/28
▼haru令和2年 4月
ヒヤシンス窓辺で手紙読む女
春昼や猫の背伸びのヨガポーズ
教会の長椅子硬く春の昼
春愁や星占いを立ち読みす
ふらここや廃校決まりたる母校
黄色い花を飾りたくなれば春
朧夜や路上ライブのサクソフォン
山椿日野俊基の処刑の地
朧夜の竜宮城のやうな駅
春昼や鳶の狙ひしハムサンド
目の前の桜水面のさくらかな
駅弁の箸の短し花の昼
春愁といふ片恋に似たるもの
囀の森の天空カフェテラス
まだ夢の続きをみたく朝寝かな
大朝寝枕を替へしだけのこと
沈丁や新車の届く日曜日
花の塵回転扉開くたび
花は葉に自宅学習続く日々
ベランダのシンビジウムを供花に切る
風光る空に近づく観覧車
春月や水平線に島一つ
珈琲派紅茶派のゐて春の昼
春昼や珈琲テイクアウトして
さりげなく娘の名と同じエリカ咲く
蟄居して桜隠しとなる都心
もう仕事行きたくないよ蝶休む
啄木忌レジ打つ指をぢつと見る
猫の子を抱く哀愁の喜劇人
春の雨不眠不休のICU
大朝寝しても今日から職がない
復興の町の一本桜かな
春灯や直感で入る焼鳥屋
囀や上下に揺らすティーバッグ
春風や胸ポケットに乗車券
イヤホンに微熱のこもる日永かな
珈琲の豆を挽く音日の永し
春風やふわりと揺るる服を着て
永き日や乗り放題の旅切符
恙無く進むリハビリ花は葉に
チューリップ日直の人水替へる
チューリップ花束にして誕生日
しゃぼん玉母のカレーの匂ふ路地
囀や盲導犬のゐるテラス
鮑喰ぶ伊豆の地酒の添へてあり
2020/5/28
▼haru令和2年 山茶花3月号
短日の電車遅延のアナウンス
聖樹はやホテルのエントランスにも
聖夜来て宝石箱のやうな街
病棟の隅にもクリスマスツリー
シャンパンの泡の弾けてクリスマス
2020/5/28
▼haru令和2年 3月
アルバムに挟む四つ葉のクローバー
クローバの四つ葉摘むまで帰れない
紅椿光たゆたふ水盤に
海鳥の佇む埠頭春の雨
春兆すバレリーナめく赤い靴
ハムスター埋めてやはらか春の土
手のひらに収まる財布買ひし春
童心に戻りし心土筆摘む
卒業の子に一鉢の桜草
2020/5/28