落葉亭

過去ログ121 2021/1/12 14:55

▼haru
令和2年 7月 雑詠

白シャツに玉虫色の貝ボタン

麦酒買ふビニールカーテン越しのレジ

金魚飼ふ野良猫が水飲みに来る

観覧車より噴水の虹の色

麦酒買ふ煙草と競輪新聞と

駄菓子屋に毎日通ふ夏休

汗拭ふ二段ベッドを組み立てて

一家族人数分の扇風機

ラーメンと同じ値段のかき氷

蓋の開かない硝子瓶の辣韮

夕焼や島に灯りのともる頃

約束の駅は西口星迎

懐石の品変はりたる小暑かな

渋団扇いま饅頭の蒸し上がる

巴里祭ベイブリッジ見へし部屋

今日からは一人の暮らし金魚飼ふ

人を待つタワー七月十四日

山車囃子路地といふ路地抜けにけり

曳山車のすれ違ふには狭き路地

習作の月下美人の絵の葉書

日盛やバスを待とうか歩こうか

水槽に広がる海月五千匹

煩悩や無になれるまで海月見て

孔雀草きつき傾斜の花時計


▼haru
令和2年 山茶花6月号

囀やテラスの窓を開け放ち

卒業の子の制服の寄付をして

春ショール羽根をまとひてゐる如く

聖夜きて宝石箱のやうな街


▼haru
令和2年 6月

鈴蘭を抱きて挙式会場へ

今跳ねし鯉萍の中に入る

水飛沫鵜匠手綱を捌くたび

鰻屋にテイクアウトの幟立つ

短夜や蛍光色の置時計

青葉風駅より校舎までの坂

ランボオを閉ぢて木陰のハンモック

出来立ての代田に映る八海山

花栗や野菜の無人販売所

執筆の天城の湯宿河鹿鳴く

青葉風順番待ちの滑り台

泡盛のいつものオンザロックかな

何歳になつても虹は見たいもの

水替へてよりガーベラの背筋伸ぶ

海亀や船より祠眺めつつ

江ノ電の横切るお寺濃あぢさゐ

紫陽花の観賞券に人の列

花南天転居の鬼門裏鬼門

玄関にお寺のお札花南天

安眠を約すラベンダーの枕

夏の雲映りしビルの硝子窓

珈琲に添へたるミント夏至の朝

十薬の香をゆかしきと思ふとき

ハイウェイの行く手を阻む夏の霧

昼顔や潮の匂ひの埋立地

蛍飛ぶ光の余韻残しつつ

故郷の湧水甘し蛍飛ぶ

来訪はいつも突然さくらんぼ

青蔦や昔銭湯だつた家

蚤取粉撒いてカレンダーに丸を


▼haru
令和2年 山茶花5月号

父母も兄姉も医師大試験

自転車を押してミモザの花の下

春寒しシネマに一人きりの客

ヒヤシンス窓辺で手紙読む女

春兆すバレリーナめく赤い靴


▼haru
令和2年 5月

伽羅蕗や舌が覚へてゐるレシピ

庭いぢることもリハビリ牡丹咲く

若葉風散歩はリハビリの一つ

ジョギングの靴のみづいろ夕薄暑

子供の日メール既読の印つく

更衣して似たやうな色ばかり

物持ちの良くも悪くも更衣

キャベツ買ふ間隔空けて並ぶレジ

母の日のポストに不在連絡票

友達のやうな母ゐてカーネーション

鎌倉に海辺山の辺風は初夏

レース編む昔電話は玄関に

羽衣の海を背にして薪能

柿若葉屋根にソーラーパネル付き

やり投げの滞空時間青嵐

客船の遠くに見えて花蜜柑

湯の宿の石の回廊竹落葉

Kindleの寺山修司読む五月

葉桜となりて小さき駅舎かな

小満や声の集まる道の駅

麦の秋明日のパンを買ひにゆく

麦秋やバゲット包む巴里の地図

蚕豆を剥く法案の記事の上

風薫るフォークにパスタ巻きつけて

断捨離と呟いてゐる更衣

大学の名が停留所樟若葉

妃殿下の名前冠せし薔薇を撮る

阿弗利加に咲く大輪の紅薔薇

青嵐駅より校舎までの坂


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